過失割合10対0の示談金の相場は?【むちうち編】
過失割合10対0では損害全額を請求できる
過失割合が10対0の場合には、事故の被害者に生じた損害の全額を加害者に対して請求することができます。
過失9:1では、治療費や慰謝料の9割しか相手に請求することができませんが、10:0では損害額そのままが請求額になるのです。
そのため、示談金の相場としては、損害額のみを考えれば良いことになります。
事故でむちうちになった場合の示談金の中身とは?
事故の示談金というのは、治療費や慰謝料など事故によるすべての損害について示談するときにもらうお金のことです。
事故でむちうちになった場合には、具体的に以下のような項目があります。
ただし、通常、治療費については保険会社が示談前に直接病院へ支払っていることが多いので、事故の被害者が最後に示談金として受け取るのは、以下の項目のうち、治療費以外のことが多いでしょう。
なお、今回はあくまでむちうちの怪我についての人損の示談金に限って開設しています。物損がある場合には、これとは別に物損の示談金がもらえます。
治療費
整形外科の治療費、薬局の薬代、整骨院の施術費用など
通院交通費
整形外科へ通院する際の交通費、電車代・バス代・ガソリン代など
休業損害
むちうちで仕事ができずに休んだ場合の補償、主婦が家事ができないときの補償
通院慰謝料
むちうちでつらい思いをしたことに対する補償
後遺障害慰謝料
むちうちの後遺症が残り将来もつらい思いをすることに対する補償
後遺障害逸失利益
むちうちの後遺症で、将来の収入が減ることに対する補償
むちうちの慰謝料の相場とは?
むちうちの治療期間としては、症状の軽いもので2週間程度、症状の重いものでは6ヶ月程度通院が必要になることもあります。
むちうちで通院した場合の慰謝料の金額は、弁護士を入れるかどうかによっても変わってきます。
弁護士を入れない場合には、保険会社から自賠責基準で慰謝料が提示されるのが通常です。
この場合、通院日数×2か通院総期間のどちらか少ない日数に、4,300円をかけた金額が算定されます。
弁護士に依頼した場合の慰謝料は、通院期間に応じて、下記の表の通りになります。
ただし、弁護士基準は裁判での相場なので、示談交渉のみで解決する場合には、以下の金額より若干減額されることがあります。
むちうちの通院期間 | 弁護士基準慰謝料(別表Ⅱ) |
1ヶ月 | 190,000円 |
2ヶ月 | 360,000円 |
3ヶ月 | 530,000円 |
4ヶ月 | 670,000円 |
5ヶ月 | 790,000円 |
6ヶ月 | 890,000円 |
7ヶ月 | 970,000円 |
むちうちによる休業損害の相場とは?
むちうちの怪我では、症状があっても仕事は休まないという方も多いです。仕事を休まなければ、無理して仕事をしたとしても、休業損害は請求できません。
症状のひどい急性期にのみ有休を使って仕事を休む場合もあります。この場合は、有休を利用して給料が出ていても、休業損害を請求できます。
症状が重く、仕事も肉体労働である場合などは、仕事をすると症状が悪化したり、場合によっては危険なこともあるため、長期間休業することもあります。
この場合は、事故と因果関係が認められる全期間について、休業損害を請求できます。
休業損害の金額は、事故前の3ヶ月分の収入から1日当たりの収入額を算出して、それを休業日数にかけて算出します。
また、主婦の場合は、むちうちの症状による影響で家事労働に支障が出ることもあり、その場合、主婦としての休業損害を請求できます。
主婦としての休業損害は、女性の1日当たりの平均賃金を家事労働の金銭的評価として、家事ができなくなった割合と期間をかけて算出することが多いです。
むちうちで後遺障害が認められた場合の追加の慰謝料は?
むちうちで後遺障害が認められる人の割合はそこまで多くありませんが、もし認められれば、示談金の額は数倍になることは珍しくありません。
これは後遺障害が認められた場合には、まず後遺障害慰謝料という項目が追加されるからです。
むちうちで14級が認定された場合の、後遺障害慰謝料の相場は次の通りです。
後遺障害等級 | 自賠責基準慰謝料 | 弁護士基準慰謝料 |
14級 | 320,000円 | 1,100,000円 |
なお、むちうちでは12級が認定されるケースもありますが、割合的に見ればレアケースなので、今回は省略します。
むちうちで14級認定のときの逸失利益とは?
むちうちで後遺障害14級が認定された場合、後遺症の影響で将来の収入が下がると予想される金額を後遺障害逸失利益として慰謝料以外に獲得することができます。
この逸失利益は、将来5年間、5%収入が下がるものとして認められるのが通常です。
この場合の金額は、事故前年度の年収×5%×4.5797(5年間のライプニッツ係数)として計算されます。
つまり、年収の2割程度が、後遺障害逸失利益の相場になります。
むちうちの示談金の相場とは?
これまで見てきたものを合計したものが、過失割合10:0の事故でむちうちになったときの示談金の相場になります。
まず、弁護士に依頼した場合の弁護士基準の相場は次の通りです。
治癒または後遺障害がない場合の相場
- 通院慰謝料:1万円~90万円
- 休業損害:0円~
- 示談金の相場:1万円~90万円程度+休業損害等
後遺障害14級の場合の相場
- 通院慰謝料:80~90万円
- 休業損害:0円~
- 後遺障害慰謝料:99~110万円
- 後遺障害逸失利益:年収の2割程度
- 示談金の相場:200万円~400万円程度+休業損害等
弁護士に依頼しない場合の示談金の相場
弁護士に依頼しない場合は自賠責基準で示談金が算定されるのが通常です。
自賠責基準による示談金の相場は、次の通りです。
- 治癒・後遺障害なしの場合:1万円~70万円程度
- 14級認定の場合:120万~150万程度
となります。
注意点:相場はあくまでも相場にすぎない
これまで見てきた示談金の相場は、むちうちの典型的な通院期間や、休業状況、平均収入から大きく逸脱しない年収の場合で算定しています。
同じむちうち症状であっても、症状の程度はピンキリですし、休業の可能性も労働内容によって大きく変わってきます。
そのため、個別の事案では、これまで見てきた相場から大きく外れる事案も存在します。
ですので、相場はあくまで参考にするのにとどめて、具体的な金額については、弁護士にご相談ください。