保険会社から示談金を提示されたら|示談金に納得できない場合の対処法
交通事故にあって、自動車の修理が必要となったり、怪我をしたりした場合には、事故の相手方に対して損害賠償を請求することになります。事故の相手方が任意保険に加入している場合には、一定の時期になると、任意保険会社が示談金(損害賠償金)の提示をしてくるのが一般的です。
示談金を提示されても、書面の見方がわからない、妥当なのかどうかわからない、納得がいかないというようなことも多いと思います。
ここでは、保険会社から示談金を提示された場合の対処方法について、解説します。
交通事故の示談金とは
「示談」とは、損害賠償の金額や支払い方法などについて、裁判ではなく、当事者同士の合意というかたちで解決することをいいます。示談において、授受される金銭のことを、「示談金」と呼びます。
交通事故の場合の示談金の中には、いくつかの損害賠償の項目があります。主な損害項目は、以下のとおりです。
- 車両などの修理費
- 治療関係費
- 休業損害
- 入通院慰謝料
- 逸失利益
- 後遺障害慰謝料
また、話し合いによって決定した当事者の過失割合に応じて、損害賠償金が減額されることになります。
免責証書が保険会社より届いたら・・・
交通事故による怪我の治療が終了し,後遺症の有無が確定すると,加害者の保険会社から,免責証書という紙が届きます。また,別紙に,そこにはこれまでかかった治療費がいくら,休業損害がいくら,慰謝料がいくらなどと損害の項目が書いてあるはずです。
そこにサインをすれば,書いてある金額を払うと保険会社の担当者に言われて,そのままサインをしてしまう方もいます。でも,気をつけてください。そこにサインをして送ってまうと,これ以上の賠償金は一切請求できなくなります。
交通事故の慰謝料・示談の相場はどれくらい?
交通事故の被害にあってしまったとき、加害者や保険会社から慰謝料や示談金をいくらもらえるのでしょうか。
交通事故にあった後、怪我の治療が終わると、通常は加害者の保険会社から、「慰謝料〇〇万円払うから示談したい」という内容の書面が届きます。 そのとき、その慰謝料・示談金がが自分の被害に見合った妥当な金額なのかがわからないと、相手の言い値で示談してしまうことになります。
また、まだ慰謝料などお金の話が出ていない段階であっても、事故にあってつらい思いをして治療している中、最後にいくら慰謝料などをもらえるのかは、気になるのが普通です。
交通事故にあうことなんて一生のうちに何度もあるわけではありません。そのため、ほとんどの方は交通事故の慰謝料や示談金がいくらくらいなのか見当がつかないはずです。
だからこそ、もし交通事故にあってしまったら慰謝料や示談金がいくらなら適正なのかを示談する前に知っておくことが必要です。
そもそも慰謝料とは?
それではそもそも慰謝料というのは何でしょうか?
慰謝料というのは精神的苦痛に対する賠償金のことを言います。
わかりやすくいうと、交通事故の慰謝料というのは、事故にあって怖い思いをしたり、ケガをして痛い思いをしたり、ケガの後遺症が残ってつらい思いをしたことを埋め合わせるためのお金ということになります。
ちなみに示談金というのは慰謝料のほかにも仕事を休んだときの補償など他の賠償金も全て含めたもののことを言います。
任意保険会社の提示額は低い?
交通事故の賠償金には3つの基準がある
交通事故の損害賠償金の基準には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士(裁判)基準の3つがあります。
・自賠責基準とは
すべての自動車は、「自賠責保険」(「自動車損害賠償責任保険」)に加入することが義務付けられています。自賠責保険においては、国が定めた支払い基準があり、これに従った金額が支払われます。この基準が、自賠責基準と呼ばれる基準です。自賠責保険は、被害者に必要最低限の損害賠償を行うためのものであることから、基準の金額は、低くなっています。
・任意保険基準とは
自賠責保険から支払われる保険金には、上限があります。そこで、自賠責保険ではカバーしきれない損害を補償するのが、任意保険です。自賠責保険とは異なり、加入するかどうかを任意に決めることができます。
任意保険基準とは、各任意保険会社が示談金を提示する際に用いる基準のことをいいます。任意保険基準は、それぞれの保険会社が独自に設定していますので、保険会社によって異なりますし、公開もされていません。示談金を支払う側が自ら設定している基準ですので、かなり低い基準になっていることがほとんどです。
・弁護士基準(裁判基準)とは
弁護士(裁判)基準とは、日弁連交通事故センターが発行する「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」(「赤い本」と呼ばれます。)という書籍に載せられている基準のことをいいます。弁護士が相手方に損害賠償請求を行う場合に用いる基準です。この基準は、裁判所の傾向を踏まえて作成されており、裁判においても同様の基準が目安にされていますので、「裁判基準」とも呼ばれます。
最も金額が高いのが、この弁護士(裁判)基準です。
示談金の提示は任意保険基準によるため低い
任意保険会社が初めに提示してくる示談金の金額は、上記の任意保険基準によって算定された低いものになっているのが通常です。
弁護士に依頼した場合には、弁護士基準によって算定したより高額な金額で請求しますし、保険会社も、裁判になれば弁護士基準を目安に決まってしまうことを知っていますので、多くのケースでは、弁護士基準で合意をします。
ですから、保険会社からの提示金額をうのみにして示談に応じてしまうと、大きく損をしてしまうことがあるので、注意が必要です。
保険会社が提示する過失割合が正しいとは限らない
最終的に支払われる金額を決定するためには、交通事故の発生について、どちらにどれだけの責任があるのかを決める必要があります。この責任の割合のことを、「過失割合」といいます。
過失割合を決める際には、法律実務では、判例タイムズ社の出版する『民事交通訴訟における過失相殺等の認定基準』を目安にされることが一般的です。この本においては、過去に蓄積された裁判例をもとにして、交通事故の態様ごとに、基本となる過失割合や基本の割合を修正すべき要素が示されています。
示談交渉の中で、相手方の保険会社は、相手方側に有利な過失割合を主張してきます。しかし、ここで保険会社の言うことをすぐにうのみにすると、損をしてしまうこともありますので、少しでも疑問がある場合には、簡単に示談に応じてしまうのではなく、専門㋐である弁護士に確認してもらった方がよいでしょう。
示談金が提示されたら弁護士にご相談ください
このように、保険会社から示談金が提示された場合に、そのまま示談に応じてしまうと、損をしてしまうことは非常に多いです。
ですから、示談金が提示された場合には、まずは、その金額が妥当なのか、保険会社の主張する過失割合が妥当なのかなどについて、弁護士のアドバイスを受けることを強くおすすめします。
弁護士に示談交渉を依頼することによって、得られる示談金が大きく増額することが期待できます。