トラックやタクシーの休車損害とは?計算方法・相場や必要書類について解説
最終更新日:2024年10月17日/投稿日:2022年7月21日/執筆者弁護士豊田 友矢
目次
休車損害とは?|トラック・タクシーなどが壊れた場合
休車損害とは?
休車損害とは、営業用車両(緑ナンバー車・黒ナンバー車)が事故で壊れた場合に、修理や買い替えに必要な期間に発生する営業損失のことです。
例えば、運送業者のトラックが事故にあって買い換えが必要になり、その間に運送できる荷物が減った場合です。また、タクシー会社のタクシーが事故にあって修理が必要になり、その間に稼働できるタクシー車両の数が減った場合です。
遊休車があるなら請求できない
休車損害が認められるためには、「遊休車がない」という要件を満たす必要があります。遊休車というのは、使われていない、遊ばせている車両のことをいいます。予備車両と呼ぶこともあります。
事故車両を利用していた会社が、遊休車や予備車両を保有しており、それを利用できるのであれば、休車損害は発生しないはずです。そのため、遊休車や予備車両があるなら、休車損害は請求できません。
なお、利用できる遊休車があれば、仮にその遊休車を利用しないで損失が発生したとしても、休車損害は原則として請求できません。これは、事故の被害者側にも損害を拡大させないようにする義務があるからです。
ただし、遊休車が車検・定期点検中であるとき、遊休車が遠方に存在し利用場所に回送するのに費用・時間がかかるとき、遊休車のドライバーの手配ができないときなどは、遊休車があっても休車損害を請求できる可能性もあります。
代車を調達可能なら請求できない
遊休車がなくても、代車を容易に調達できる場合は、休車損害は請求できません。なぜなら、代車を利用すれば、業務を行えるため、代車費用はかかるにしても、休車損害自体は発生しないからです。
タクシー、ハイヤー、営業用トラックなどの「緑ナンバー」車両や「黒ナンバー」車両は、許認可の関係から代車を容易に調達することはできないのが通常です。
他方で、通常の自家用車(「白ナンバー」車両)で業務を行なっている場合は、通常はレンタカーなど代車を調達できるので休車損害は請求できません。もっとも、車両自体が特殊なもので代車の手配ができないような場合などには、休車損害が認められる可能性もあります。
休業損害との違い|重複した場合は?
休業損害は、事故による怪我が原因で仕事ができなくなり収入が減少したことによる人損です。他方で、休車損害は、事故による車両損傷が原因で収入が減少したことによる物損です。
最近は、業務委託により軽貨物で個人事業主として運送業を営む人が増えています。このように、営業用車両の保有者が事故で怪我を負ったドライバー自身である場合には、休車損害と休業損害の期間が重複することもあります。
もっとも、重複するからと言って、同じ期間について休車損害と休業損害を二重に受け取ることはできません。実態に合わせて、また証明のしやすさなども検討して、同一の期間についてはどちらか一方だけを請求することになります。
休車損害の計算方法と必要書類
請求額の計算方法
休車損害の金額は、次のような計算式で算定するのが一般的です。
- 計算式:(事故車の1日当たりの営業収入-経費)×休車日数
複数車両を保有しており、事故車両単体での収入と経費を算出できない場合には、全保有車両について計算し、それを全保有車両数で割って、1台当たりの休車損害額を算出することも多いです。
請求書の書き方
休車損害を請求する際の書面には、次のような事項を記載するのが通常です。
- 休車日数
- 車両の全保有台数
- 事故前3ヶ月の稼働額
- 事故前3ヶ月の人件費
- 事故前3ヶ月の諸費用(燃料費、オイル台、修理費、道路通行料、消耗品代など)
【参考】休車損害請求書の書式例
その上で、事故前3ヶ月の1日当たりの稼働額、人件費、車両諸費用を算出し、1日当たりの稼働額から人件費と車両所費用を控除した金額を出します。
そして、その金額を全保有台数で割って、事故車両1台分の休車損害額を算出します。
必要書類(休車損害の立証資料)
また、これらの金額を証明するための必要書類として、運輸局に提出する貨物自動車運送事業実績報告書や事業損益明細表、税務署に提出する確定申告書等の会計資料があります。
【書式】貨物自動車運送事業実績報告書
【書式】事業損益明細表
【参照:関東運輸局HP「事業報告書、事業実績報告書の提出について」】
裁判例にみるトラックやタクシーの休車損害の相場
トラックの休車損害の裁判例(大阪地判平24.3.23)
運送業者のトラックが事故後使用できなくなった事例で、事故後仮に同車種を発注していれば納車されたであろう日までの期間60日分、約87万円の休車損害が認められた。
タクシーの休車損害の裁判例(横浜地判平31.2.7)
1日あたり休車損害約15,000円×休車日数5日=約75,000円が認められた。
残土運搬車の休車損害の裁判例(神戸地判平10.5.21)
1日当たり4万4100円の収入を計上する残土運搬車について、1日当たりの利益を2万5000円として、52万2000円の休車損が認められた。
休車損害の請求は弁護士に相談を
休車損害については、請求する側が、遊休車がないこと、代車を用意できなきこと、1日当たりの収入と経費などを、証拠で証明する責任があります。
保険会社との示談交渉や裁判においても、請求者がこれらの事実を、適格な証拠を持って証明しない限り、休車損害はなかなか認められません。
そのため、休車損害の請求をする場合は、弁護士に相談して、必要な資料を集めることをお勧めします。