交通事故の弁護士は変更できる?セカンドオピニオンについて
最終更新日:2024年11月2日/投稿日:2022年1月27日/執筆者弁護士豊田 友矢
交通事故弁護士のセカンドオピニオンについて
他の弁護士に「相談」した後のセカンドオピニオン
まずは、交通事故について他の弁護士に相談した後のセカンドオピニオンです。
弁護士に相談した後に、すぐにその弁護には依頼せずに、他の弁護士にも相談してみてから、依頼をする弁護士を決めるという方法です。
この意味での弁護士へのセカンドオピニオンは、比較的よく行われています。既に他の弁護士に相談しているということだけを理由に、相談を断られるケースはほとんどないと思います。
当事務所でも、他の弁護士に相談したけど、あまり良くなかったので相談したいという方もいらっしゃいますし、実際に相談を受けています。
今は交通事故の被害者の方の相談は無料となっている事務所も多いですし、有料の場合でも弁護士費用特約(法律相談費用特約)を利用すれば、10万円まで相談料がタダになるので、複数の弁護士に相談しても費用がかさむこともないでしょう。
この場合、相談した複数の弁護士の中から、自分にとって一番良い弁護士を選べるかどうかが重要です。
相談時間は、30分から1時間程度の場合が多いので、その時間の中で自分にとって一番良い弁護士を判断する必要があるからです。
また、誰にとっても一番良い弁護士というのはいないのです。あくまで、あなたにとって一番の弁護士を選ぶ必要があります。
他の弁護士に「依頼」した後のセカンドオピニオン
次に、既に弁護士に交通事故の示談交渉を依頼した後のセカンドオピニオンについてです。
これは、既に弁護士を依頼しているが、依頼した弁護士に不満があるので弁護士を変えたい、大きな不満があるわけではないが依頼した弁護士の方針に問題がないか聞いて安心したいという場合に、行われるものです。
最初に説明したセカンドオピニオンに比べると、この意味でのセカンドオピニオンは比較的少ないです。
また、この意味でのセカンドオピニオンは、相談を受け付けない弁護士や事務所もあると思います。
当事務所では、交通事故に関しては、既に他の弁護士に依頼中のセカンドオピニオンも受け付けておりますが、原則として有料となっています。
セカンドオピニオンを求める際に注意する点
セカンドオピニオンを求める際に注意すべき点があります。
医療業界では、「後医は名医(こういはめいい)」という言葉があります。
これは、患者からすると、後に出会う医者の方が良い医者のように感じられるのが普通という意味です。
弁護士へのセカンドオピニオンにも、これが一部あてはまるのです。
なぜかというと、まず相談にくるかたは、初めての相談よりも、2回目以降の相談の方が、事件の経緯や自分の希望を整理して話すことができるため、短時間で弁護士が内容を把握して適格なアドバイスがしやすいと言うことがあります。
次に、最初に相談または依頼した弁護士の方針について、二人目以降の弁護士に相談した際に、「●●の部分はおかしいかな」と言われた際に、その意見についての批判を最初の弁護士からは聞けないということがあります。
そうすると、あたかもセカンドオピニオンを求めた弁護士のいっていることが全て正しいと簡単に思い込んでしまう場合があります。
そのため、複数の弁護士に相談した際に、どの弁護士に依頼するかを決める、または、弁護士を変えようとする時は、慎重に考える必要があるのです。
当事務所でも、セカンドオピニオンを求められた際には、自分に依頼するように勧めることはありません。
ご相談者がどの弁護士に依頼するかは、上記のようなセカンドオピニオンの特殊性を踏まえた上で、慎重にご判断いただいております。
交通事故を依頼した弁護士を変えたい
いったんは交通事故を弁護士に依頼したものの、様々な理由により弁護士を変えたいと考える方もいるかと思います。
当事務所でも、既に別の弁護士を依頼しているが、途中で弁護士を変えたいという相談を受けることがあります。
そんな方のために、ここでは、途中で弁護士を変えることができるのか?弁護士を変えた方がいいのか?変えるとしても注意点はあるのか?等の疑問にお答えします。
途中で弁護士を変更することはできるか?
結論からいうと、いったん弁護士を依頼したとしても途中で弁護士を変更することはできます。
なぜかというと、弁護士との契約は民法上の委任契約なので、依頼者の側からも自由に解約することができるからです(民法651条1項)。
その後、別の弁護士と新たに委任契約を締結することにより、弁護士の変更が実現できます。
もちろん割合でいえば、最後まで同じ弁護士に依頼を継続する方の割合が圧倒的に多いのですが、諸事情により一定数の方は途中で弁護士を変更しています。
本当に弁護士を変えた方がいいのか?
弁護士を変えたいと相談を受けたときに、必ずお伺いするのは弁護士を変えたい理由です。
なぜなら、弁護士を変えたい理由が、実は弁護士を変えても解消できるものではない場合には、そもそも弁護士を変える意味がないからです。
例えば、どの弁護士であっても勝てないであろう裁判中に、裁判で勝つために弁護士を変えたところで、結果は変わらないので無駄になってしまいます。
それでは、どのような場合には弁護士を変えた方が良いのでしょうか?
- 弁護士と長期間連絡が取れない
- 弁護士と相性が合わずにコミュニケーションがとれない
- 弁護士が交通事故に詳しくない
このような場合は、弁護士を変えた方がいいケースが多いでしょう。
新たな弁護士を探して、自分自身でその弁護士と相性が合いそうか、交通事故に詳しいのかを判断して決めるのが良いでしょう。
なお、法律事務所の事務スタッフとは連絡が取れるが弁護士とはなかなか連絡が取れないことが不満であるというケースでは、弁護士との距離が近い小規模の地域密着型の法律事務所を選ぶと良いでしょう。
- 示談交渉が進まない
- 示談交渉や裁判で納得のいく解決ができない
このような場合は、弁護士を変えた方が良いかどうかは、セカンドオピニオンを受けた上で判断する必要があります。
なぜかというと、まず示談交渉が進まない点については、その理由が依頼した弁護士ではないことも多いからです。
この場合は弁護士を変えても示談交渉が進むとは考えられませんし、逆に余計に時間がかかってしまう可能性もあります。
次に、示談交渉や裁判で納得のいく解決ができない点については、弁護士の変更によって結果が変わる可能性があるかどうかの判断が、弁護士でないと難しいからです。
そのため、これらのケースでは弁護士を変えた方が良いかということ自体を別の弁護士に相談してから、実際に弁護士を変更するかどうかを決めた方が良いでしょう。
交通事故の弁護士を変更する流れ
弁護士を変更する一般的な流れは次のとおりです。
1 新たな弁護士を探す
まずは、新たな弁護士を探して、相談予約を取りましょう
弁護士の探し方は、こちらの記事を参考にして下さい。
相談予約の際には、必ず現在弁護士を依頼中で、弁護士を変えるかどうかを決めるためにセカンドオピニオンを受けたいと伝えましょう。
2 新たな弁護士のセカンドオピニオンを受ける
実際に、新たな弁護士に相談をしましょう。通常の交通事故相談で伝えることに加えて、現在の弁護士に依頼してからの経緯と弁護士を変えたいと考えるようになった理由についても必ず伝えましょう。
3 依頼したい弁護士に依頼を受けてもらう約束をする
セカンドオピニオンを受けた弁護士に依頼したいと考えたら、その弁護士に依頼を受けてもらえるか必ず確認しましょう。
現在の弁護士を解約してからでないと、新たな弁護士とは契約を結べないことが通常であるため、現在の弁護士との契約を解約できたら依頼を受うけてもらうことについて約束しておきましょう。
4 現在の弁護士と解約手続をして、資料の返却を受ける
新たな弁護士に依頼をする約束をしたら、現在の弁護士に連絡して解約したい旨伝えましょう。
弁護士費用の精算と解約について合意できたら、辞任通知等の解約を証明する書面をもらいましょう。
また、現在の弁護士に提出している資料や、現在の弁護士が取り付けた資料があれば、それを全て返却してもらいましょう。
5 新たな弁護士と委任契約を締結する
従前の弁護士からもらった辞任通知や資料などをもって、依頼を約束していた弁護士と再度連絡を取って、正式な依頼手続をしましょう。
この段階で弁護士が変更されたことになります。
弁護士を変更する場合の注意点
弁護士を途中で変更する場合には、下記のようにいくつかの注意点があります。
途中から引き継ぐ弁護士が見つからないこともある
一般的に最初から依頼するよりも、途中から依頼する弁護士を探す方が弁護士が見つかりにくいことがあります。
ですので、弁護士を変えたいときも、現在の弁護士との契約を解約するよりも先に、新たに依頼する弁護士を見つけておいた方が安心です。
今の弁護士に支払った着手金が戻ってこないことが通常
着手金とは、契約時に発生し、途中で解約しても原則として返金されない性質があります。そのため、途中で弁護士を変える場合、最初の弁護士に支払った着手金は戻ってこないことが通常です。
段階によっては報酬金の一部も支払う必要があるケースもある
現在の弁護士が一定の業務を行っている場合は、途中解約する際に、その進行状況に応じて、報酬金の一部を支払う必要が生じる可能性もあります。具体的には、解約の際に依頼した弁護士と協議して決めることになります。
新たに依頼する弁護士費用が安くなるわけではない
現在の弁護士が途中まで業務を進めていたとしても、新たに依頼する弁護士の弁護士費用が安くなることは通常ありません。
なぜかというと、意外かも知れませんが、途中から依頼を受けたとしても弁護士が行う業務量はそれほど変わらないからです。
特に裁判中に弁護士を変更する場合などは、むしろ最初から依頼するよりも業務量が増えるケースもあります。
弁護士費用特約から弁護士費用が払われないことがある
弁護士費用特約を利用している場合は、特約限度額(300万円が通常)の範囲内では、依頼者の負担が生じないことが通常です。
しかしながら、途中で弁護士を変更する場合、弁護士費用特約の内容によっては、新たに依頼した弁護士に着手金を支払うことができないケースがあります。
その場合、弁護士費用特約があっても、着手金分だけは自己負担となってしまいます。
この点は、事前に弁護士費用特約の保険会社に確認するようにしましょう。