全くあてにならない?交通事故慰謝料計算機の落とし穴
ネットでよく見る交通事故慰謝料計算機とは?
インターネットで交通事故の慰謝料について調べると、「交通事故慰謝料計算機」というものが見つかるかと思います。
これに、怪我の種類や、通院日数、後遺障害等級などの情報を入力して、ボタンを押すと、慰謝料・示談金の計算結果が出てきます。
交通事故相談を受けていると、相談者の方が、事前にこのような慰謝料計算機を利用してから、本当にその額がもらえるのかご相談いただくことがあります。
ところが、ネットで利用できる慰謝料計算機の計算結果が、その相談者にとっては全くあてにならない金額であることが珍しくありません。
慰謝料計算機の結果があてにならない理由
ではなぜ、慰謝料計算機の計算結果があてにならないのでしょうか。
その理由は、慰謝料計算機は、個別的な事情を一切考慮せずに、理論上の一般的な数値を出すものに過ぎないからです。
そして、実はかなり多くの場合に、実際の事件の適正な示談金額からかけ離れた数字が出されることがあります。
具体的に説明すると、次のような理由で金額が大きくずれてしまいます。
過失割合が考慮されていないケースがある
慰謝料計算機の中には、過失割合を入力するタイプのものと、入力しないタイプのものがあります。
過失割合を入力しないタイプでは、当然過失割合100:0のときの金額が計算結果として表示されるので、被害者にも少しでも過失があれば金額が変わってしまいます。
また、過失割合を入力するタイプの計算機でも、既払いの治療費の金額を入力しないものがほとんどであるため、既払い金を含めて過失相殺をした適正な示談金額が表示されることはありません。
逸失利益が等級表通りで算定されている
慰謝料計算機では、後遺障害逸失利益について、自賠責保険の等級表の喪失率をそのまま用いて計算されます。
ところが、後遺障害の中には、鎖骨変形や醜状障害(傷あと)など、等級表の喪失通り逸失利益が認められる方が少ないものもあります。
また、減収がない場合や、等級表の喪失率までは減収が発生していない場合、公務員など減収が想定できない場合などでは、等級表上の喪失率よりも少ない喪失率しか認められないことも多いです。
そのため、慰謝料計算機で計算される逸失利益の額は、実際の適正な金額よりも、かなり高額になっていることも珍しくありません。
主婦や自営業の休業損害を計算できない
慰謝料計算機では、休業損害の項目自体がないか、サラリーマンの休業損害しか計算できないことがほとんどです。
特に、主婦や自営業の休業損害などは、単に数値を入力するだけでは算定できないため、慰謝料計算機の結果には表示されません。
重度後遺障害特有の損害項目がない
重度の後遺症が残存しているケースでは、慰謝料や逸失利益以上に、将来分の治療費用、付き添い介護費用が高額になるケースがあります。
ところが、慰謝料計算機では、重度後遺障害に特有のこれらの損害項目は一切考慮されていないため、計算結果の示談金額が、適正な金額よりも少なすぎる金額になることがあります。
争点となる事項に対応できない
慰謝料計算機では、治療期間、過失割合、後遺障害等級などについて、決まったものとして入力して金額を算定することになります。
ところが、実際の交通事故の示談交渉や、裁判では、事前に合意していたかのようにみえた慰謝料計算の対象となる治療期間や過失割合について大きく争われたり、既に認定済みの後遺障害等級についても争われることは珍しくありません。
慰謝料計算機は、このように将来争点となり得る部分で、しかも被害者側に不利に変更される可能性がある部分について、一切考慮せずに計算結果を算出しているため、適正な金額よりも過大な金額が出ることがあります。
慰謝料計算機の結果を信用できないケースとは?
さきほど説明した慰謝料計算機の結果があてにならない理由からすれば、以下の「どれか一つ」にでもあてはまる場合は、慰謝料計算機の結果は全くあてにできないことになります。
- 重度後遺障害(植物状態・高次脳機能障害・身体の麻痺など)の場合
- 被害者の職業が主婦・自営業・会社役員・公務員の場合
- 過失割合が10:0以外または争いがある場合
- 鎖骨変形・骨盤骨変形・圧迫骨折・醜状障害(傷跡)などの場合
- 後遺障害が認定されたが減収が全くないかまたは少ない場合
- 治療費の打ち切り後に自費で治療をしている場合
このうち一つでもあてはまる場合は、慰謝料計算機の結果が全くあてにならないことが多いので、妥当な示談金額を知りたい場合は、弁護士に相談して算定してもらうのが良いでしょう。
計算機で出た金額が概ね妥当なケースとは?
これまでは、慰謝料計算機の結果があてにならないケースばかり見てきましたが、もちろん計算結果が妥当なケースもあります。
特に計算結果が妥当だと考えられるのは、以下の条件を全て満たしたときです。
- むちうち・打撲などの軽傷
- 追突事故など過失100:0
- 通院頻度が週に2回以上
- 整形外科のみに通っている
- 治療費の打ち切りはない
- 治療期間が最長でも半年程度
- 休業損害がないかまたはサラリーマンの場合
以上の条件を全て満たしていれば、計算結果は概ね妥当な金額になっていることがほとんどでしょう。
そのため、この場合に表示された計算結果が、保険会社の提示額よりも高い場合は、弁護士に依頼して増額交渉をするのがおすすめです。