交通事故における労災保険の利用について

交通事故によって怪我をした場合に、労災保険は使えることがあるのでしょうか。また、労災保険を利用するメリットはあるのでしょうか。
ここでは、交通事故における労災保険について、解説します。

労災保険とは

労災保険(労働者災害補償保険)とは、労働者災害補償保険法に基づく制度で、労働者が業務上の事由または通勤によって負傷したり、病気に見舞われたり、後遺障害が残ったり、死亡したりした場合に、労働者や遺族を保護するため必要な保険給付を行うものです。

交通事故で労災保険を使える場合とは

業務中や通勤中に交通事故が起きた場合には、労災保険を利用することができます。

業務中の交通事故

業務中の交通事故と認められるのは、「業務遂行性」(使用者の支配管理下で就業している状態)と「業務起因性」(業務と死傷病等との間に一定の因果関係があること)

通勤中の交通事故

通勤中の事故と認められるのは、就業に関し、次のような移動を、合理的な経路及び方法で行っていた場合です。

  • (1)住居と就業の場所との間の往復
  • (2)就業の場所から他の就業の場所への移動
  • (3)住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動

なお、「移動の経路を逸脱し、又は中断した場合」の移動には、労災保険は適用されないとされています。逸脱とは、通勤の途中で就業や通勤と関係ない目的で合理的な経路をそれることをいい、中断とは、通勤の経路上で通勤と関係ない行為を行うことをいいます。通勤の途中で一度逸脱や中断となるような行為があれば、それ以降は原則として通勤中とは認められません。
例えば、帰宅途中に買い物に寄ったり、食事に寄ったりしたような場合には、その後の道での交通事故には、労災保険は適用されないことが多いでしょう。

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労災保険の給付内容

労災保険の主な給付内容は、以下のとおりです。

・療養補償給付(療養給付)

医療機関での診察・薬剤や治療材料の支給・処置料・手術料などの療養の給付を受けることができます。

・休業(補償)給付

療養のために労働することができないために、賃金を受けない日が4日以上になると、休業1日について給付基礎日額の60%相当額が支給されます。
また、休業特別支給金として、休業1日について給付基礎日額の20%相当額が支給されます。

・障害補償給付

後遺障害が残った場合に支給されます。支給内容は、後遺障害の程度よって区分されます。年金の場合と、一時金の場合があります。

・遺族補償給付

労働者が死亡した場合に遺族に対して支払われます。遺族補償年金と遺族補償一時金があり、死亡した労働者との続柄・遺族の年齢によっていずれかが支給されます。

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労災保険の特徴

過失相殺が行われない

労災保険の給付においては、労働者に過失があったとしても、過失割合による減額はなされません。

後遺障害の等級認定制度

労災保険においては、自賠責保険と同様に、後遺障害等級認定制度があります。原則書面審査である自賠責保険の場合とは異なり、労災保険においては、労災保険の指定医と面談があります。

慰謝料の補償がない

労災保険は、自賠責保険とは違って、慰謝料は支給内容に入っていません。

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自賠責保険との関係

業務中や通勤中での事故であっても、自動車の交通事故の場合には、自賠責保険給付の対象となります。その場合には、労災保険給付と自賠責保険による保険金支払いのどちらか一方を先に受けることになります。どちらを先に受けるかについては、被害者が自由に選ぶことができます。
なお、自賠責保険からの保険金を先に受けた場合(「自賠先行」といいます。)には、自賠責保険等から支払われた保険金のうち、同一の事由によるものについては、労災保険給付から控除されます。また、逆に、労災保険給付を先に受けた場合(「労災先行」といいます。)には、同一の事由について自賠責保険からの支払いを受けることはできません。
ただし、休業特別支給金の20%は、自賠責保険の給付とは無関係に支給されます。

交通事故で労災保険を利用するメリット

休業特別支給金の支給を受けることができる

前述のように、休業特別支給金は、相手方の任意保険会社や自賠責保険から休業損害を受け取ったとしても、支給を受けることができます。そのため、労災保険を利用すると、多くの金額を受け取ることができるのです。

自賠責の上限額を有効利用できる

自賠責保険とは違って、労災保険においては、支払われる治療費の上限がありません。
相手方が任意保険に加入していない場合には、自賠責保険の上限である120万円を超えた部分を任意保険会社に請求することができず、相手方から支払ってもらえない可能性があります。この場合には、労災保険を優先的に利用することによって自賠責保険の上限枠を有効利用した方がよい場合があります。
過失相殺されない
小さな過失の場合は、自賠責保険でも過失相殺はなされませんが、過失の割合が70%を超えると、労災保険とは違い、自賠責保険では一定の割合で過失相殺がなされてしまいます。
そのため、自分の過失が70%を超える場合には、過失相殺されない労災保険を優先して利用した方が得になることがあります。

治療費が打ち切られても負担を少なく治療を継続できる

治療の途中で、任意保険会社から治療費の打ち切りを打診される場合があります。
労災保険を利用すると、自己負担なく治療を受けることができますので、治療費を打ち切られた場合には、労災保険に切り替えることによって、治療費の負担なく治療を継続することができます。

適正な後遺障害等級認定を獲得できる可能性

労災保険でも自賠責保険でも、後遺障害等級認定の基準は同じです。しかし、審査の主体や進め方は違っていますので、自賠責保険において後遺障害等級が非該当となったような場合でも、労災保険においては後遺障害が認められるというようなこともあり得ます。

業務中や通勤中の交通事故で怪我をした場合には弁護士にご相談ください

このように、労災保険の対象にもなるような交通事故の場合、労災保険を利用したできるケースなのか、労災保険を利用すべきケースなのかなどについて、複雑な判断が必要となることがあります。専門家である弁護士であれば、治療の開始当初から、適切なアドバイスをすることができますので、ぜひお早めにご相談ください。

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