事故の過失割合と修理費の計算|9対1なら保険を使わず相殺?
最終更新日:2024年9月25日/投稿日:2022年8月10日/執筆者弁護士豊田 友矢
被害者にも過失があるときの、過失割合と修理費の計算について、9対1の場合を例に挙げて解説します。
また、自分の車と相手の車の修理費のうち、自分の過失分について、保険を使わない方法も解説します。
目次
過失割合と修理費の計算|9対1の場合を参考に
被害者にも過失がある事故の場合には、相手の過失割合分のみ修理費を請求できます。
例えば、過失割合が9対1の事故(加害者側が9)であれば、被害者は修理費の9割しか相手に請求できないのです。自分の車の修理費が50万円であれば、50万円×90%=45万円のみ請求できることになります。
次に、事故で相手の車も破損した場合は、相手の修理費のうち、自分の過失割合分を払わないといけません。
例えば、9対1の事故では、その修理費等の1割を被害者側が負担する必要があります。相手の車の修理費が300万円であれば、300万円×10%=30万円を相手に払う必要があります。
自分の車の修理費のうち自分の過失分はどうする?
では9対1の事故で、自分の車の修理費の9割を相手に払ってもらった後、修理費の残りの1割(自分の過失分)はどうすればよいのでしょうか?以下、様々な選択肢を解説します。
修理費の1割は自己負担で修理する
まず、残りの1割の修理費については、自分で負担して修理を実施することができます。
この場合、修理工場に相手保険会社から修理費の9割を払ってもらい、被害者が自分で1割を払うことにより、修理を実施してもらうことになります。
修理費の1割は車両保険を利用する
自分が車両保険に加入している場合は、自分の過失分についても車両保険から支払を受けることができます。
車両保険を利用して修理するのであれば、修理工場に自分の保険会社から修理費の全額を払ってもらい、修理を実施します。
ただし、車両保険を利用すると、保険の等級が下がり保険料が上がります。そのため、9対1程度の過失割合だと車両保険を使うケースは少ないかと思います。
9割の修理費で修理できるところだけ修理する
一部の修理は保留にして、9割の修理費で修理できるところだけ修理を実施するということもできます。
安全な走行に必要な部分を修理して、見た目だけの部分はそのままにすることになります。
修理しないで修理費分の現金をもらう
実際に修理をしないでも、修理費分の現金をもらうことができます。▶もらい事故では車を修理しないで現金をもらえる?車両保険の場合は?
この記事では、過失割合10対0の話をしていますが、9対1でも、修理せずに現金で修理費分をもらうことができます。
そのため、相手の過失分の修理費の9割を現金でもらい、その現金を元手に車を買い替えるということもできます。
全損の場合は時価額の9割の現金をもらう
経済的全損になった場合には、修理費ではなく時価額分の現金を請求することになります。▶経済的全損だと泣き寝入り?修理したいのに全損扱いはおかしい!
この場合、相手の時価額のうち相手の過失分である9割しか払ってもらえません。修理はせずに現金でもらうので、残りの1割をどうするかは問題になりません。
相手の車の修理費のうち自分の過失分はどうする?
過失割合9対1の場合は、被害者も相手の車の修理費の1割を賠償しなければなりません。
相手の過失割合が9割であったとしても、相手の車両が高級外車である場合や、相手の車両の方が損傷が大きい場合は、なんと自分の車の修理費の9割よりも、相手の車の修理費の1割の方が高くなることもありえます。
この相手の車の修理費の1割については、被害者の加入する対物保険を利用して支払うこともできますし、保険を使わずに被害者が自己負担で支払うこともできます。
また、これ以外に、過失相殺(相殺払い)をする方法と、例外的に9対0で処理する方法もあるので、以下で解説します。
過失相殺(相殺払い)で保険を利用しない方法も!
加害者の1割の修理費等の支払について、被害者が対物保険を使う場合は、いわゆるクロス払いをすることが通常です。この場合、加害者が被害者に対して被害者の修理費の9割を支払う一方で、被害者は加害者に対して加害者の修理費の1割を支払うことになります。
保険料が上がるのを避けるために、過失1割の被害者が対物保険を使わないこともできます。この場合は、被害者がもらう9割の修理費から、払わなければいけない相手の1割の修理費を差し引いて残額をもらうという方法がとれます。この方法を過失相殺(かしつそうさい)といい、このような支払方法を相殺払い(そうさいばらい)と呼びます。
例外:過失割合9対0にして修理費を処理するケース
法的には過失割合9対0(または90対0ともいます)ということはあり得ません。過失割合は、それぞれの過失を足せば10(または100)になるものです。
しかしながら、加害者側の早期解決の希望などの事情により、本来は過失割合が9対1のケースでも、加害者側の保険会社から過失割合9対0の提案がなされるケースがあります。
これはどういう意味かというと、被害者の修理費等の9割は支払うが、加害者の修理費等の1割は請求しないという意味です。この結果、残りの1割については、支払う必要がなくなるので、被害者は保険を使う必要もなくなります。等級も下がらないので保険料も上がりません。
このような処理方法は、法律的な過失割合が9対1なのであれば、法律通りの解決よりも、被害者側には有利な内容といえます。