入通院慰謝料の計算方法|自賠責基準と弁護士(裁判所)基準の違い

交通事故にあって怪我をして治療が必要となった場合、入通院慰謝料(傷害慰謝料)を請求することができます。
では、具体的な入通院慰謝料の金額は、どのぐらいになるのでしょうか。
ここでは、慰謝料を算定する際に用いられる2つの基準を説明し、具体例をもとに、入通院慰謝料の相場をみていきます。

入通院慰謝料とは

「入通院慰謝料」とは、交通事故による怪我の治療のために、入院や通院をしたことによる精神的苦痛に対して支払われる慰謝料のことをいいます。「傷害慰謝料」ともいわれます。
基本的には、入院や通院をした期間が長くなるほど、入通院慰謝料の金額は高くなります。具体的な金額は、以下で説明する「自賠責基準」「裁判所基準」と呼ばれる基準に従って算定されます。

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自賠責基準での入通院慰謝料

自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は、自動車損害賠償保障法5条によってすべての自動車に加入が義務付けられている強制保険です。自賠責保険は、交通事故によって死傷した被害者に対して、保険金が支払われる保険です。その保険金は、支払基準に従って損害額を算定し、政令によって定められた支払限度額の範囲内で支払われることになっています。「自賠責基準」とは、この支払い基準のことをいいます。
以下、上限額及び支払い基準について、説明します。

保険金支払いの上限額

自賠法13条1項は、「責任保険の保険金額は、政令で定める。」と規定しています。これを受けて、自賠法施行令2条が、自賠責保険における支払いの上限金額を定めています。
具体的には、「傷害による損害」に対する保険金の上限額は、120万円、「後遺障害による損害」の上限額は、後遺障害の程度(等級)に応じて、75万円から4000万円、「死亡による損害」は、3000万円とされています。

保険金の支払い基準

自賠法16条の3は、「保険会社は、保険金等を支払うときは、死亡、後遺障害及び傷害の別に国土交通大臣及び内閣総理大臣が定める支払基準(以下「支払基準」という。)に従つてこれを支払わなければならない。」と規定しており、これを受けて、支払い基準が定められています(支払基準に従って支払うこととされています (平成13年金融庁国土交通省告示第1号)。
自賠責保険は、被害者に必要最低限の損害賠償を行うことを目的としたものですので、基準の金額は、低くなっています。

入通院慰謝料の支払い基準

自賠責保険(※)における入通院慰謝料の支払い基準は、次のとおりです。

※自賠責保険の支払基準が改正され、令和2年4月1日以降に発生した入院慰謝料については、新基準が適用されます。令和2年4月1日以前に発生した入院慰謝料については、1日につき4200円です。

  • 1日につき4300円
  • 慰謝料の対象となる日数は、実治療日数の2倍と総治療日数(初診から治療を終了した日までの総日数)を比較して、小さい方を採用する
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裁判所基準での入通院慰謝料

裁判所基準(弁護士基準)の基本

「裁判所基準」とは、裁判所の考え方や過去の判例などを研究した結果として公表された交通事故の損害賠償の金額の基準で、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行する「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」(通称「赤い本(赤本)」)という書籍にまとめられています。多くの裁判所で、損害賠償の金額を判断する際の目安としても利用されています。また、弁護士が相手方に損害賠償請求を行う場合に用いる基準でもありますので、「弁護士基準」とも呼ばれています。

入通院慰謝料の算定基準

一般的に、「赤い本」の中の、「別表Ⅰ」ないし「別表Ⅱ」という表に、入院期間と通院期間を当てはめて算定します。
「むち打ち症で他覚所見がない場合等(軽い打撲・軽い挫傷を含む)」の場合には、別表Ⅱの方を使います。別表Ⅰは、それ以外の場合に使われます。
採用される通院期間については、原則、通院した期間をもとに計算しますが、赤い本では、別表Ⅰの場合には、「通院が長期にわたる場合には、症状・治療内容・通院頻度を踏まえ、実通院日数の3.5倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもある」とされています。また、別表Ⅱの場合には、「通院が長期にわたる場合は、症状、治療内容、通院頻度を踏まえ、実通院日数の3倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもある。」とされています。

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入通院慰謝料の具体例

それでは、次のような事例をもとに、具体的な算定例をご紹介します。

  • 例1:むち打ち症、通院期間3カ月(実治療日数30日)
  • 例2:骨折、通院期間6カ月(実治療日数50日)

例1の場合

・自賠責基準による算定

30日×2=60日は、3カ月(30日×3=90日)よりも少ないので、60日を治療日数として採用します。
入通院慰謝料は、60日×4300円=25万8000円となります。

・裁判所基準

むち打ち症なので、別表Ⅱを利用します。別表Ⅱに、通院期間3カ月を当てはめると、入通院慰謝料は、53万円となります。

例2の場合

・自賠責基準

50日×2=100日は、6カ月(180日)よりも少ないので、100日を治療日数として採用します。
そうすると、入通院慰謝料は、100日×4300円=43万円ととなります。

・裁判所基準

別表Ⅰに通院期間6カ月を当てはめると、入通院慰謝料は、116万円となります。

交通事故にあって怪我をした場合には弁護士にご相談ください

以上からわかるように、入通院慰謝料の金額は、弁護士基準を用いて算定すると、大幅に増額します。このことは、入通院慰謝料だけではなく、後遺障害慰謝料などの損害項目についてもいえることです。
つまり、交通事故の損害賠償請求を弁護士に依頼すると、ほとんどの場合で、得られる賠償金は大きくなるのです。
ですから、交通事故によって怪我を負った場合には、まずは弁護士にご相談ください。弁護士が、個々のケースにおいて、どのくらいの賠償金を請求できるのか、具体的にアドバイスします。

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