自賠責と任意保険の両方から交通事故の慰謝料をもらえる?
最終更新日:2024年10月7日/投稿日:2022年10月1日/執筆者弁護士豊田 友矢
目次
慰謝料は自賠責と任意保険から両方もらえる?
交通事故の慰謝料は任意保険と自賠責の両方からもらえるのか?結論から言うと、もらえるケースともらえないケースがあります。
自賠責保険は最低限の補償であるのに対し、任意保険は自賠責保険ではまかなえきれない部分を補償する保険です。このため任意保険は上積み(うわづみ)保険といわれています。▶自賠責と任意保険の違い|二重取りはできる?
つまり、自賠責から慰謝料をもらっても、被害者の適正な慰謝料額に足りないケースでは、追加で任意保険からも慰謝料をもらうことができるということです。
逆に、自賠責からもらえる慰謝料で足りるケースでは、任意保険から追加で慰謝料をもらうことはできません。
実際は任意保険会社から自賠責分の慰謝料もまとめてもらう
自賠責足りない分は任意保険で払われるという説明をすると、「被害者は先に自賠責から慰謝料をもらって、足りない分を任意保険に請求するの?」と思われる方もいるかと思います。
ところが、実際には被害者が直接自賠責には慰謝料を請求するケースは少なく、任意保険会社だけから慰謝料をもらうケースがほとんどです。
こう説明すると、「あれ?自賠責分の慰謝料はなんでもらえないの?」と思うかもしれません。
実は、任意保険会社が被害者に慰謝料を払う場合には、自賠責分の慰謝料と任意保険分の慰謝料をまとめて払うことが通常なのです。これを一括対応といいます。
任意保険会社を通じて示談したら自賠責には請求できない
先ほど説明したように任意保険会社は、示談するときに自賠責分の慰謝料と任意保険分の慰謝料もまとめて支払うことが通常です。
そのため、任意保険会社と示談して慰謝料をもらった場合には、既に自賠責分の慰謝料も払ってもらったことになります。
ということは、示談して任意保険会社から慰謝料をもらった後、追加で自賠責保険に慰謝料を請求することはできません。これができると二重取りになってしまうからです。
実際は最低限の自賠責分だけしかもらっていないことが多い
任意保険会社は、自賠責分を代わりに立て替えて支払うことになる以上、実際に自賠責保険から支払われる金額を下回った金額での示談(過小示談といいます)をしてはいけないことになっています。
逆に言えば、自賠責よりも低額はダメ=自賠責と同じ額ならOKなので、任意保険会社は、自賠責の金額よりも高い金額を提示する必要まではないことになります。
そして実際に、特にむちうち、打撲、捻挫、軽度の骨折(骨挫傷など)等のケースでは、任意保険会社は自賠責分の慰謝料と同額しか提示していないことがよくあります。
この提示内容で示談してしまった場合、被害者は任意保険会社から自賠責分の慰謝料だけをもらって、上積み部分の任意保険からの慰謝料は1円ももらえないことになります。
たとえ自賠責分の最低限の慰謝料しかもらっていないとしても、被害者が納得して示談が成立した後では、追加で任意保険分の慰謝料を、任意保険会社へ請求することはできなくなっていまいます。
自賠責分だけしかもらえなくても仕方ない例外ケースとは
被害者の過失割合が大きいケースや、高齢者の重傷・死亡事故などでは、自賠責基準の補償額の方が、加害者が法的に負担しないといけない金額よりも大きくなることがあります。
このような場合は、自賠責保険だけから賠償を受けることになり、任意保険分は追加でもらえないことになります。
ただし、この判断はかなり専門的な知識が必要になるため、弁護士にご相談ください。
弁護士に依頼して任意保険分の慰謝料を増額できる
かなり多くのケースでは、自賠責で補償される金額よりも、任意保険が追加で負担すべき金額の方が大きいので、自賠責分のみの提示で示談するのは被害者が損していることになります。
そして、一番の問題は、保険会社から提示されている金額は、実は自賠責保険の分だけで、任意保険の上積みがされていないことに被害者自身が気づいていないことにあります。
つまり、被害者は任意保険分の慰謝料をもらったと思って示談していたら、実際には最低限の自賠責分しか慰謝料をもらえてないということが多いのです。
また、仮に被害者が直接自分で任意保険会社に、自賠責分以上の以上を請求したとしても、特に重傷ではないケースでは、自賠責基準の提示以上の増額させることは困難なことが多いです。
そのため、最低限の自賠責基準以上の任意保険分の慰謝料を交渉・獲得するためには弁護士にご相談いただければと思います。