交通事故の弁護士費用の相場と計算方法とは?
最終更新日:2022年5月20日/投稿日:2022年5月20日/執筆者弁護士豊田 友矢
ここで説明するのは、当事務所以外の一般的な交通事故の弁護士費用の一覧と相場(計算方法)の解説になります。
当事務所の弁護士費用については、こちらをご参照ください。
交通事故の弁護士費用の種類一覧
法律相談料|弁護士に相談する費用
弁護士に相談する費用です。
無料相談が可能な場合は、相談料はかかりません。
有料の場合は、相談料は、弁護士に依頼するかどうかとは関わらずに発生します。
そのため、相談した結果、相談者が弁護士には依頼したくないと考えた場合や、弁護士が相談者の依頼を受けられないと判断した場合にも相談料は発生します。
相談料の金額は、実際に相談した時間に応じて決まることがほとんどです。
つまり、長時間の相談ほど、相談料は高くなります。
着手金|依頼時にかかる費用
弁護士に依頼するときにかかる費用です。一般の方の中には手付金と呼ぶ方もいます。
着手金は、有料の場合と無料の場合があります。
有料の場合は、原則として、依頼と同時か、依頼後直ぐに支払う必要があります。弁護士によっては分割での支払いが認められることもあります。
着手金の最も重要なところは、あくまで弁護士に依頼して動いてもらうことについての費用なので、結果にかかわらず金額は変わらないというところです。
例えば、損害賠償として100万円を請求するために着手金10万円を支払い、その後最終的には30万円しか賠償金が認められなかったとしても、着手金が後から減額されることはありません。もっと言えば、1円も賠償金が認められなかったとしても、着手金が返金されることはありません。
着手金の金額は、原則として、請求金額に応じて決まることが多いです。そのため、高額の請求をするときほど、着手金の金額も高くなることになります。
また、着手金は示談交渉の後に裁判をする場合には、追加でかかることが多いです。さらに、裁判も控訴する場合には追加でかかることが多いです。
報酬金(成功報酬)|解決時にかかる費用
報酬金は、弁護士に依頼して業務が終了したときに、その結果に応じてかかる費用です。成功報酬と呼ぶこともあります。
報酬金は、業務が終了したときに支払うので、交通事故の被害者は、相手から回収した示談金・賠償金の中から支払うことが多いです。
報酬金の金額は、交通事故の場合、認められた賠償金の○%という形で算出されるので、賠償金の金額が高ければ高いほど報酬金は高くなります。
逆に、賠償金が1円も認められなかったときは、報酬金は発生しないのが原則です。
このように報酬金の金額は、結果に応じて変わるので、最後までいくらになるのかがわかりません。ただし、賠償金の請求額が全額認められた場合が、報酬金の上限額となるため、この上限額については事前にわかります。
日当|弁護士の移動時にかかる費用
日当というのは、事件処理のために、弁護士が移動する必要がある場合に発生する費用です。
事件処理自体には、いくら時間がかかっても日当はかかりません。この分は、既に着手金と報酬金に含まれているからです。
例えば、交通事故の裁判をするために、弁護士が事務所から1時間かかる裁判所まで行って、裁判に30分時間がかかり、そのあと事務所まで戻るのに1時間かかったとします。この際には、移動時間の2時間分についてのみ日当が発生します。
このように、日当というのは、弁護士が移動のために仕事ができない時間について補償する意味合いがあります。
日当の金額は、移動時間の長さによって決まります。一定時間以内なら日当が発生しない場合も多いです。まれに、時間ではなくて移動距離や地域、裁判所の場所で金額が決められている場合もあります。
タイムチャージ(時間制報酬)|特別な料金体系
タイムチャージ(時間制報酬)は、弁護士の業務時間に応じてかかる費用です。
ただし、タイムチャージ(時間制報酬)というのは、これまでみてきた着手金や報酬金とは別の料金体系になります。
つまり、交通事故を弁護士に依頼するときに、着手金・報酬金に加えてタイムチャージがかかるということはまずありません。着手金・報酬金方式かタイムチャージ方式かのどちらかで依頼することになります。
もっとも、交通事故の場合は、依頼者がどちらにするかを選ぶことはできないのが通常です。相談を受けた弁護士が、依頼前にどちらにするかを選択することになります。
例えば、少額の物損事故などは、着手金・報酬金方式で計算すると、弁護士が赤字になってしまうことが多いため、請求金額にかかわらず、弁護士の実働時間に応じて費用が発生するタイムチャージ方式でないと弁護士に依頼できないことが多いです。
なお、タイムチャージ方式を使うのは、交通事故の場合、原則として弁護士費用特約を利用する場合がほとんどです。
実費|弁護士が立て替えた費用
実費は、弁護士が依頼者のために立て替えた費用、業務のために必要となった費用のことです。
例えば、裁判をする場合には、裁判所に収入印紙と郵便切手を納める必要がありますが、これらを弁護士が購入した場合です。
他には、弁護士が業務のために支払った交通費や調査費用などがあります。
交通事故の弁護士費用の相場はいくら?
弁護士費用の相場は、弁護士費用特約がある場合とない場合で異なることが多いです。
弁護士費用特約なしの場合の相場
相談料の相場|無料のところも増えている
旧日弁連基準という、昔全ての法律事務所で適用されていた基準では、30分毎に5000円~2万5000円です。
ただし、現在は交通事故の被害者の相談は無料としている法律事務所もあります。
当事務所も、交通事故被害者の相談は無料としています。
着手金の相場|無料のところも増えている
旧日弁連基準では、請求額に応じて、請求額の2%(請求額3億円超え)~8%(請求額300万以下)です。
ただし、現在は、着手金を無料とするか、20万円などの固定金額に設定している法律事務所も多いです。
当事務所は、原則として着手金を無料としています。
報酬金の相場|利益の固定割合+固定金額とするのが増えている
旧日弁連基準では、経済的利益の額に応じて、利益の4%(利益3億円超え)~16%(利益300万以下)です。
ただし、現在は、報酬金を、回収金額の10%~20%+10万円~20万円と固定割合+固定金額で設定している事務所が多いです。
なお、裁判をした場合には、着手金・報酬金の計算方法が変わる法律事務所がほとんどです。裁判をした方が費用も高額になります。
日当の相場|事務所によってまちまち
旧日弁連基準では、半日(2時間~4時間)の場合3万円~5万円、1日(4時間以上)の場合5万円~10万円です。
現在では法律事務所によって、まちまちです。日当は原則として無料とするところもある半面、2時間以下であっても裁判に出廷した場合には1回当たり●万円と費用がかかるところもあります。
完全成功報酬制とは?
完全成功報酬制という料金体系があります。これについては、次の記事を参考にして下さい。
弁護士費用を払えないとどうなる?
弁護士費用を払えないと弁護士に依頼することが出来ません。
ただし、着手金無料の場合は、着手金を払わずに弁護士に依頼することができます。
また、完全成功報酬制であれば、報酬金も加害者側から受け取った示談金から払えば良いので、じぶんの財布から支払う必要はありません。
弁護士費用はいつ払う?
着手金は弁護士に依頼と同時、または、依頼後速やかに支払う必要があります。
報酬金は事件が修了したときに支払います。
実費や日当は、都度支払う場合と、最後にまとめて支払う場合があります。
弁護士費用特約ありの場合の相場
弁護士費用特約がある場合は、LAC基準という保険会社が定めた金額または弁護士費用特約の約款で定められた金額と同じところが多いです。
以下ではLAC基準または弁護士特約の約款で定められた金額から算定される費用を解説します。
相談料の相場|1時間1万円、15分ごと2500円
相談料の相場は、以下のとおりです。
・1時間まで1万円、以降15分ごとに2500円
・30分ごとに5000円の場合もある
・出張相談は、1時間以内3万円、以降15分ごとに2500円
着手金の相場|請求額の2%~8%(最低10万円)
着手金の相場は、経済的利益の額に応じて、以下の通りです。
経済的利益の額 | 着手金の額(税別) |
~125万円 | 10万円 |
~300万円 | 8% |
300~3000万円 | 5%+9万円 |
3000万円~3億円 | 3%+69万円 |
3億円~ | 2%+369万円 |
ただし、難易度によっては30%の範囲で増額されることもあります。
また、示談交渉に続いて裁判などをする場合は、上記の金額の25%から50%の着手金が追加でかかります。
自賠責保険金分については、通常の場合は経済的利益に算入せず、保険金額の2%のみが手数料としてかかりますが、異議申立をするなどした場合は、経済的利益に算入されます。
報酬金の相場|賠償金の4%~16%
報酬金の相場は、経済的利益の額に応じて、以下の通りです。
経済的利益の額 | 報酬金の額(税別) |
~125万円 | 16%または20万円 |
~300万円 | 16% |
300~3000万円 | 10%+18万円 |
3000万円~3億円 | 6%+138万円 |
3億円~ | 4%+738万円 |
日当の相場|1日3万円~10万円
日当の相場は、移動時間に応じて、以下の通りです。
移動時間 | 日当の額(税別) |
往復2時間~4時間 | 3万円 |
往復4時間~7時間 | 5万円 |
往復7時間~ | 10万円 |
着手金と報酬金を計算する経済的利益とは?
経済的利益とは、着手金の場合は、加害者に請求する金額と考えるのが一番分かりやすいです。ただし、自賠責保険金分については経済的利益に含める場合と含めない場合があります。
報酬金の場合は、相手から回収した金額と考えるのが分かりやすいですが、契約の内容によっては裁判で判決を取得した場合は、回収不可能でも、判決で認められた額が経済的利益の額となることもあります。
増額分は?
弁護士費用特約がある場合には、保険会社から事前提示がある場合の経済的利益は事前提示額を控除することが通常です。
他方で、弁護士特約がない場合には、事前提示額を控除するかどうかは法律事務所によって異なります。
一般的に、事前提示額を控除しない場合は、利益に対する報酬割合が低く設定されていますが、事前提示額を控除する場合は報酬割合が高く設定されています。
タイムチャージの相場
1時間毎に2万円が相場です。
実費の相場|実際に支払った金額
実費は実際に支払った金額の全額についてかかることが多いです。
裁判所に納める切手代は6000円程度、収入印紙代は、裁判での請求金額に応じて数千円から数十万円程度かかります。
交通事故加害者の弁護士費用はいくら?
交通事故の被害者から訴えられた場合に、加害者が弁護士を付けるときの費用は、法律事務所によってまちまちです。
加害者が任意保険に加入している場合は、加害者の弁護士費用は保険会社から保険会社の基準によって支払われます。
弁護士費用の計算方法と実例
ケースA むちうち後遺障害で示談金300万円得たケース
Aさんは追突事故でむちうちになり、後遺障害14級が認定されました。
慰謝料や逸失利益を含めて既払治療費以外に約300万円の示談金を獲得しました。
弁護士費用特約に入っていなかったので、着手金無料、成功報酬20万円+10%で弁護士に依頼し、弁護士費用は50万円かかりました。結果的に250万円が手元に残りました。
ケースB 高次脳機能障害になり賠償金1億円を得たケース
Bさんは自動車にひかれて、脳を損傷し、高次脳機能障害3級の後遺障害が認定されました。
示談交渉では解決できず、1億5000万円を請求する裁判を起こしたところ、最終的に1億円で和解することができました。
また上限額300万円の弁護士費用特約に加入していました。
この場合、着手金が約650万円、報酬金が約740万円で、合計1390万円弁護士費用がかかりました。この内、300万円は弁護士費用特約から支払われたので、賠償金1億円のうち8910万円を手元に残すことができました。
ケースC 物損のみで裁判をした場合
Cさんは、修理費用10万円の物損について、過失割合に折り合いが付かず裁判を起こしました。
最終的には和解できましたが、和解するまで弁護士が25時間業務を行いました。
Cさんは弁護士費用特約に加入しており、タイムチャージ制で弁護士に依頼していたので、弁護士費用は2万円×25時間=50万円かかりましたが、全て弁護士費用特約で賄うことができました。
交通事故の弁護士費用に関するよくある疑問
弁護士費用を相手に請求できないか?
弁護士費用を相手に請求できるかどうかについては、次の記事を参考にして下さい。
費用倒れになってしまわないか?
交通事故を弁護士に依頼して費用倒れになってしまわないか心配な方も多いと思います。
特に弁護士費用特約がない場合は、費用倒れになってしまうケースがないとは言い切れないので、必ず事前に確認するようにしましょう。
費用倒れについては、こちらの記事を参考にしてください。
費用が安いほど良いのか?
必ずしも弁護士費用が安いほど得というわけではありません。なぜなら、交通事故の損害賠償請求は依頼する弁護士によって、獲得することが出来る賠償金の額が大きく変わることがあるからです。
例えば、弁護士費用が100万円高くなる弁護士に依頼したとしても、その結果、費用が安い弁護士に依頼するよりも1000万円も多くの賠償金を獲得することが出来れば、そちらの方が得ということになります。
費用が高い方が良い弁護士なのか?
それでは費用が高い方がいい弁護士なのかというと、それも違うのが難しいところです。
基本的に弁護士費用は、弁護士の能力によって高くなったり低くなったりすることはあまりなく、地域性や、弁護士の考え方、広告費用などの経費をどれくらいかけているかによって変わってくることが多いです。
そのため、弁護士費用の高低で、交通事故に強い弁護士を見分けることはできません。
交通事故に強い弁護士の選び方については、次の記事を参考にして下さい。