10対0の事故で車をぶつけられた!修理費or買い替え費用のどっちを請求
最終更新日:2024年9月25日/投稿日:2022年7月23日/執筆者弁護士豊田 友矢
かしつわりかしつわり
過失割合10対0の事故で車をぶつけられたとき、相手に車を修理してもらうこともありますが、買い替え費用のためにお金をもらうこともあります。
どちらかを選べるのでしょうか?どちらを選ぶのが良いのでしょうか。
この記事では、修理or買い替えのパターン別に解説します。
目次
10対0の物損事故なのに修理費がもらえない場合
まず前提として、過失割合が10対0の物損事故でも、被害者が修理費の全額をもらえないケースがあります。
1つ目は、全損扱い(経済的全損)になる場合です。2つ目は、修理箇所・方法・金額に争いがある場合です。
経済的全損なら修理費はもらえない
修理費の見積額が、車両の時価額より高くなってしまった場合は、いわゆる経済的全損として、全損扱いになります。
この場合、過失割合10:0の事故であっても、修理費の全額を賠償してもらうことはできません。▶経済的全損だと泣き寝入り?修理したいのに全損扱いはおかしい!
修理箇所・方法・金額に争いがある場合
事故の被害者が希望する修理箇所や修理方法と、アジャスターが認める修理箇所や修理方法が一致しない場合は、希望する修理費用を支払ってもらうことができません。
どうしても自分の希望する箇所と方法についての修理費用を支払ってもらいたい場合は、証拠を集めて裁判で戦う必要があります。
10対0の事故の修理or買い替えパターン
修理or買い替え5パターン
過失割合10対0(100対0ともいいます)の物損事故にあったとき、ぶつけられた車の修理or買い替えパターンは次のとおりです。
- 相手の保険負担でぶつけられた車を修理してもらう
- 修理しないで修理費をもらって乗り続ける
- 修理しないで修理費をもらって買い替える
- 全損扱い→時価額をもらって乗り続ける
- 全損扱い→時価額をもらって買い替える
まずは、全損扱いかどうかで大きく2つに別れます。全損ではないなら修理費の賠償(1か2か3)、全損扱いなら時価額の賠償(4か5)になります。
そして、全損ではない場合は、修理するか(1)、修理しないで現金をもらうか(2か3)を選びます。
他方で、全損扱いの場合は、相手の保険で修理してもらうことはできないので、基本的に現金でもらう1択(4か5)になります。
いずれの場合も、乗り続けるか買い替えるかは、別に選ぶことになります。
以下、この5パターンについて解説します。
①ぶつけられた車を修理してもらう
まずは、ぶつけられた車を実際に修理してもらう場合です。全損扱いでなければ、このパターンが多いかと思います。10対0の事故であれば、修理費は全額相手の保険負担で修理してもらいます。
修理を実施するのであれば、相手保険会社から直接工場へ修理費を払うのが通常です。この場合の流れは次のとおりです。
事故車両を修理工場へ運びます
事故車の損傷が軽微で自走が可能な場合、自分でディーラーや修理工場へ運びます。安全に走行できない恐れがある場合は、レッカーで運搬します。
相手の保険会社が提携している工場を勧められることもありますが、自分でいつも世話になっているディーラーや工場に修理をお願いしても問題ありません。
修理費の概算見積もりが作成されます
ディーラーや修理工場で、事故による修理箇所と修理費用の見積もりが出されます。この見積もりが加害者の保険会社へも提出されます。
修理工場とアジャスターとの間で協定がされます
修理箇所と費用について、加害者の保険会社側のアジャスターと修理担当者との間で協議が行われます。
この際に、事故と関係ないと考えられる修理箇所は外され、修理費用が相場より高額な場合は適正価格へと減額されます。
最終的に修理担当者と、アジャスターとの間で話がまとまった場合には、協定という手続がなされます。
修理が実施されます
協定がなされると、修理工場で実際に修理が行われます。自動車の部品を取り外してみて、追加の修理が必要なことが判明することもあります。
この場合は、追加の修理箇所と費用について再度協定がされることがあります。
修理後の自動車が納車されます
修理が完了すると、修理後の自動車が被害者に納車されます。
修理中の代車は、修理工場で出してくれる場合が多いですが、別途レンタカー等を利用することもあります。
②修理費分の現金をもらい乗り続ける
修理が可能な場合であっても、修理せずに修理費分の現金をもらうこともできます。▶もらい事故では車を修理しないで現金をもらえる?車両保険の場合は?
10対0の事故で、全損扱いにならなければ、修理しないでも修理費全額がもらえます。
この場合、安全に走行できるのであれば修理しないで乗り続けることもできますし、もらった修理費相当のお金を使って、後日修理をすることもできます。ただし、もらったお金では修理が足りないこともあるので注意しましょう。
③修理費分の現金をもらい買い替える
修理をせずに修理費分の現金をもらった上で、車を買い替えることもできます。
この場合、事故車を売却や下取りに出して、お金に換えることもできます。現金でもらった修理費と、事故車の売却代金を元手に、新しい車へ買い替えることになります。
④時価額分の現金をもらい買い替える
全損扱いで時価額を現金でもらった場合には、その現金を資金に車を買い替えることになるのが通常です。全損である以上、修理費の方が高いので、相手の保険で修理をしてもらうことはできません。
⑤時価額分の現金をもらい乗り続ける
全損扱いの場合に、時価額分の現金をもらった上で、その車に乗り続けることができる場合もあります。▶経済的全損だと泣き寝入り?修理したいのに全損扱いはおかしい!
ただし、原則的には、時価額のお金を受け取ると、事故車の所有権が相手保険会社に移り、引き上げることもあるので注意しましょう。
10対0の物損事故で修理や買い替えに使う保険
10対0なら加害者の対物保険を使うのが原則
過失割合が10対0の事故であれば、加害者が全損害について賠償する責任があるので、通常は加害者が加入している対物保険を利用します。この対物保険で、修理費を出してもらったり、全損の場合には時価額を払ってもらい買い替えるための資金にしたりします。
相手が無保険の場合は自分の車両保険を検討
10対0の事故でも加害者が無保険の場合は、被害者が車両保険に加入しているのであれば、その車両保険を利用することが多いです。
もちろん、車両保険を利用せずに、加害者本人へ請求することもできます。ただ、自動車保険に加入していない人はお金がないことが多いので、請求しても裁判しても払ってもらえないことが多いです。その結果、最終的には車両保険を利用せざるを得なくなります。
等級が下がる場合にはどっちが得か比較する
10対0の事故でも、加害者が無保険で、しかも、お金もないため払ってもらえないときには、自分の車両保険を使うか自己負担で修理するかの2択になります。
この場合、車両保険を利用すると保険の等級が下がり、翌年以降の保険料が上がってしまうのが通常です。そのため、修理費を自己負担するのと、保険料が上がるのでどちらが損するかを考えて決める必要があります。
車両保険には様々な得になる特約がある
車両保険には、様々な特約があり、たとえば経済的全損の場合にも実際にかかる修理費全額がもらえる特約などがあります。
このような特約に加入している場合には、過失10対0の事故であっても、加害者から時価額での賠償を受けるよりも、自分の加入する車両保険の特約を利用した方が良いこともあります。
また、自分が無過失の場合には、車両保険を使っても保険料が上がらない特約もあります。このような特約に入っている場合には、過失10対0の事故では、車両保険を使うメリットが大きいといえるでしょう。