交通事故の示談金の相場とは?ケース別の実例も紹介
最終更新日:2024年11月19日/投稿日:2022年11月26日/執筆者弁護士豊田 友矢
目次
交通事故の示談金の相場をケース別に解説【実例あり】
示談金30万円:事故で怪我をしたが軽症で済んだ
駐車場内で駐車中に自動車に接触されて、腰椎捻挫の軽症を負ったケースです。
通院期間は2ヶ月程度で治癒し、過失割合は100:0です。
この案件での示談金は、次のとおりです(物損は除いています)。
治療費 | 既払い |
入通院慰謝料 | 約300,000円 |
最終示談金 | 約300,000円 |
示談金310万円:追突事故の重度のむちうちになった
センターラインをオーバーしてきた車と正面衝突して、重度のむち打ちになってしまったケースです。後遺障害14級が認定されました。過失割合は100:0です。
この案件での示談金は以下のとおりです(物損は除いています)。
治療費 | 既払い |
入通院慰謝料 | 約920,000円 |
休業損害 | 約30,000円 |
後遺障害逸失利益 | 約1,030,000円 |
後遺障害慰謝料 | 約1,100,000円 |
その他 | 約20,000円 |
最終示談金 | 約3,100,000円 |
示談金1230万円:歩行中に車にひかれて骨折した
横断歩道歩行中に、自動車にひかれて右膝を骨折してしまい、痛みなどの後遺障害12級13号が認定されたケースです。過失割合は、最終的に90:10となりました。この案件での示談金は次のとおりです。
治療費 | 既払い |
入通院慰謝料 | 約1,600,000円 |
休業損害 | 約2,500,000円 |
後遺障害逸失利益 | 約8,350,000円 |
後遺傷害慰謝料 | 約2,000,000円 |
その他の損害 | 約200,000円 |
調整金 | 約900,000円 |
過失相殺と既払い控除 | -約3,800,000円 |
最終示談金 | 約12,300,000円 |
示談金7180万円:脳に重度の後遺障害が残った
歩行中に自動車に跳ね飛ばされて、くも膜下出血や脳挫傷などの重傷を負ってしまったケースです。
後遺障害は高次脳機能障害や嗅覚障害・味覚障害で併合4級が認定されました。過失割合は100:0となりました。
この案件での示談金は、以下のとおりです。
治療費 | 既払い |
入通院慰謝料 | 約2,000,000円 |
休業損害 | 約5,600,000円 |
後遺障害逸失利益 | 約27,150,000円 |
後遺障害慰謝料 | 約17,000,000円 |
将来治療費 | 約3,350,000円 |
付添費 | 約1,750,000円 |
将来介護費 | 約10,700,000円 |
近親者慰謝料 | 約500,000円 |
調整金 | 約3,750,000 |
最終示談金 | 約71,800,000円 |
示談金39万円:怪我なしの物損事故のケース
自動車同士の事故で、怪我はなかった物損事故のケースです。
過失割合は100:0です。怪我はないので、慰謝料などの項目はありません。
経済的全損として、車両時価額と買換え諸費用を請求しました。
この案件での示談金は次のとおりです。
車両時価額 | 約270,000円 |
買換え諸費用 | 約120,000円 |
最終示談金 | 約390,000円 |
交通事故の示談金の中身とは?
交通事故の示談金の相場を知るには、まずは示談金の中身を知る必要があります。
示談金の中身には、慰謝料や休業補償、後遺症の補償など、交通事故によって被害者が被った全ての損害が含まれます。
人損事故の示談金の中身としては、主に次のようなものがあります。
治療関係費 | 病院の治療費、薬代、整骨院の施術代、診断書代など |
看護料 | 入院中や通院時における親族などの付き添い費用 |
通院交通費 | 通院の際の交通費(電車・バス代、タクシー代、ガソリン代など) |
入院雑費 | 入院中に必要な諸物品の購入費用・通信費用など |
休業損害 | 事故の怪我で休業した場合の補償 |
入通院慰謝料 | 事故の怪我による苦痛に対しての補償 |
後遺障害逸失利益 | 後遺症による将来の収入減少に対しての補償 |
後遺障害慰謝料 | 後遺症による苦痛に対しての補償 |
死亡逸失利益 | 死亡による将来の収入喪失に対する補償 |
死亡慰謝料 | 死亡による苦痛に対しての補償 |
一つの交通事故で、これらの示談金の項目が全てもらえる訳ではありません。
これらの項目を大きく分けると、
- 怪我についての示談金
- 後遺症についての示談金
- 死亡についての示談金
に区分されます。
上記の表の項目でいうと、①怪我についての示談金は、治療関係費、看護料、通院交通費、入院雑費、休業損害、入通院慰謝料です。
②後遺症についての示談金は、後遺障害逸失利益と後遺障害慰謝料です。
③死亡についての示談金は、死亡逸失利益と死亡慰謝料です。
事故で怪我をしたけど後遺症が残らなかった場合は、①の示談金だけが問題となります。
事故で怪我をして後遺症が残った場合は、①と②の両方の示談金がもらえることになります。
事故が原因で死亡した場合は、③がメインですが、治療期間がある場合には①も問題になります。
なお、ここに挙げた項目はあくまで代表的なものであり、これ以外のものが示談金に含まれることもあります。
通院期間別の示談金の相場
通院15日
通院1ヶ月
通院2ヶ月
通院3ヶ月
通院5ヶ月
通院6ヶ月
通院7ヶ月
通院8ヶ月
ケース別示談金の相場
10対0の事故【むちうち編】
10対0の事故【怪我なし編】
9対1の事故
軽傷のケース
主婦のケース
30万円のケース
示談金の計算方法|過失割合や既払い金控除とは
示談金の相場を知るには、その計算方法も知る必要があります。なぜかというと、同じような事故でも、計算後の最終手取額が大きく変わることがあるからです。
この示談金の計算方法は少し複雑です。単純に示談金なの中身の項目の金額を合計するだけでもらえる示談金が決まるわけではないからです。
示談金の計算で、特に注意しないといけないのは、
- 過失相殺
- 既払金控除
の二つです。
以下では示談金の計算方法を順番に解説します。
示談金の各項目を合計する
まずは、自分の事故で請求できる示談金の各項目(損害項目)を全て合計します。注意点としては、既に相手保険会社から払われている分(治療費や休業損害など)の金額も算入する必要があることです。
また、ここで本来は請求できる項目を落としてしまうと、当然ながら最終的に取得できる示談金額も減ってしまいます。
単純な事案であれば、項目漏れが起こることはないですが、重傷事故などのケースでは項目漏れがあることもあるので、必ず交通事故に詳しい弁護士に相談して、項目漏れがないか確認しましょう。
過失相殺と示談金の計算方法
各項目の金額を合計したら、次に過失割合に応じて、過失相殺分の金額を控除します。
例えば、治療費や慰謝料などの各項目の合計額が100万円で、過失割合が8:2だったとします。
この場合、過失相殺分の金額は100万円の2割である20万円になります。そして合計額100万円から過失相殺分の20万円を控除すると80万円になります。
ここで注意すべき点は、過失割合が適正なのかどうかです。過失割合が100:0で争いがないのであれば問題ないですが、被害者にも過失が認められる場合、保険会社から伝えられた過失割合は必ずしも適正な過失割合とは限らないからです。
既払い金控除と示談金の計算方法
過失相殺後の金額が全てもらえる訳ではありません。加害者に保険会社がついている場合、通常は治療費などについては示談前に先払いがされています。
この先払いを受けた金額を、過失相殺後の金額からさらに控除する必要があります。
例えば、損害項目合計100万円の内訳が治療費30万・慰謝料70万円で、過失割合は80:20、治療費は全て既払いであったとします。
そうすると、過失相殺後の金額(100万円×80%)は80万円になります。ここから、さらに既払いの治療費30万円を控除して、残りの示談金は50万円になるのです。
過失相殺と既払い金控除の順番
上記で説明したように、相手保険会社からの既払い金がある場合には、最初に過失相殺をしてから、既払い金を控除するという順番です。
ところが、既払い金には、相手保険会社から支払われるもの以外にも、自分の保険会社から支払われるもの、労災保険から支払われるもの、健康保険・国民年金・厚生年金から支払われるものもあります。
これらについては、その種類によっては、過失相殺と既払い金控除の順番が逆になったり、損害項目毎に個別に既払い金を控除するものもあります。
これについては、かなり複雑なので、疑問点がある場合には弁護士にご相談されることをおすすめします。
示談金を増額するには弁護士へ依頼を!
示談金を増額するには、①示談金の各項目をもれなく請求する(請求しないともらえない項目もあります)、②項目毎に適正な金額になるように計算してその証拠も集める、③慰謝料を弁護士基準にする、④過失割合が妥当か確かめるなど、することがたくさんあります。
そして、これらの①から④は弁護士に相談や依頼をしないと困難なことがほとんどです。
示談金を増額するためには、まずは弁護士にご相談ください。