交通事故の慰謝料を弁護士基準にするには?自分でできるか?
最終更新日:2024年11月16日/投稿日:2022年10月20日/執筆者弁護士豊田 友矢
目次
交通事故慰謝料を弁護士基準にするにはどうする?
保険会社が自賠責基準や任意保険基準で慰謝料を提示してきたときに、被害者本人が「弁護士基準にしてください」と保険会社に言ったとしても、慰謝料が弁護士基準になることは基本的にありません。
慰謝料を弁護士基準に引き上げるには、①弁護士に依頼する(弁護士が示談交渉or裁判を行なう)、②自分で裁判をする、③自分で交通事故紛争処理センターに斡旋を申し立てるかの3つの方法しかありません。
なお、交通事故紛争処理センターについては、次の記事で解説しています。
弁護士に依頼しないと弁護士基準にならないワケ
弁護士に依頼しないで自分で保険会社と話しても、保険会社は弁護士基準の慰謝料を払ってくれることはありません。保険会社が提示した慰謝料について「ネットで見た弁護士基準の慰謝料より低い」と伝えても、慰謝料が弁護士基準になることはありません。
これは、保険会社の内部の運用で、弁護士に依頼しない限り、弁護士基準での慰謝料は提示できないようになっているからだと考えられます。
弁護士に依頼した場合は、示談できない限りは、最終的には裁判になる可能性が高いので、保険会社側としても裁判での相場を前提とした弁護士基準での支払い応じるのです。
自分で弁護士基準にするときの思わぬ落とし穴とは?
弁護士に依頼せずに、弁護士基準での慰謝料を獲得するためには、自分で裁判を起こすか、紛争処理センターを利用するしかありません。
自分だけで裁判を起こすのは難しいので、紛争処理センターを利用する方の方がおすすめではあります。
ただし、紛争処理センターであれ裁判であれ、自分で慰謝料を弁護士基準にしようとするときには注意しないといけない大きな落とし穴があります。
それは、慰謝料を弁護士基準にできても、治療費・休業損害・過失割合などそれ以外の項目で事前の提示よりも大きく減額されてしまい、最終的な手取額では事前提示額と大差ないか、場合によっては事前提示額よりもマイナスになってしまうこともあります。
しかも、このように示談金が減ってしまうのはレアケースというわけではなく、それなりにある話です。
そのため、弁護士基準にするには弁護士に依頼するか、自分でやるにしても少なくとも弁護士に相談してからやるのがよいでしょう。
自分で弁護士基準の慰謝料を調べるときの注意点
①傷害・②後遺症・③死亡慰謝料のそれぞれ弁護士基準がある
交通事故の慰謝料には、次の3種類があります。
- 傷害慰謝料(通院慰謝料)
- 後遺症慰謝料(後遺障害慰謝料)
- 死亡慰謝料
傷害慰謝料は通院慰謝料ともいいます。事故で怪我をしてつらい思いをしたことに対する慰謝料です。
後遺症慰謝料と死亡慰謝料はその名のとおり、それぞれ後遺症が残ってしまった場合の慰謝料と亡くなってしまった場合の慰謝料です。
ちなみに、「後遺症」慰謝料は、「後遺障害」慰謝料というときもあります。
この3種類の慰謝料全てに弁護士基準というものがあります。弁護士基準の慰謝料はいくらなのか調べるときには、この3つの慰謝料の内どのことをいっているのかを確認した方が良いでしょう。
4通りある?通院慰謝料の弁護士基準の計算方法
通院(傷害)慰謝料については、弁護士基準なら慰謝料いくらと一律に決まるわけではありません。
実は通院慰謝料の弁護士基準の計算方法には4通りあるのです。
まず、怪我が打撲・挫創・むちうちなどの軽傷か骨折などの軽傷以外かで別表Ⅰと別表Ⅱの2通りに分かれます。次に、別表ⅠとⅡの中で、通院期間を事故日から治癒日・症状固定日までにするか、実通院日数の3倍または3.5倍にするかでさらに2通りに分かれます。
つまり、次の4通りがあることになります。
- 別表Ⅰ×総期間
- 別表Ⅰ×実日数の3.5倍
- 別表Ⅱ×総期間
- 別表Ⅱ×実日数の3倍
慰謝料日額という概念がなくなる?弁護士基準の原則
交通事故の相談では、通院1日で慰謝料いくらですか?と聞かれることがありますが、弁護士基準では、原則として治療総期間で慰謝料を算定します。
そのため、「慰謝料1日いくら」とか「慰謝料日額」という概念がなくなります。
ただし、先ほど説明したように、弁護士基準でも治療総期間ではなく、通院実日数の3.5倍か3倍を通院期間とする場合もあります。
この場合も、あくまで実日数ベースに算定された「通院期間」で慰謝料が決まるのですが、通院回数が慰謝料に影響することになります。
どのような場合に、実際の通院総期間ではなくて、実日数の3倍や3.5倍で通院期間が決められるのかは、次の記事で解説していますのでご参照ください。
まとめ
これまで弁護士基準について解説してきましたが、弁護士基準の慰謝料を獲得するためには、通常、弁護士に依頼するか自分で裁判などをするしかありません。
そのため、いずれの方法をとるにしても、まずは弁護士に相談されることをおすすめします。