経済的全損だと泣き寝入り?修理したいのに全損扱いはおかしい?

経済的全損だと泣き寝入り?修理したいのに全損扱いはおかしい?

全損扱いの経済的全損になる基準とは?

経済的全損になる基準は、修理費が車やバイクの時価額を上回っているかどうかです。

例えば、事故による修理費が100万円なのに対し、車・バイクの時価額が80万円の場合は、修理費が時価額を上回っているので経済的全損になります。

おおよその目安として、初年度登録から10年以上経過している場合、大破して自走できずレッカーが必要だった場合などは経済的全損になる可能性が高くなります。

そこまででなくとも、初年度登録5年以上経過している場合は、一程度以上の損傷で経済的全損になる可能性があります。

また、バイクは、衝突部位だけでなく、転倒時、滑走時にも損傷するので、事故自体の大きさに比較して修理費が高額になりやすく、結果、経済的全損になりやすいです。部品が高い外車も、部品交換が必要な場合は修理費が高額になりやすく、その分経済的全損になりやすいでしょう。

そして、物理的には修理可能でも、経済的全損になれば全損扱いになってしまいます。

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おかしい?全損扱いになると時価額だけしかもらえない

本来は、事故で車やバイクが壊れてしまった場合、修理費を相手に請求できます。

ところが、全損扱いになると、修理費は請求できなくなります。相手に請求できる損害というのは、事故前の金額と事故後の金額の差額と考えられています。事故前の時価80万円の車は、事故でどんな状態になろうと最悪0円になるだけです。そうすると最大の差額は80万円なので、これを超える金額は請求できないのです。

もっとも、物理的に修理が可能なのにかかわらず、その修理費を請求できないワケですから、被害者からしたら、「おかしい!」と不満が出るはずです。

もちろん、1円も請求できなくなるワケではありません。経済的全損で全損扱いになった場合には、車やバイクの時価額分をもらうことはできます。

最初に説明した例の修理費100万円、時価額80万円のケースでは、100万円は無理でも80万円ならもらえるということです。

ところが、時価額をもらう場合でも、被害者からすれば「おかしい!」と不満を持つことが多いです。それは、保険会社から言われた時価額が安すぎると感じることが多いからです。

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全損でも時価額は示談交渉の余地あり

保険会社から言われる車の時価額は、有限会社オートガイド社が発行している「自動車価格月報」(いわゆるレッドブック)を参考に決められていることが多いです。

ところが、レッドブック記載の金額は、被害者からしたら安すぎると感じることが多いです。

この場合、被害者自身または被害者が依頼した弁護士が、インターネット上のカーセンサーやグーネットなどのサイトで中古車価格情報を調べて、その資料を基に時価額を増額する交渉をすることもできます。

この場合の注意点としては、単に高い金額のものだけを抽出するのでは、恣意的なのでダメだと言うことです。同一車種・同一年式・同一グレードなどでできる限り多くの車両の価格を出して、平均値を取るなどの手法がよく使われます。

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もらい事故で全損になると泣き寝入り?

もらい事故など被害者に全く過失がない事故で全損となってしまう場合には、泣き寝入りかと感じる場面が多いです。

被害者からすれば、もらい事故で全損扱いとなり、修理費がもらえないため修理もできず、買い換えたいと思っても、もらえる時価額では安すぎて到底同等の車を購入できないのが普通だからです。

しかも、後で詳しく説明しますが、もらい事故のような過失割合10対0の事故の場合、時価額の賠償を受けると、相手保険会社が車を引き上げることもあります。そうすると、時価額の賠償を受けた上で、車を修理して乗り続けることすらできないこともあり得るのです。

なお、当然ですが、相手の保険会社が時価額市価払わないからと言って、直接加害者に修理費を請求することもできません。

このような状況になってしまうと、被害者としては、泣き寝入りかという不満が生じてもおかしくはありません。

旧車の事故で泣き寝入りかと感じるケース

旧車のような、新車登録時から相当期間が経過した古い車は、同種車両の販売がレッドブックに記載されていません。

また、旧車のような古い車は同年式の車について、インターネット上の中古車価格情報も十分に台数がないこともあります。台数が少ないと、時価額の資料としては足りないと言われてしまいます。

仮にある程度の台数が掲載されていても、プレミアがつく車両などは、状態によって値段のばらつきが大きく、一般的な市場価格を証明できない場合も多いです。

このような場合、具体的な時価額の証明が困難であるため、保険会社は減価償却の方法を参考に新車価格の10%程度を時価額とするか、購入価格から購入時から事故時までの期間で減価償却した金額を提示してくることが多いです。これらは被害者が考えている旧車の時価よりも大分低額になることが通常です。

そのため、旧車など古い車で事故に遭ってしまった被害者の方は、減価償却後の金額しか提示してもらえず、「泣き寝入りか」と不満を持たれる方が多いです。

新車の事故でも泣き寝入りかと感じるケース

新車の事故の場合は、経済的全損となることは多くはありません。新車であれば時価額は高いので、修理費が時価額を超えないことが多いからです。

それでも、大きな事故で車が大破した場合には、経済的全損になることはあります。

この場合、新車といっても、所有名義の登録がされている以上、いわゆる「登録落ち」により、時価額は購入額よりも減額されることが多いです。特に登録から事故までに数ヶ月経過している場合には、減価償却した金額か1年経過した中古車の市場価格に近い金額になりがちです。

被害者としては、買ったばっかりの車だったのに、購入価格より減額された金額しかもらえず、その金額では新車の買い換えも、修理もできず「泣き寝入りか」となりがちなのです。

愛着のある車を修理したい、乗り続けたい場合

経済的全損と判断されても、愛着のある車を修理して乗り続けたいという人もいるかと思います。

相手が対物超過特約を使ってくれるケース、相手の対物保険で時価額の賠償を受けるケース、自分の車両保険を使うケースでどうすれば良いか見てみましょう。

相手の保険で対物超過特約を使ってくれる場合

事故相手が対物超過特約の保険に加入している場合には、修理費が時価額を超えても修理をしてもらえることがあります。

ただし、この場合、いくつか注意点があります。まず、対物超過特約に加入しているとしても、使ってもらえるかどうか事故相手次第ということです。つまり、事故後の対応などで事故相手の神経を逆なでするなどした場合に、利用してもらえない可能性があります。

次に、対物保険で修理費を払ってもらう場合には、実際には修理をしないでお金をもらうことはできますが、対物超過特約を利用する場合は必ず修理を実施する必要があります。つまり、お金だけもらうことはできません。

また、いくら対物超過といっても限度があり、通常は時価額プラス50万円が限度になっている場合が多いです。さらに、約款上、事故日から6ヶ月以内に修理を実施する必要があると規定されていることがほとんどです。

相手の保険で時価額のお金をもらい、引き上げなしで乗り続ける

経済的全損は、物理的全損と違い修理自体が物理的にできないワケではありません。修理しようと思えばできるのです。

ただし、法的には、過失割合10対0の事故で全損扱いとなり、事故相手の保険会社が時価額の全額を賠償した場合、所有権が相手の保険会社に移ります(民法422条)。この場合、相手の保険会社には車両を引き上げる権利があります。実際に引き上げられてしまうのであれば、車を修理して乗り続けることができません。

もっとも、対物保険で賠償を受けた場合には、相手の保険会社が実際に車両の引き上げをしないケースもあるようです。もちろん、法的には引き上げ可能なので、事前に保険会社と車両の引き上げについて確認はした方が良いです。パーツ取り等のために相当な値がつく高級車などは引き上げることが多いようです。また、保険会社によっては、一律引き上げをしているところもあるようです。

なお、過失が10対0以外の事故では、対物保険では時価額の全額賠償はされないので、所有権は移転せず、引き上げがされる可能性はありません。

過失10対0以外の事故の場合か、過失10対0の事故でも保険会社から引き上げなしの承諾を得た場合には、対物保険で時価額分のお金を先にもらい、差額の修理費は自己負担で払って修理して乗り続けることができます。

例えば、時価額80万円を相手からお金でもらって、残りの20万円は自己負担で、修理費100万円を払い修理をすることもできるということです。

なお、引き上げがされないのであれば、時価額分のお金をもらった上で、車両を売却したり、パーツ取りをすることも可能になります。

自分の車両保険を使うなら車両引き上げが原則

全損で車両保険金を受け取った場合には、保険会社は基本的に全損車両を引き上げることがほとんどです。オークションなどで売却するためです。

そうすると、全損前提で車両保険を受け取った上で、車を修理して乗り続けることは基本的にできないと考えた方が良いでしょう。また、所有権が保険会社へ移転しているので、パーツやカーナビなどの付属品を取り外すこともできません。

もっとも、車両の残存価値がほとんどない場合や、自分に過失がほぼない場合などは、保険会社に頼めば車両を引き上げないでくれることもあるようです。もし、修理して乗り続けたい場合は、事前に自分の保険会社へ頼んでみましょう。

また、保険会社が車両の引き上げを要求してきた場合でも、自分で事故車両の買取(車両保険額から買取額分を減額して受け取る)をすれば、引き上げなしになることもあります。引き上げを要求されたけど、どうしても修理して乗り続けたい場合は、買取できないか保険会社へ頼むと良いでしょう。

ちなみに、車両全損時修理特約に加入している場合には、時価プラス50万円までであれば、車両の引き上げなしで修理を実施することができます。

意外な盲点!経済的全損では買い換え費用も請求できる

経済的全損と判断されたために、車を買い換える場合には、検査・登録手続き費用、車庫証明費用、廃車費用、納車費用、登録手続代行費用などの買換諸費用を時価額とは別に請求することができます。

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最終更新日:2024年9月27日/投稿日:2022年6月24日/執筆者弁護士豊田 友矢 目次 全損のとき請求できる買替諸費用とは? 日常用語の買い替え費用とは違う!10対0でも相場は数万円程度 買替諸費用として認められる...

なお、買い換え費用については、自分から働きかけない限り、相手の保険会社が任意に提示してくることはまずありません。そのため、事故車両購入時の諸費用明細や、あらたな車両購入の見積書などの資料を提示した上で、交渉をする必要があります。

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