後遺障害等級の併合・相当・加重に関する基本ルールとは

交通事故による怪我で残ってしまう後遺障害は、1つとは限りません。また、もともと後遺障害のある人が交通事故で再度後遺障害を負ってしまうこともあります。さらに、後遺障害等級表で定められていない後遺症が残ることもあります
このような場合に後遺障害等級をどのように認定するのかについては、ルール(準則)が定められています。
後遺障害等級認定の制度においては、複数の後遺障害が残った場合の等級の処理方法のことを、「併合」といい、もともと後遺障害がある人に後遺障害が残った場合の処理の方法を「加重」といいます。
また、後遺障害等級表で定められていない後遺症が残ることもありますが、その場合の等級の定め方を、「相当(準用)」といいます。
ここでは、後遺障害等級の認定方法のルールである、「併合」・「加重」・「相当(準用)」について、解説していきます。

後遺障害等級認定とは

交通事故に遭って怪我を負い、後遺症が残ると、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することになります。もっとも、後遺症を理由に自賠責保険会社に対して慰謝料や逸失利益を請求するためには、自動車損害賠償保障法施行令別表第1又は第2に定められているいずれかの後遺障害等級に該当するということを認定してもらう必要があります。等級の認定は、中立・公正な立場である損害保険料率算出機構及びその下部機構の自賠責損害調査事務所が行います。
自賠責制度における後遺障害の等級の認定については、労働者災害補償保険(労災保険)における障害の等級認定の基準に準じて行うものとされています。
後遺障害等級は、障害の程度によって、14等級から1等級の14段階に分けられていて、後遺障害慰謝料や逸失利益の金額は、等級ごとに定められています。

関連記事
最終更新日:2018年12月4日/投稿日:2018年11月29日/執筆者弁護士 交通事故にあって怪我をして、後遺症が残った場合、後遺障害慰謝料などを請求することになりますが、そのためには、後遺障害等級認定を受ける必要があ...

スポンサーリンク

併合とは

併合のルール

このように、後遺障害等級は、14個の等級に分かれていますが、交通事故の怪我では、これらの1つにあたる症状だけではなく、2つ以上の症状が残ることもあります。
自賠責においては、自賠責施行令別表第二に掲げられた後遺障害が2つ以上ある場合、「併合」といわれる処理を行うことになっています。併合のルールは、次のとおりです。

  • 1 別表第二5級以上の後遺障害が2以上ある場合は、重い後遺障害等級の3級上位の等級に位置づける
  • 2 別表第二8級以上の後遺障害が2以上ある場合は、重い後遺障害等級の2級上位の等級に位置づける
  • 3 別表第二13級以上の後遺障害が2以上ある場合は、重い後遺障害等級の1級上位の等級に位置づける
  • 4 上記以外の場合には、重い方の等級に位置付ける

併合の例外

・14級の場合

14級に該当する後遺障害が複数ある場合でも、等級は繰り上げられません。14級に該当する後遺障害が複数あっても、基本的に、14級の障害が残った場合と同じになります。

・併合の結果、等級が1級を超える場合

併合の処理をすると1級以上になるような場合でも、後遺障害等級には1級以上がありませんので、1級以上に繰り上がることはありません。

・組み合わせ等級の場合

後遺障害等級表に、「組み合わせ等級」が定められている場合には、併合を行うことなく、後遺障害等級表に定められた当該等級を認定します。
眼瞼、上肢、手指、下肢、足指は、左右それぞれで別々の系列とされていますが、後遺障害等級表には、左右両方の場合が組み合わせ等級として定められていますので、左右それぞれに障害が残った場合には、左と右を併合するのではなく、組み合わせ等級の等級を認定することになります。

・障害の序列を乱すことになる場合

それぞれの障害は、労働能力の喪失の程度に応じて、一定の順序のもとに配列されています。この配列を、「障害の序列」といいます。
併合して等級が繰り上げられた結果、障害の序列を乱すことになる場合には、障害の序列にしたがって等級を定めることになっています。
例えば、上肢を手関節以上で失い(5級4号)、かつ、他の上肢をひじ関節以上で失った(4級4号)場合、併合して等級を繰り上げると、併合1級となります。ところが、当該障害は、「両上肢をひじ関節以上で失ったもの」(1級3号)の障害の程度に達しません。この場合に、併合して1級を認定してしまうと、障害の序列乱すことになるため、併合2級となります。

・1つの障害を複数の観点で評価しているに過ぎない場合

障害等級表上の2つ以上の等級に該当すると考えられるが、 1つの身体障害を複数の観点(複数の系列)で評価しているにすぎないと判断される場合は、併合は行わずに、いずれか重い方の等級を認定することとされています。
例えば、片方の大腿骨に変形を残した(12級8号)結果、同じ側の下肢を1センチメートル短縮した(13級8号)場合には、この2つを併合するのではなく、上位の等級である第12級の8をもって当該障害の等級が認定されます。

・1つの後遺障害に他の後遺障害が通常派生する関係にある場合

上腕骨に偽関節を残す(8級の8号)とともに、当該箇所にがん固な神経症状を残した(12級の13)場合のように、1つの後遺障害に他の後遺障害が通常派生する関係にある場合には、上位の等級を認定するとされています。例の場合、8級の8号が認定されます。

スポンサーリンク

相当とは

後遺障害等級表に定められていない後遺障害については、その後遺障害の程度に応じて、等級表に定められている後遺障害に準じて等級を定めることとされています。このルールを「相当(準用)」といい、これによって定められた等級を「準用等級」といいます。

  • (ア)ある身体障害が、障害等級表上のいかなる障害の系列(眼、耳、上肢、下肢などの身体の部位と障害群)にも属さない場合
  • (イ)障害等級表上に、その属する障害の系列はあるが、該当する身体障害がない場合

例えば、嗅覚障害や味覚障害などの場合に、準用等級が認定されることがあります。

スポンサーリンク

加重とは

既に後遺障害のある被害者が、事故によって傷害を受けたことによって、同じ部位(同じ系列)について後遺障害の程度を加重した(程度が重くなった)場合の障害補償の額は、加重された身体障害が該当する障害等級の障害補償の額から、既に存していた身体障害の該当する障害等級の障害補償の額を控除して得た額とされます。
この取り扱いのことを、「加重」といいます。
なお、同一部位の障害だけではなく、他の部位にも新たな障害が残った場合には、まず、同一の部位の加重された後の身体障害についての障害等級を定め、次に、他の部位の身体障害について障害等級を定めたうえで、両者を併合して等級を認定することとされています。

併合・相当・加重の適用が考えられるような場合は弁護士にご相談ください

このように、後遺障害等級認定には、複雑なルールがいくつも存在します。
適正な後遺障害等級認定を獲得するためには、法的及び医学的な知識が必要です。さらに、この記事で紹介した併合、相当、加重ルールの適用が考えられるようなケースでは、特に、問題が複雑になってくることがあります。
交通事故の専門家である弁護士に相談することで、後遺障害等級認定を有利に進めることができる可能性が高まりますので、ぜひお早めにご相談ください。

スポンサーリンク

相談料・着手金0円・完全成功報酬制(千葉県全域対応)増額できなければ費用はいただきません!

047-436-8575 平日9:00 - 20:00 土曜 10:00 -18: 00 (日・祝不定休)
メールでの相談はこちら