９対１の事故の示談金相場｜慰謝料は１割引で治療費も引かれる？ | 交通事故に強い弁護士

最終更新日：2024年11月19日／投稿日：2022年8月23日／執筆者弁護士豊田友矢

「９対１の事故の示談金相場」はない

過失割合が9対1の事故であっても、事故の内容によって示談金の額は様々です。過失割合だけで示談金の相場が決まるわけではありません。

例えば、人損の示談金の中身は、慰謝料や後遺症の補償などですが、その金額は、怪我の重さなどによって変わってきます。また、物損の示談金の中身は、修理費や代車費用などで、その金額は、損傷の程度と車の車種によって変わってきます。

それでは、過失割合と示談金はどのような関係にあるのでしょうか？

過失割合9対1（被害者側が1）の場合、被害者が加害者に請求できるのは、すべての損害額の9割ということになります。

例えば、怪我の大きさと通院状況から慰謝料が100万円になったとします。ところが過失割合が9対1の場合、この100万円が1割引になって、90万円しか請求できなくなります。

先ほどの例で、慰謝料が100万円になる場合、9対1では1割引の90万円になると説明しました。それでは、この90万円がそのままもらえるのかというと、そうでもないのです。

加害者が任意保険に加入している場合、治療終了後に慰謝料などの示談金をもらう前に、治療費・休業損害・交通費などが支払い済みであることが多いです。

そして、過失割合9対1の場合には、保険会社は9割ではなく全額を既に支払っていることも多いです。特に治療費については9割分だけでなく全額を支払うことが通常です。

ところが、本来過失割合が9対1のときには、加害者は治療費・休業損害・交通費なども9割だけ支払えば良いのです。そうすると、全額払った治療費などのうち１割については払いすぎの状態になっています。この１割については、慰謝料などの示談金からさらに引かれてしまいます。

先ほどの慰謝料が１００万円の例だと次のようになります。「慰謝料100万円→１割引の90万円になる→既払い治療費100万円の1割10万円がさらに引かれてもらえる慰謝料は80万円になる」

これまで見てきたのは、弁護士基準で損害賠償を請求するときのケースです。もし、自賠責保険金額の枠内で示談する場合には、話が変わってきます。

自賠責保険制度では、被害者に重大な過失（7割以上）がない限り、過失分を引かれずに全額をもらうことができます。

例えば、「治療費30万円＋自賠責基準の慰謝料20万円」のケースでは、過失割合が10対0でも9対1でも5対5でも、慰謝料20万円を全額もらうことができます。

自賠責基準では、過失割合が９対１でも慰謝料が満額もらえるのであれば、弁護士基準よりも良いと思うかもしれません。

ところが、この自賠責基準の慰謝料というのは、弁護士基準の慰謝料と比較して低額になることがほとんどです。

特に過失割合9対1の場合は、自賠責基準の慰謝料の満額よりも、被害者の過失１割分が引かれた弁護士基準の慰謝料の方が高額になるケースがほとんどです。

ただし、被害者に過失がある場合に自賠責基準と弁護士基準のどちらが高額になるかは、既払いの治療費など個別事情も含めて検討しなければなりません。

そのため、過失割合９対１のケースで弁護士に依頼した方が良いかは、弁護士に自賠責基準を上回る可能性について検討してもらってから、決めるのが良いでしょう。