交通事故での健康保険の利用に関して
最終更新日:2018年12月3日/投稿日:2018年11月28日/執筆者弁護士
交通事故では健康保険を利用することができないと思っておられる方も多いのですが、実は、交通事故による怪我の治療でも健康保険を利用することは可能です。
ここでは、交通事故による怪我の治療のために健康保険を使う場合の注意点や、必要な手続きについて、説明します。
目次
交通事故で健康保険を利用できるのか?利用するために必要な手続き
交通事故による怪我の治療にも健康保険を使えます。このことは、旧厚生省の通達にも、交通事故では健康保険が使えないというのは誤解であると明言されています。医療機関によっては、健康保険は利用できませんと言っているところもあるようですが、それは間違いなのです。
もっとも、交通事故による怪我の治療に健康保険を利用するためには、被害者が加入している健康保険組合、または管轄の協会けんぽ(国民健康保険の場合は、お住まいの役所の国民健康保険を担当する部署)に対して「第三者行為による傷病届」などの保険者が指定する必要書類を提出する必要があります。
また、健康保険を利用する場合には、医療機関に対して、まず、「健康保険を使いたい」ということを申し出ておく必要もあります。
健康保険を利用した方がよいケース
自分にも過失がある場合
自分にも過失がある場合には、過失割合に応じて過失相殺がされますので、最終的に、治療費の一部を自らが負担することになります。
健康保険を利用すれば、窓口負担は3割(小学生から70歳未満の場合)になります。過失相殺は、窓口負担分についてなされますので、健康保険を利用しない場合よりも、最終的な負担を少なくすることができます。
また、医療費は、それぞれの医療行為ごとに点数(診療報酬点数)が決まっており、1点あたりの単価を掛けることで金額が決まります。自由診療の1点の金額は、健康保険を利用した診療の2倍程度と高額である場合がほとんどですので、健康保険を利用すれば、治療費の総額がそもそも低額におさえることができます、
そのため、自分にも過失がある場合に健康保険を利用すれば、結果的に、利用しない場合に比べて自分の負担する金額を下げることができるのです。
相手方が任意保険に加入していない場合
相手方が任意保険に加入していない場合(自賠責保険にのみ加入している場合)、相手方が治療費をすべて支払うことができる資力を有しているわけではないケースも非常に多いです。
その場合には、自賠責保険の保険金を請求するしかないことになりますが、自賠責保険において支払われる傷害に関する損害に対する保険金には、120万円という限度額があります。健康保険を利用すれば、先ほどの説明のように、自由診療よりも治療費を低くおさえることができますので、120万円の枠を有効利用することが可能となります。治療費を120万円以内におさえることができれば、残りの枠を他の損害の補てんにあてることもできます。
健康保険が使えないケース
このように、メリットの大きい健康保険ですが、次のようなケースでは、利用することができませんので注意が必要です。
- ・ 業務上または通勤途上での事故の場合
- ・ 示談が成立した場合
- ・ 故意の事故の場合
- ・ 飲酒運転や無免許運転など法令違反の事故の場合
業務上または通勤途上での怪我の場合には、労災保険(労働者災害補償保険)で給付を受けることができるため、健康保険では給付は受けられません。
また、治療中に示談が成立した場合には、内容によってはそれ以降で健康保険で治療を受けることができないことがあります。
交通事故で怪我をした場合には、弁護士にご相談ください
交通事故で怪我をした場合に利用できる可能性のある保険は、健康保険も含めて複数あります。利用すべき保険を間違えると、損をしてしまうこともありますので、どのようなケースでどの保険を使うのがよいのか、弁護士にご相談いただくと良いです。
交通事故で怪我をした場合の損害賠償請求の問題においては、どの保険を利用すべきなのかという点だけではなく、多くの点で、弁護士のアドバイスを受けた方が得になる可能性がありますので、交通事故にあって怪我をされたような場合には、お早めにご相談ください。