10対0の怪我なし物損事故の示談金の相場|迷惑料や慰謝料はもらえない?

10対0の怪我なし物損事故の示談金の相場|迷惑料と慰謝料は?

10対0の物損事故でも「慰謝料」はもらえない

被害者には全く過失のない10対0の事故でも、怪我なしの物損事故であれば、慰謝料はもらえません

慰謝料とは精神的苦痛に対する補償のことです。事故で怪我をした場合には、治療費だけ補償してもらっても、痛い思いをしたことや、後遺症が残ったことによる精神的苦痛はなかったことにはなりません。そのため、治療費に加えて、怪我や後遺症による精神的苦痛をお金に換算した慰謝料を請求することができるのです。

ところが、日本の民法の解釈や裁判例では、物損については壊れた物についての補償(修理費や時価額)をしてもらえば、精神的苦痛はなくなると考えられているのです。

そのため、物損事故では修理費や時価額が補償される以上、お金に換算できる精神的苦痛がないので、追加で慰謝料は請求できないのです。

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10対0の物損事故でも「迷惑料」はもらえない

慰謝料がもらえないなら、代わりに「迷惑料」は請求できないか?と考える方もいるかもしれません。

実際、追突事故など過失割合が10対0の事故に遭った被害者の方は、物損事故で慰謝料がもらえないことに「当てられ損だ」と不満を持たれるケースも多いです。なぜかというと、事故に遭うと怪我をしなくとも、警察との対応や、車を修理に出すなど時間と手間がかかってしまうからです。

その分の迷惑料を加害者からもらいたいと考えたくなる気持ちもわかります。

ところが、結論から言うと、迷惑料というものは認められません

そもそも法的にも自動車保険実務上も、迷惑料という名前の損害項目はないです。強いて言えば、迷惑料というのは迷惑したことによる精神的苦痛に対する補償なので、法的には「慰謝料」のことです。そして、先ほど説明したとおり物損事故で慰謝料はもらえない以上、同じ意味の迷惑料ももらえないのです。

そのため、たとえ過失が全くない被害者の方であっても、物損事故で迷惑料を請求することはとしてできません。

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加害者に直接迷惑料を請求するのもダメ

物損事故なので加害者の保険会社が慰謝料を払わない場合に、被害者が直接加害者に迷惑料を請求することはできません。

保険会社が払わないのなら直接加害者本人に請求すればよいのでは?と考えている人もいますが、これをすると加害者は弁護士を入れて支払いを拒んでくることが多いです。また、迷惑料の請求の仕方によっては、脅迫罪、恐喝罪、住居侵入罪などに該当し、被害届を出される可能性もあるので注意が必要です。

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加害者の方から迷惑料を渡してきたときは・・・

加害者が謝罪に来た際などに、加害者の方から任意に数万円程度の迷惑料的な金銭を渡されることもあるかと思います。これは、単なる贈与なので、受け取っても問題ありません。

迷惑料を法的に請求できない、もらえないからといって、任意に渡された迷惑料を受け取ってはいけないという決まりはないからです。

特に、物損車両が全損扱いとなり、時価額だけしかもらえないケースで(▶経済的全損だと泣き寝入り?修理したいのに全損扱いはおかしい?)、事故相手がご近所さん、取引先、地域の事業者などの場合には、トラブルを避けるために、保険会社からの時価額の賠償とは別に、加害者本人の負担で、修理費と時価額の差額程度の迷惑料を渡されることもあるかとは思います。

物損事故扱いでも怪我で通院した場合は慰謝料がもらえる

怪我なしの本来の「物損事故」ではなく、怪我をして通院したが警察では「物損事故扱い」になっているに過ぎない場合は、慰謝料をもらうことができます。

たまに、警察で物損事故扱いになっているので、治療費や慰謝料を請求できないのではないかと不安に感じている被害者の方もいます。インターネット上にはこの記事のように「物損事故では慰謝料は請求できない」と書かれているためです。

ところが、慰謝料が請求できないのは怪我なしの本来の物損事故の場合です。警察で物損事故扱いになっているかどうかと、治療費や慰謝料を相手が払うかどうかは関係ありません。▶物損事故でも治療費は自賠責や任意保険から出る?念のため病院へ行くべき?

そのため、警察で物損事故扱いになったままであっても、事故によって怪我をして通院をした事実さえ認められれば、問題なく慰謝料を請求することができます。

ただし、怪我をしたけど通院はしていないという場合は、そもそも怪我をしたことの証明が困難ですし、怪我の程度の証明もできないので、やはり慰謝料は請求できません。

怪我なしの物損事故で慰謝料がもらえた裁判例

怪我なしの物損事故では慰謝料は認められないのが原則ですが、例外的に慰謝料がもらえた裁判例を解説します。

下記の裁判例を見てもらえばわかるかと思いますが、慰謝料が認められるのは、ペット、墓石、自宅など特別な物が損傷した場合で、通常の車同士の事故で慰謝料が認められるケースはほぼありません。また、慰謝料が認められる例外ケースでも、その金額は10万円程度に留まることが多いようです。

墓石が破壊された事例

自動車事故によって墓石が倒壊し、骨壺が露出した場合に慰謝料10万円が認められた(大阪地判平12.10.12)。

ペットが死亡した事例

自動車事故によってペットの犬が死亡した場合に、飼い主に慰謝料5万円を認められた(東京高判16.2.26)。

事故でペットのパピヨンが死亡し、シーズーが骨折した場合に、飼い主に慰謝料が10万円認められた(大阪地判平18.3.22)。

事故でラブラドールレトリバーに後遺症が残った場合に、飼い主に夫婦に慰謝料合計40万円が認められた(名古屋高判平20.9.30)。

自宅が破壊された事例

深夜に大型トラックが民家に衝突し、屋根の落下、壁および柱等が破損した場合に、50万円の慰謝料が認められた(岡山地判平8.9.19)。

極めて悪質な事故の事例

飲酒運転の加害者が駐車車両に衝突して当て逃げし、被害者が探索して加害者を見つけた場合に、慰謝料10万円が認められた(京都地判平15.2.28)

怪我なし物損事故の示談金の中身とは?

怪我がない事故では、示談金の中身は物損のみになります。

過失割合が10対0の場合は、実際に生じた物損の100%を加害者に対して請求することができます。

物損の示談金の中身としは、具体的には次のようなものがあります。

車両の修理費または時価額

事故で被害者の車、バイク、自転車などが破損した場合は、その修理費または時価額を請求できます。

修理費を請求するのが原則ですが、全損(経済的全損の場合も)の場合は時価額しか請求できません。

経済的全損については、▶経済的全損だと泣き寝入り?修理したいのに全損扱いはおかしい?の記事で解説しています。

買い替え諸費用

事故で破損した車やバイクなどが全損になり、買い換える場合には、各種の買い換え諸費用を加害者に対して請求できます。

買換え諸費用については、▶交通事故で全損になった場合には買替諸費用も請求できるの記事で解説しています。

代車費用・レンタカー代

車を修理する間、または買換える間に、代車やレンタカーを借りたときの費用です。

代車費用については、▶事故の代車・レンタカー費用は相手に請求可能|10対0や9対1の過失割合の場合は?の記事で解説しています。

レッカー費用

事故車両を修理工場等まで運ぶ際のレッカー費用です。

被害者が自動車保険に加入している場合は、とりあえず自分の保険のレッカー費用特約などを利用するケースも多いです。

携行品(持ち物)などの修理費または時価額

スマホや衣服、腕時計など身につけていたものや持ち物が事故で破損した場合は、破損した物の修理や時価額を請求することができます。

持ち物の損害については、▶交通事故で携帯・スマホなどの持ち物が破損した場合の請求方法の記事で解説しています。

まとめ:怪我なし物損事故の示談金に相場は一切ない

一般的に示談金の相場というものが想定できるのは、怪我をした場合の慰謝料についてのみです。

例えば、過失10対0の事故でむちうちの怪我なった場合の慰謝料については、通院期間からある程度相場があるといえます。▶過失割合10対0の示談金の相場は?【むちうち編】

他方で、これまで説明したとおり物損事故では慰謝料や迷惑料は認められないので、怪我がない物損事故の示談金に相場というものは存在しません。

物損の内、もっとも高額になるのは通常は車両の修理費または時価額です。これは、軽度の事故で普通の車に傷がついただけの時は10万円程度のこともある一方、高級外車が全損になった場合には数千万円の損害が認められることもあります。

要するに、物損事故の示談金には相場というものは一切なく、どれくらい価値のある物がどれだけ壊れたかによって、同じ10対0の事故であっても、示談金の額はピンキリとなります。

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