高齢者や子供の死亡事故の場合の慰謝料とは
最終更新日:2018年11月30日/投稿日:2018年11月29日/執筆者弁護士
交通事故によって被害者の方が亡くなられた場合、遺族の方の精神的な苦痛は計り知れません。特に、お子様を失った悲しみは、想像を絶するものがあると思います。また、亡くなられた方が高齢者の場合には、遺族の方が過ごしてきた時間が長いことからも悲しみは大きく、これまで人生を歩まれてきたことから被害者の方の関係者、慰謝料を請求でき得る近親者の人数が多くなるという特徴もあります。
そして、いうまでもなく、亡くなられた被害者ご本人の精神的苦痛は、極めて大きいものです。
このような、交通事故によって死亡してしまったことによる精神的苦痛に対して支払われるのが、「慰謝料」です。
この記事では、死亡による慰謝料について、特に、高齢者や子どもが亡くなった場合にどのように算定されるのかを中心にして、ご説明します。
目次
死亡事故とその慰謝料について
交通事故によって被害者がお亡くなりになった場合には、被害者の相続人は被害者本人の慰謝料請求権を相続して、慰謝料を加害者に対して請求することができます。また、被害者の近親者の方は、近親者としての固有の慰謝料を請求することもできます。
そして、死亡事故の慰謝料については、基準が設けられており、弁護士(裁判所)基準では、亡くなられた方の立場によって、以下のような目安が定められています。
なお、以下の金額には、近親者としての固有の慰謝料の金額も含まれています。
- ⑴ 一家の支柱・・・2800万円
- ⑵ 母親、配偶者・・・2500万円
- ⑶ その他・・・2000万円~2500万円
子どもの死亡の場合の慰謝料について
子どもが亡くなった場合についての死亡慰謝料は、上記の「その他」に分類され、慰謝料としては近親者慰謝料を含めて2000万円~2500万円と考えられています。
しかしながら、これはあくまでも一応の目安とされており、具体的な事情によっては増減額されることもあるとされています。
例えば、東京地裁八王子支部の平成19年9月19日付判決では、加害者が指定最高速度を20キロメートル上回って走行していたことを考慮して、本人分2300万円、父母分として各200万円の合計2700万円を認定し、事故直後に受傷した被害者を目の当たりにしたことなどを考慮して、11歳の兄に100万円の慰謝料を認めています。
このように、加害者側の事情や事故後の事情なども慰謝料の金額に反映される可能性がありますので、まずは具体的な事情について、弁護士へ相談され、アドバイスを受けることをおすすめします。
高齢者の死亡の場合の慰謝料について
高齢者が亡くなった場合の慰謝料は、人生を享受している程度に応じて、やや低めの金額になるといわれることがあります。実際、高額にはなりにくいですが、とはいえ、上記の「その他」を下回ることは多くありません。
なお、以下のように、高額になるケースもあります。
大阪地裁の平成22年2月9日付判決では、75歳の被害女性本人分として2500万円、病気により介護を必要とする夫の分として100万円、子2人孫1人分として各50万円、被害者が介護していた知的障害を持つ孫については、祖母である被害者の死により介護施設への入所を余儀なくされたとして300万円の合計3050万円を認めています。
そのため、事情によっては慰謝料を増額させたり、高齢者だからという理由で低めにされてしまうことを防ぐことができる場合もあります。その主張・立証は容易ではありませんので、具体的な事情については、弁護士へのご相談をおすすめしています。
増額が認められやすい事由は何か?
一般的に、事故時の加害者の過失が重大であったり、事故態様が悪質であったりする場合には、慰謝料の増額が認められやすいといわれています。
そのため、加害者側に飲酒運転やひき逃げ、速度超過、信号無視、居眠り運転、無免許運転、わき見運転等の場合には、その重大性、悪質性の程度によっては増額が認められる傾向にあるので、きちんと主張することが重要です。
また、加害者の事故後の態度が著しく不誠実である場合にも、慰謝料の増額が認められやすいといわれています。謝罪や見舞いをしなかった、責任を否定したという事情では増額については慎重な傾向にありますが、常識に反するような対応をしたなど著しく不相当な場合には増額が認められることがあります。
交通事故でご家族を亡くされた場合には弁護士へご相談ください
被害者がお亡くなりになったとき、遺族の方の精神的損害は計り知れません。
そのような中で、葬儀や死後の対応に追われ保険会社と交渉することは大きな負担となります。
また、保険会社の提示してくる金額は、裁判での基準よりもかなり低額である場合がほとんどです。そして、保険会社の担当者は示談交渉を専門の仕事としておりますので、一般の方が十分に交渉することは困難です。慰謝料の金額などの裁判基準は、いくら一般の方が主張をしても弁護士が介入しなければ保険会社は適応してくれないものです。
弁護士にご相談を頂ければ、保険会社からの提示が適正かを正確にお伝えすることができます。また、ご依頼を頂ければ保険会社との交渉も弁護士に任せることができますので、その分の精神的、肉体的な負担を軽減することもできます。慰謝料の金額にご遺族のお気持ちが適正に反映されていないとお考えの方は、弁護士に相談されることで、そのお気持ちを慰謝料に反映させることが可能になることもありますので、ご家族を交通事故で亡くされた場合は、ぜひご相談ください。