- 離婚時の財産分与割合は原則2分の1
- 財産分与割合を例外的に変更できるケース
離婚時の財産分与割合は原則2分の1
- 夫婦の貢献度に関する2分の1ルール
- 特段の事情があれば割合が修正されるが・・・
- 専業主婦の財産分与割合も2分の1
- 夫婦の一方だけが高収入の場合
- 家事をしてなかった場合
- 一方が浪費をしていた場合
夫婦の貢献度に関する2分の1ルール
離婚時の財産分与割合は、2分の1ずつとなるのが原則です。このことは、共働き夫婦でも、夫婦の収入に差があっても、専業主婦(主婦)の場合でも基本的に変わりません。
これは、夫婦が結婚後に貯めた財産は、夫婦が協力して稼いだもので、その貢献度も平等と考えられているからです。
このように、夫婦の共有財産に対する貢献度を2分の1ずつとする考え方を、「2分の1ルール」と呼びます。
特段の事情があれば割合が修正されるが・・・
たしかに、夫婦の一方が特別な才能や努力によって、一般家庭から見て多額の収入を得ている場合などの特段の事情がある場合には、このルールの配分は変更される余地はあります。
ところが、家庭裁判所の実務では、先ほど説明した2分の1ルールはかなり厳格に適用されています。
そのため、下記で説明するように、このルールを変更するほどの特段の事情が認められるのは、みなさんが考えるよりもかなり例外的なケースに限られているのが現実です。
専業主婦の財産分与割合も2分の1
サラリーマンの夫と専業主婦の妻が離婚する際に、夫から「妻が財産分与で2分の1も取得するのはおかしい」と主張されることがあります。
かつては、専業主婦が離婚する場合に、財産分与の割合を3分の1などに修正したこともありましたが、現在では専業主婦だろうとパート主婦だろうと、財産分与の割合は2分の1になるのが原則です。
そのため、専業主婦が財産分与で2分の1を取得するのはおかしくはありません。
夫婦の一方だけが高収入の場合
高収入の配偶者が、離婚時に、「自分が高収入のおかげで財産がたくさん溜まったのだから、稼ぎの少ない配偶者が2分の1を取得するのはおかしい」と主張することがあります。
しかしながら、「2分の1ルール」はかなり強く、1,000万~2,000万円程度稼いでいたとしても、この割合が修正されることは、ほとんどありません。
単に収入の格差のみを理由に、財産分与の割合を変えたい場合は、少なくとも3,000万円以上の高年収と数億円以上の多額の貯金がないと、修正割合を変更させるのは困難なことが多いでしょう。
家事をしてなかった場合
フルタイムで働いている夫から、「妻は専業主婦または主婦兼パートなのに家事をしていなかったから、財産分与2分の1はおかしい」と主張されることがあります。
また、近年は夫婦ともに正社員としてフルタイムで働いていることも多いです。この場合、例えば家事のほとんどを担当していた妻から、「夫婦ともに同じくらいの収入だったのに、私がほとんど家事をしていたのだから、財産分与2分の1はおかしい」と主張されることもあります。
このような主張についても、単に家事をあまりしていなかったということだけを理由に、財産分与の割合が変更されることはほとんどありません。
これは、そもそも生活をしている以上、家事を全くしないということは考えにくいのと、どの程度家事をしていなかったかというのは証明するのが難しいということも影響しています。
もっとも、後で説明するように他の事情と組み合わせることによって、財産分与の割合を変更できる事情の1つとはなり得ます。
一方が浪費をしていた場合
「配偶者が浪費をしていたから貯金が減ったのに、離婚の時に同じ2分の1ずつにするのはおかしい」と主張されることもあります。
このような主張がされても、少し金遣いが荒いとか、高価な趣味の品、アクセサリーを買ったくらいでは、割合が変更されることはほとんどありません。
ただし、浪費の事実も後で説明するように他の事情と組み合わせることによっては、財産分与の割合を変更しうる事情の1つとはなります。
財産分与割合を例外的に変更できるケース
これまで説明してきたように、財産分与の2分の1ルールを修正できる場面は、ほとんどないということがわかるかと思います。
それでも、例外的に財産分与の割合が変更されるケースはもちろんあります。それが、
- 特別な資格・能力で相当の高収入を稼ぎ貯金も多い場合
- 家事をしない・浪費・収入の格差など複数の事情がある場合
- 特有財産が原資となっている場合
の3つの場合です。以下では、この3つを詳しく解説します。
①特別な資格・能力で相当の高収入を稼ぎ貯金も多い場合
既に説明したように、基本的に単なる夫婦の収入格差のみでは、2分の1ルールが修正されることはありません。
ところが、夫婦の一方の特別の資格・能力・努力などで相当の高収入があって貯金もある場合は、例外的に修正されることがあります。
このケースで重要な点は、2つあります。
1つ目は、「相当の高収入かつ高額の財産がある」ということです。
1,000万や2,000万円程度の年収や数千万円の貯金では、「相当の高収入かつ高額の財産がある」とまではいえないことが多いです。実際に、特別の資格・能力で稼いだことを理由に財産分与の負担割合を変更した過去の裁判例でも、年収は3,000万~数億円、財産額は数億円~数百億円のものが多いです。
2つ目は、「特別の資格・能力」により稼いだということです。
同じ高収入でも特別の資格・能力に稼いだ場合の方が、修正はされやすいです。逆に、運や好機により高収入を得ていた場合の方が修正はされにくいです。例えば、宝くじ、競馬などのギャンブルで稼いだ場合は修正がされにくいです。投資で稼いだ場合でも、本人が特別の能力により稼いだのではなく、たまたま運が良かったことや市場のタイミングが良かったことで稼いだ方が修正はされにくいと考えられます。
例えば、たまたま購入した株式が暴騰した場合、景気好転中に利益を出した場合、仮想通貨で稼いだ場合などは修正されにくいと考えられます。他方で、婚姻前より投資家として研究・努力を重ねて、投資を本業として行ない継続的に利益を出していた場合などは修正されやすい方向に働くといえます。
②家事をしない・浪費・収入の格差など複数の事情がある場合
上の①で説明したように、収入の格差という観点からはかなりの高収入、財産額がないと、財産分与の割合は修正されにくいです。
ところが、平均より少し上の収入と資産額であっても、他に他方配偶者が家事をしない、浪費がひどいなどの事情が組み合わさった場合には、財産分与の負担が修正されることもあります。
ただし、家事をしない程度と浪費の程度は証明する必要があるので、これも簡単とはいえません。
③特有財産が原資となっている場合
これまで見てきた①②で財産分与の割合が変更されるケースはかなり例外的です。
ところが、これらとは全く違う理由から、財産分与の割合が変更されるケースがそれなりにあるのです。
それが、③特有財産が共有財産の原資になっている場合です。
本来、特有財産は財産分与の対象から外されるべきものです。特有財産については、▶離婚時に財産分与の対象にならないものとは?の記事を参照してください。特有財産が原資になっている場合も、本来は特有財産の割合が、財産分与の対象から外されます。
例えば、結婚前に貯めた貯金は財産分与の対象から外されますし、結婚前の貯金から1,000万円と結婚後の収入から3,000万円を使って自宅を購入した場合、自宅の価値の内4分の1は財産分与の対象から外されます。
ところが、結婚前の貯金を貯めてある口座に、結婚後にも入出金学理返された場合、結婚前の貯金で株式や投資信託などを購入したが、それを結婚後にも結婚後の収入も合わせて売買を繰り返している場合などは、離婚時点の財産の内、どの程度が特有財産なのかが証明できなくなってしまいます。
このように、特有財産が一部の原資になっていること自体は明らかだが、その割合が具体的にわからないという場合、全ての財産を財産分与の対象とした上で、割合を2分の1から修正することによって妥当な解決を図ることがあります。
この③を理由に、財産分与の割合が2分の1から変更されることは、前記の①②の場合と違って、それなりにある印象です。