弁護士特約を使うと保険会社は嫌がるのか?【弁護士解説】
最終更新日:2024年11月21日/投稿日:2022年7月26日/執筆者弁護士豊田 友矢
目次
弁護士特約を利用しても自分の保険会社は嫌がらない
自分や家族が加入している保険会社に弁護士特約を利用したいと伝えると嫌がられるのでしょうか?
ほとんどの場合、弁護士特約を利用しても、自分の保険会社に嫌がられることはありません。
事故の被害者が弁護士特約を利用したいと伝えると、保険会社の担当者より事務的な手続の説明を受けるだけで、淡々と特約の利用をすることができます。
例外的に弁護士特約の利用を嫌がる場合とは?
ごくまれですが、自分の保険会社から弁護士特約を利用するのを嫌がられることもあります。ちなみに、それは、次のような場合です。
依頼予定の弁護士がLACや約款とは別の基準を利用している場合
依頼予定の弁護士が事務所独自の基準の費用体系で依頼を受ける場合です。弁護士特約を利用しても、弁護士が独自の基準で依頼を受けることは自由となっています。
しかしながら、この場合大半がLAC基準や弁護士特約の約款で定められた金額よりも弁護士費用が高額になります。そうすると、弁護士特約の利用者がその差額を負担する必要があります。
この場合、差額負担が生じることを弁護士がきっちり説明して、依頼者の納得を得ていれば何の問題もありません。ところが、そうでない場合、弁護士特約の利用者と保険会社との間でもめる可能性があります。
そのため、保険会社は、LAC基準や保険約款の基準とは異なる費用体系を利用する弁護士に依頼することを嫌がることがあります。
保険会社に嫌がれようと、差額を負担することに納得していれば、弁護士特約は利用することができます。ただ、LAC基準や約款の基準で依頼できるいい弁護士が見つけられるのであればそれに越したことはありません。
示談代行で示談がほぼまとまっている場合
保険会社が示談代行で交渉を継続しており、その結果ほとんど被害者の希望通り話が進んでいる場合です。
この場合、何の脈絡もなく、いきなり弁護士特約を利用して、弁護士を介入させることを嫌がられることがあります。
嫌がられるというと言い過ぎかもしれません。ただ、現状被保険者の希望通りに進んでいる状態で、弁護士を入れることを疑問視して、その理由を聞かれることはあります。
ただし、実際には、これは弁護士に相談した結果、自分が充分な補償を得られていないことに気づいたケースがほとんどです。そのように伝えれば、問題なく弁護士特約を利用させてくれます。
単に担当者が弁護士特約を使うのは大げさと考えている場合
軽微な事故で特に争点もない場合に、弁護士特約を利用することを伝えると、まれに担当者から理由を聞かれることがあります。
これも嫌がられるというと言い過ぎかもしれません。特に理由を伝えないでも弁護士特約は利用することができます。
ただ、このケースも実際は弁護士に相談するなどして、被害者にとって弁護士に依頼するメリットがあることが判明していることがほとんどです。そのため、正直にそのメリットを実現したいと伝えても良いでしょう。
嫌がっているのではなくて弁護士特約が利用できない場合
単に弁護士特約の利用を嫌がっているのではなくて、そもそも弁護士特約を利用できないというケースがあります。
弁護士特約に加入していても、約款で定められた特定のケースでは、弁護士特約を利用できません。
弁護士に依頼すると相手の保険会社は嫌がる?
それでは、弁護士特約を利用してもしなくても、弁護士に依頼したときに相手の保険会社担当者は嫌がるのでしょうか?
弁護士に依頼した場合、基本的には慰謝料等の金額が増額するため、保険会社の支払う賠償金額は高くなります。
その意味では、保険会社としては、できる限り弁護士に依頼されないように示談するのが仕事の一内容ともいえます。
ただ、保険会社の担当者は、何百件も交通事故を扱っているので、一定割合は弁護士が介入することに慣れていますし、弁護士に依頼するといわれても担当者レベルで嫌がることはまずないです。
また、保険会社の担当者の仕事は示談をすすめることにあるので、既にもめている状態で弁護士を入れた場合には、示談に向けて話が進むので保険会社の担当者にとっても好ましいこともあります。