交通事故の弁護士費用の相場|完全成功報酬制とは?
最終更新日:2024年11月14日/投稿日:2022年5月20日/執筆者弁護士豊田 友矢
ここで説明するのは、当事務所以外の一般的な交通事故の弁護士費用の一覧と相場(計算方法)の解説になります。
当事務所の弁護士費用については、こちらをご参照ください。
交通事故(被害者側)の弁護士費用の相場一覧
相談料|弁護士に相談する費用
- 相場(弁護士特約なし):無料or30分5,000円
- 相場(弁護士特約利用):60分まで10,000円
弁護士への相談料の相場は、通常30分5,000円です。もっとも、交通事故を多く取り扱う法律事務所では、怪我をした被害者側の相談料は無料のことが多いです。ただしそのような事務所でも、物損事故の相談や事故相手が無保険の場合には有料としていることが多いです。
ちなみに、弁護士費用特約を利用する場合には、相談者の自己負担分はありませんが、相談1時間まで10,000円、以降15分毎2,500円が相談料の相場です。つまり、この金額が弁護士特約の保険会社から弁護士に払われます。また、弁護士特約で自宅や病院まで出張相談をしてもらう場合には、1時間以内30,000円、以降15分ごとに2,500円が相場です。
着手金|依頼時にかかる費用
- 相場(弁護士特約なし):無料or10万~30万円
- 相場(弁護士特約利用):請求額の2~8%(最低10万円)
交通事故の着手金の相場は、弁護士費用特約の利用の有無によって変わってきます。
弁護士特約利用の場合
弁護士費用特約を利用した場合、以下のとおり、加害者への請求額(経済的利益)に応じて、請求額の概ね2~8%が着手金額となります。ただし、最低金額は10万円です。
経済的利益の額(請求額) | 着手金の額(税別) |
~125万円以下 | 10万円 |
125万円~300万円 | 8% |
300万円~3000万円 | 5%+9万円 |
3000万円~3億円 | 3%+69万円 |
3億円~ | 2%+369万円 |
また、裁判を行なう場合には、請求額の割合で計算した額からさらに25~50%増額されます。なお、自賠責保険金分については、通常の場合は経済的利益に算入せず、保険金額の2%のみが手数料としてかかりますが、異議申立をするなどした場合は、経済的利益に算入されます。
弁護士特約なしの場合
弁護士費用特約を利用しない場合、着手金は無料の事務所も有料の事務所があります。交通事故を多く取り扱っている法律事務所では、人損事故の被害者側の場合、示談交渉の着手金を無料としているところが多いです。有料の場合には、10万円~30万円程度が相場です。
また、示談交渉の着手金は無料の事務所でも、裁判を行なう場合には着手金が有料となることもあります。その場合の着手金は、20万円~40万円程度が相場です。
報酬金(成功報酬)|解決時にかかる費用
- 相場(弁護士特約なし):回収額の10~20%+10~20万円
- 相場(弁護士特約利用):経済的利益の4~16%
報酬金の相場も弁護士費用特約の利用の有無によって変わってきます。
弁護士特約利用の場合
弁護士費用特約を利用する場合、以下の表のとおり、経済的利益の額の4~16%が報酬金の相場です。
経済的利益の額 | 報酬金の額(税別) |
~125万円以下 | 16%または20万円 |
125万円~300万円 | 16% |
300万円~3000万円 | 10%+18万円 |
3000万円~3億円 | 6%+138万円 |
3億円~ | 4%+738万円 |
弁護士特約なしの場合
弁護士特約なしの場合、報酬金の相場は、回収金額の10~20%+10~20万円というように「回収額の固定割合+固定金額」で設定している事務所が多いです。
なお、裁判をした場合には、着手金・報酬金の計算方法が変わる法律事務所がほとんどです。裁判をした方が費用も高額になります。
このように報酬金の金額は、結果に応じて変わるので、最後までいくらになるのかがわかりません。ただし、賠償金の請求額が全額認められた場合が、報酬金の上限額となるため、この上限額については事前にわかります。
交通事故事件の経済的利益とは?
経済的利益とは、着手金の場合は、事故の加害者に請求する金額と考えるのが一番分かりやすいです。ただし、自賠責保険金分については経済的利益に含める場合と含めない場合があります。
報酬金の場合は、相手から回収した金額と考えるのが分かりやすいですが、契約の内容によっては裁判で判決を取得した場合は、回収不可能でも、判決で認められた額が経済的利益の額となることもあります。
弁護士依頼時に保険会社から示談金を提示されている場合は?
弁護士費用特約がある場合には、保険会社から事前提示がある場合の経済的利益は事前提示額を控除することが通常です。
他方で、弁護士特約がない場合には、事前提示額を控除するかどうかは法律事務所によって異なります。
一般的に、事前提示額を控除しない場合は、利益に対する報酬割合が低く設定されていますが、事前提示額を控除する場合は報酬割合が高く設定されています。
日当|弁護士の移動時にかかる費用
日当の相場は、弁護士の移動時間に応じて、以下の通りです。
移動時間 | 日当の額(税別) |
往復2時間~4時間 | 3万円 |
往復4時間~7時間 | 5万円 |
往復7時間~ | 10万円 |
弁護士特約を利用しない場合には、日当は原則として無料とするところもある半面、2時間以下であっても裁判に出廷した場合には1回当たり●万円と費用がかかるところもあります。
タイムチャージ(時間制報酬)|特別な料金体系
- 相場(弁護士特約なし):利用できないor1時間あたり2万円
- 相場(弁護士特約利用):1時間あたり2万円
タイムチャージ(時間制報酬)は、弁護士の業務時間に応じてかかる費用です。
ただし、タイムチャージ(時間制報酬)というのは、これまでみてきた着手金や報酬金とは別の料金体系になります。
つまり、交通事故を弁護士に依頼するときに、着手金・報酬金に加えてタイムチャージがかかるということはまずありません。着手金・報酬金方式かタイムチャージ方式かのどちらかで依頼することになります。
もっとも、交通事故の場合は、依頼者がどちらにするかを選ぶことはできないのが通常です。相談を受けた弁護士が、依頼前にどちらにするかを選択することになります。
例えば、少額の物損事故などは、着手金・報酬金方式で計算すると、弁護士が赤字になってしまうことが多いため、請求金額にかかわらず、弁護士の実働時間に応じて費用が発生するタイムチャージ方式でないと弁護士に依頼できないことが多いです。
なお、タイムチャージ方式を使うのは、交通事故の場合、原則として弁護士費用特約を利用する場合がほとんどです。
実費|弁護士が立て替えた費用
実費の相場はケースバイケースですが、数千円から数十万円の範囲内のことがほとんどです。
例えば裁判所に納める切手代は6,000円程度、収入印紙代は、裁判での請求金額に応じて数千円から数十万円程度かかります。
他には、弁護士が業務のために支払った交通費や医学意見書費用、工学鑑定費用、その他の調査費用などがあります。
いくらかかった?交通事故の弁護士費用の実例
ケースA:むちうちで後遺障害認定を受け示談金300万円を得たケース
Aさんは追突事故でむちうちになり、後遺障害14級が認定されました。
慰謝料や逸失利益を含めて既払治療費以外に約300万円の示談金を獲得しました。
弁護士費用特約に入っていなかったので、着手金無料、成功報酬20万円+10%で弁護士に依頼し、弁護士費用は50万円かかりました。結果的に250万円が手元に残りました。
ケースB:高次脳機能障害になり賠償金1億円を得たケース
Bさんは自動車にひかれて、脳を損傷し、高次脳機能障害3級の後遺障害が認定されました。
示談交渉では解決できず、1億5000万円を請求する裁判を起こしたところ、最終的に1億円で和解することができました。
また上限額300万円の弁護士費用特約に加入していました。
この場合、着手金が約650万円、報酬金が約740万円で、合計1390万円弁護士費用がかかりました。この内、300万円は弁護士費用特約から支払われたので、賠償金1億円のうち8910万円を手元に残すことができました。
ケースC:物損のみで裁判をした場合
Cさんは、修理費用10万円の物損について、過失割合に折り合いが付かず裁判を起こしました。
最終的には和解できましたが、和解するまで弁護士が25時間業務を行いました。
Cさんは弁護士費用特約に加入しており、タイムチャージ制で弁護士に依頼していたので、弁護士費用は2万円×25時間=50万円かかりましたが、全て弁護士費用特約で賄うことができました。
交通事故の弁護士費用に関するよくある疑問
完全成功報酬型の弁護士費用とは
完全成功報酬型とは、成果に応じてのみ弁護士費用が発生する形態です。つまり、着手金は無料で、成功報酬のみがかかります。
「完全」というのは、通常、成功報酬が相手からもらった賠償金額を上回ることはないという事を意味します。
ただし、完全成功報酬型で依頼することが出来る案件というのは、一定の金額を相手から回収できる可能性が高い案件に限っている事務所がほとんどです。
例えば、MTBIや脳脊髄液減少症に関して、自賠責では非該当であるものを裁判で後遺障害を争う事件など、見通しが立ちにくい事件も存在します。また、加害者が無保険であり、裁判で勝っても回収が困難な事案もあります。
このような事件については、完全成功報酬型では依頼できず、一定の着手金がかかる法律事務所が多いかと思います。
弁護士費用を相手に請求できないか?
原則として弁護士費用を相手に請求することはできません。詳しくは▶弁護士費用を相手に請求できる?慰謝料請求や交通事故の示談交渉の場合は?の記事を参考にして下さい。
費用倒れになってしまわないか?
交通事故を弁護士に依頼して費用倒れになってしまわないか心配な方も多いと思います。
特に弁護士費用特約がない場合は、費用倒れになってしまうケースがないとは言い切れないので、必ず事前に確認するようにしましょう。詳しくは、▶費用倒れになるか|交通事故を弁護士へ依頼するかどうかの境界線の記事を参考にしてください。
弁護士費用は安いほど良いのか?
必ずしも弁護士費用が安いほど得というわけではありません。なぜなら、交通事故の損害賠償請求は依頼する弁護士によって、獲得することが出来る賠償金の額が大きく変わることがあるからです。
例えば、弁護士費用が100万円高くなる弁護士に依頼したとしても、その結果、費用が安い弁護士に依頼するよりも1,000万円も多くの賠償金を獲得することが出来れば、そちらの方が得ということになります。
弁護士費用が高い方が良い弁護士なのか?
それでは費用が高い方がいい弁護士なのかというと、それも違うのが難しいところです。
基本的に弁護士費用は、弁護士の能力によって高くなったり低くなったりすることはあまりなく、地域性や、弁護士の考え方、広告費用などの経費をどれくらいかけているかによって変わってくることが多いです。
そのため、弁護士費用が高いか安いかで、交通事故に強い弁護士を見分けることはできません。
交通事故に強い弁護士の選び方については、▶どこがいい?交通事故弁護士のおすすめの選び方と探し方の記事を参考にして下さい。
事故加害者の弁護士費用はいくら?
交通事故の被害者から訴えられた場合に、加害者が弁護士を付けるときの費用は、法律事務所によってまちまちです。
加害者が任意保険に加入している場合は、加害者の弁護士費用は保険会社から保険会社の基準によって支払われます。
弁護士費用を払えないとどうなる?
弁護士費用を払えないと弁護士に依頼することが出来ません。
ただし、着手金無料の場合は、着手金を払わずに弁護士に依頼することができます。
また、完全成功報酬制であれば、報酬金も加害者側から受け取った示談金から払えば良いので、自分の財布から支払う必要はありません。
弁護士費用はいつ払う?
着手金が有料の場合は、弁護士に依頼と同時、または、依頼後速やかに支払う必要があります。
報酬金は事件が終了したときに支払います。
実費や日当は、都度支払う場合と、最後にまとめて支払う場合があります。