交通事故の慰謝料を弁護士基準にするには?計算方法や早見表付き
目次
- そもそも弁護士基準の慰謝料って何?
- 慰謝料には弁護士基準以外に2つの基準がある
- 保険会社から提示されるのは自賠責基準のことも多い
- 金額は弁護士基準>任意保険基準>自賠責基準になるのが普通だが・・・
- 弁護士基準にするにはどうすればよい?
- 弁護士に依頼しないと弁護士基準にならないワケ
- 自分で弁護士基準にするときの思わぬ落とし穴とは?
- ①傷害・②後遺症・③死亡慰謝料のそれぞれ弁護士基準がある
- 4通りある?通院慰謝料の弁護士基準の計算方法
- 骨折など|別表Ⅰの弁護士基準の計算方法【早見表付き】
- 事故後入院10日でその後症状固定まで190日かかった場合
- むちうちなど|別表Ⅱの弁護士基準の計算方法【早見表付き】
- 慰謝料日額という概念がなくなる?弁護士基準の原則
- 後遺障害等級別の弁護士基準の慰謝料【早見表付き】
- ネットに載っている金額は追突事故など過失10:0の場合の金額
- 主婦の休業損害についても弁護士基準ということもある
- まとめ
そもそも弁護士基準の慰謝料って何?
交通事故を弁護士に依頼したときに算定する慰謝料の基準です。
裁判をしたときの慰謝料の相場なので、裁判基準と呼ばれることも多いです。
また、赤い本と呼ばれる本に、この基準が書かれていることから、赤い本基準とも呼ばれます。
慰謝料には弁護士基準以外に2つの基準がある
交通事故で怪我をした被害者がもらえる慰謝料には、弁護士基準以外にも2つの基準があり、併せて3つの基準があります。
この3つの基準というのは、慰謝料の計算方法が3種類あるという意味です。具体的には、次の3つになります。
- 自賠責基準|被害者のための最低限の補償
- 任意保険基準|保険会社が独自に定めた内部基準
- 弁護士基準|裁判で認められる慰謝料の相場
保険会社から提示されるのは自賠責基準のことも多い
先ほどは任意保険基準があると説明しましたが、実は保険会社が提示する慰謝料の金額は、自賠責基準で提示されていることも多いです。
これは、保険会社は自賠責基準以上で慰謝料を提示すれば良いことになっており、自賠責基準と同額を提示することも許されているからです。
そのため、特に、打撲・捻挫・むち打ちなどの軽傷の場合には、任意保険基準ではなく、自賠責基準での提示がされることが多いです。
金額は弁護士基準>任意保険基準>自賠責基準になるのが普通だが・・・
慰謝料の金額は、弁護士基準が一番高額で、その次が任意保険基準、一番低額なのが自賠責基準となることが多いです。
ネットで多くのサイトを見ても、このように開設されていることが多いと思います。
ただし、被害者の過失割合が大きい場合や、被害者が高齢者の無職の場合には、自賠責基準が一番高くなることもあります。これは、あまり解説されているサイトは少ないですので、自分の場合にはどうなるか注意して見る必要があります。
弁護士基準にするにはどうすればよい?
保険会社が自賠責基準や任意保険基準で慰謝料を提示してきたときに、被害者本人が「弁護士基準にしてください」と保険会社に言ったとしても、慰謝料が弁護士基準になることは基本的にありません。
慰謝料を弁護士基準に引き上げるには、基本的に、①弁護士に依頼するか、②自分で裁判をする、③自分で交通事故紛争処理センターに斡旋を申し立てるかの3つの方法しかありません。
交通事故紛争処理センターについては、次の記事で解説しています。
弁護士に依頼しないと弁護士基準にならないワケ
弁護士に依頼しないで自分で保険会社と話しても、保険会社は弁護士基準の慰謝料を払ってくれることはありません。保険会社が提示した慰謝料について「ネットで見た弁護士基準の慰謝料より低い」と伝えても、慰謝料が弁護士基準になることはありません。
これは、保険会社の内部の運用で、弁護士に依頼しない限り、弁護士基準での慰謝料は提示できないようになっているからだと考えられます。
弁護士に依頼した場合は、示談できない限りは、最終的には裁判になる可能性が高いので、保険会社側としても裁判での相場を前提とした弁護士基準での支払い応じるのです。
自分で弁護士基準にするときの思わぬ落とし穴とは?
弁護士に依頼せずに、弁護士基準での慰謝料を獲得するためには、自分で裁判を起こすか、紛争処理センターを利用するしかありません。
自分だけで裁判を起こすのは難しいので、紛争処理センターを利用する方の方がおすすめではあります。
ただし、紛争処理センターであれ裁判であれ、自分で慰謝料を弁護士基準にしようとするときには注意しないといけない大きな落とし穴があります。
それは、慰謝料を弁護士基準にできても、治療費・休業損害・過失割合などそれ以外の項目で事前の提示よりも大きく減額されてしまい、最終的な手取額では事前提示額と大差ないか、場合によっては事前提示額よりもマイナスになってしまうこともあります。
しかも、このようになってしまうのはレアケースというわけではなく、それなりにある話です。
そのため、弁護士基準にするには弁護士に依頼するか、自分でやるにしても少なくとも弁護士に相談してからやるのがよいでしょう。
①傷害・②後遺症・③死亡慰謝料のそれぞれ弁護士基準がある
交通事故の慰謝料には、次の3種類があります。
- 傷害慰謝料(通院慰謝料)
- 後遺症慰謝料(後遺障害慰謝料)
- 死亡慰謝料
傷害慰謝料は通院慰謝料ともいいます。事故で怪我をしてつらい思いをしたことに対する慰謝料です。
後遺症慰謝料と死亡慰謝料はその名のとおり、それぞれ後遺症が残ってしまった場合の慰謝料と亡くなってしまった場合の慰謝料です。
ちなみに、「後遺症」慰謝料は、「後遺障害」慰謝料というときもあります。
この3種類の慰謝料全てに弁護士基準というものがあります。弁護士基準の慰謝料はいくらなのか調べるときには、この3つの慰謝料の内どのことをいっているのかを確認した方が良いでしょう。
4通りある?通院慰謝料の弁護士基準の計算方法
通院(傷害)慰謝料については、弁護士基準なら慰謝料いくらと一律に決まるわけではありません。
実は通院慰謝料の弁護士基準の計算方法には4通りあるのです。
まず、怪我が打撲・挫創・むちうちなどの軽傷か骨折などの軽傷以外かで別表Ⅰと別表Ⅱの2通りに分かれます。次に、別表ⅠとⅡの中で、通院期間を事故日から治癒日・症状固定日までにするか、実通院日数の3倍または3.5倍にするかでさらに2通りに分かれます。
つまり、次の4通りがあることになります。
- 別表Ⅰ×総期間
- 別表Ⅰ×実日数の3.5倍
- 別表Ⅱ×総期間
- 別表Ⅱ×実日数の3倍
骨折など|別表Ⅰの弁護士基準の計算方法【早見表付き】
骨折など軽傷以外の場合は、下記の別表Ⅰという表を使います。
通院期間と入院期間が交差するところが弁護士基準の慰謝料になります。
この通院期間というのは、原則として事故日から治癒日または症状固定日までの全期間になります。
事故後入院10日でその後症状固定まで190日かかった場合
通院期間や入院期間が月単位ちょうどではない場合は、次のように計算します。
①入院10日分の慰謝料を計算する
先ほど見た慰謝料の表の「1月」というのは「30日」に換算します。
そこで、日割り計算をして、53万÷30日×10日=17万6666円となります。
②全治療期間200日の通院慰謝料を計算する
ここで注意するのは、退院してから症状固定日までの期間ではなく、入院期間も含めて全ての治療期間でいったん計算することです。
なので、退院してから固定日までの190日ではなく、入院期間も含めた200日で計算します。
先ほど説明したとおり、この慰謝料の表では1月を30日換算するので、200日というのは、6月と20日になります。
そのため、全治療期間の通院分の慰謝料は、116万【6月分】+(124万【7月分】-116万【6月分】)÷30日×20日=121万3333円になります。
③入院期間とダブっている期間分の通院慰謝料を計算する
入院期間とダブっている期間は10日間なので、この分の通院慰謝料は、28万円÷30日×10日=9万3333円になります。
④ ①+②-③を計算する
①17万6666円+②121万3333円-③9万3333円=129万6666円になります。
このように入院期間や通院期間が月単位ぴったりでないときの弁護士基準の慰謝料を計算します。
むちうちなど|別表Ⅱの弁護士基準の計算方法【早見表付き】
他覚所見のないむちうちや打撲・捻挫・挫創などの軽傷は、下記の別表Ⅱという表を使います。
これも通院期間と入院期間が交差するところが弁護士基準の慰謝料となります。
ただ、別表Ⅱを使うときは軽症の場合なので、入院することはまれで、頭部打撲・脳震盪などで、念のために入院したとしても数日間のことが多いでしょう。
そのため、入院期間については、1ヶ月分のみのせておきます。
通院期間や入院期間が月単位ぴったり出ないときの計算方法は、別表Ⅰの計算方法ところで説明したとおりです。
慰謝料日額という概念がなくなる?弁護士基準の原則
交通事故の相談では、通院1日で慰謝料いくらですか?と聞かれることがありますが、弁護士基準では、原則として治療総期間で慰謝料を算定します。
そのため、「慰謝料1日いくら」とか「慰謝料日額」という概念がなくなります。
ただし、先ほど説明したように、弁護士基準でも治療総期間ではなく、通院実日数の3.5倍か3倍を通院期間とする場合もあります。
この場合も、あくまで実日数ベースに算定された「通院期間」で慰謝料が決まるのですが、通院回数が慰謝料に影響することになります。
どのような場合に、実際の通院総期間ではなくて、実日数の3倍や3.5倍で通院期間が決められるのかは、次の記事で解説していますのでご参照ください。
後遺障害等級別の弁護士基準の慰謝料【早見表付き】
後遺障害が残った場合の弁護士基準の慰謝料は、等級別に以下のとおりになります。
等級 | 弁護士基準の慰謝料 |
14級 | 110万円 |
13級 | 180万円 |
12級 | 290万円 |
11級 | 420万円 |
10級 | 550万円 |
9級 | 690万円 |
8級 | 830万円 |
7級 | 1000万円 |
6級 | 1180万円 |
5級 | 1400万円 |
4級 | 1670万円 |
3級 | 1990万円 |
2級 | 2370万円 |
1級 | 2800万円 |
ネットに載っている金額は追突事故など過失10:0の場合の金額
これまで載せた慰謝料の表や、ネットでよく見る慰謝料の表は、過失割合が10対0の場合に受け取ることのできる慰謝料です。
そのため、単に通院期間や後遺障害等級だけから、自分の慰謝料の参考にすると、実際にもらえる慰謝料は大幅に少ないということがあります。
実際に受け取ることのできる慰謝料は、既払の治療費などと過失割合がきまってはじめてわかることになります。
主婦の休業損害についても弁護士基準ということもある
弁護士基準というのは、通常は慰謝料のことですが、主婦の休業損害についても弁護士基準という言葉を使うことがあります。
これは、通常主婦の休業損害について、保険会社は自賠責基準の日額6,100円(令和2年3月以前は5,700円)を提示することがありますが、弁護士は日額1万円前後で算定するためです。
この日額1万円前後というのは、日本の女性の平均賃金から算出しています。
まとめ
これまで弁護士基準について解説してきましたが、弁護士基準の慰謝料を獲得するためには、通常、弁護士に依頼するか自分で裁判などをするしかありません。
そのため、いずれの方法をとるにしても、まずは弁護士に相談されることをおすすめします。