交通事故の示談金の内訳とは?項目別に弁護士が解説
目次
保険会社から届く示談金の内訳を説明した書面
怪我が治癒するか、後遺障害の審査が終わると、保険会社から「損害賠償金提示のご案内」とか「損害賠償額の内容」などといった書面が届きます。
この書面には保険会社が提示する示談金の内訳が記載されています。
一生のうちに交通事故に何度もあうというかたは多くはないので、このような書面が提示されてもそれが妥当なのかどうか判別つかない方が多いともいます。
ここでは、保険会社が提示してくる示談金内訳書面について、項目別に解説します。
怪我をしたが後遺症がない場合に記載されている内訳
治療費
病院でかかった治療費、薬局でかかった薬代、自賠責用の診断書代などが含まれます。
治療費を保険会社が直接病院へ払っている場合(一括対応といいます)は、示談書の内訳をもらってはじめて今までかかっていた治療費の額を被害者が知ることも多いです。
看護料
弁護士は付き添い費用と呼ぶことが多いですが、事故で怪我をした被害者の入院中に家族が付き添った場合や、通院に付き添った場合の補償のことです。
付き添い費用といっても単にお見舞いのように「付き添った」だけでは認められず、付き添いの必要性があった場合に認められます。
被害者が12歳以下の場合については原則として認められますが、それ以外の場合はケースバイケースです。
保険会社からは、通院付き添いの場合は1日2,100円、入院付き添いの場合は4,200円が提示されることが多いですが、ケースによっては付き添った親族の休業損害分が提示されることもあります。
入院雑費
入院中には様々な雑費が必要となりますので、それらの費用です。示談金の内訳書面が送られてくる前に、入院中に購入したもののレシートなどを送って支払を受けている場合は、その支払を受けた金額が記載されていることが多いです。
請求をしていなかった場合は、入院1日あたり1,100円で提示されることがほとんどでしょう。ちなみに弁護士基準だと1日1,500円です。
通院費
弁護士にご相談される方の中には、慰謝料の意味で「通院費」という言葉を使われる方もいますが、「通院費」というのは通院のために必要となった交通費のことです。
タクシー代・電車代・バス代・ガソリン代などです。
示談金内訳書面が届くまでに、被害者が通院交通費明細書と領収書を提出している場合には、それに基づいて計算した額が記載されています。
その他治療関係費
この欄は何も計上されていないこともありますが、通常の治療費とは別に怪我によって発生した費用について何かある場合には、それが計上されることもあります。
休業損害
示談金内訳書面が届く前に、休業損害証明書を提出済みである場合は、それに基づいて計算された金額が記載されています。
基本的には既に被害者に支払済みであることが多いです。
ただし、金額に争いがある場合には、未払い状態のまま、最終的に保険会社が判断した金額が提示されていることもあります。
法律的には、主婦も家事労働の休業損害が認められますが、請求していない場合は、計上されていないことがほとんどです。
また、主婦の休業損害を請求している場合でも、自賠責基準の5700円×休業日数という最低金額の提示がなされることがほとんどでしょう。
例外的に、かなりの重症のケースで、事情により生活に関連した多額の内払いがなされているケースでは、保険会社が独自に算定した主婦としての休業損害が計上されていることもあります。
傷害慰謝料
いわゆる慰謝料です。打撲・挫創・むちうちなどの場合は自賠責基準で提示されていることがほとんどでしょう。
この場合、通院日数×2×4,300円または通院期間×4,300円で提示されているかと思います。
骨折以上の重傷のケースでは、任意保険基準で慰謝料が提示されることが多いです。これでも弁護士基準からしたらかなり低額のことが多いですが、自賠責基準よりは比較的高額の提示になります。
後遺障害等級が認定された場合に記載されている内訳
逸失利益
後遺障害が認定された場合には、将来の収入減少分である逸失利益が計上されることがほとんどです。
事故の前年度の収入資料を事前に求められているはずなので、これに基づいて保険会社が算定した金額が記載されています。
ただし、後遺障害等級が認められていても、いくつかの後遺障害では逸失利益は0円と提示されることも多いです。例えば醜状傷害(傷跡)や、鎖骨変形、圧迫骨折などです。
また、逸失利益が認められている場合でも、労働能力喪失率や、喪失期間について、裁判の相場よりも大幅に減額されて提示されているケースは珍しくありません。
ただし、この点については慰謝料とは違い、一律に判断はできないため、後遺障害等級が認定されている場合は、逸失利益の提示額が妥当かどうかについて弁護士に相談されることをおすすめします。
慰謝料よりもさらに増額可能であるケースが多いです。
後遺障害慰謝料
後遺障害の慰謝料です。保険会社の提示額は、自賠責基準の金額か任意保険基準の金額であることが多いです。
ほとんどの場合で、保険会社提示額は弁護士基準よりも低いことが多く、弁護士に依頼した場合に増額可能性が一番高い項目といえます。
下の方に記載されている「過失相殺額」・差引額」「既払い額」とは?
過失相殺額(差引額)
被害者にも過失が認められる場合は、これまで見てきた金額を合計した金額から被害者の過失割合分減額されます。
これを、過失相殺(かしつそうさい)といいます。保険会社から提示される書面には「差引額」と記載されていることもあります。
物損事故の示談時に過失割合に合意している場合は、その割合が記載されていることが多いでしょう。
物損がない場合や過失割合の合意をしていない場合は、保険会社が妥当と考える過失割合が一方的に記載されています。
重傷の事故ほど、過失割合が示談金額に与える影響も大きいので、重傷の事故の場合は、過失割合について間違いがないか、事前に弁護士に相談することをオススメします。
既払額
保険会社が既に支払済みの金額が記載されています。
通常、治療費は支払済みのことがほとんどで、他にも休業損害、通院交通費、入院雑費などが支払済みのことも支払済みのことが多いでしょう。
なお、被害者にも過失がある場合には、過失相殺した後の金額から既払金を全額引くので、払いすぎの治療費などが最終的に受け取る慰謝料から減額されることになります。
例えば、治療費100万かかったが全額払われており、加害者対被害者の過失割合が80対20の場合、治療費20万円が払いすぎの状態になるため、慰謝料の8割からさらにこの20万円が引かれてしまうことになります。
示談金の内訳書面が届いたら弁護士に相談を
これまで示談金の内訳を見てきましたが、多くの方は慰謝料の項目や、過失割合の項目に注目するかと思います。
もちろんこれらの項目も重要ですが、最終的な金額の面でいうと、他にも逸失利益や休業損害などの金額がより重要となることもあります。
そしてこの2つの項目については、慰謝料よりもケースバイケースの側面が強く、妥当性の判断に専門的な判断が必要になります。
示談金の内訳が提示されたら、依頼するかどうかは別にして、その内訳の妥当性を弁護士に相談するのが良いと思います。
仮に、提示された内訳が妥当で、増額可能性がない場合には、相談で終わりにして弁護士に依頼しなければ良いので、お気軽にご相談いただければと思います。