財産分与

離婚のとき専業主婦が財産分与を受けるのはおかしいのか?

専業主婦が財産分与を受けるのはおかしい?

専業主婦(主夫)が財産分与を請求できるワケ

例えば、夫が正社員で妻が専業主婦の家庭で考えてみると、貯金の大半や自宅不動産は夫名義になっていることが通常です。

このような場合、夫名義の財産は、夫が会社からもらった給料などで購入したものや、その残りが貯まったものとなります。

他方で、専業主婦の妻は収入がないので、妻名義の財産はほとんどないか、あっても夫が稼いだ給料から一部を渡されたものを貯めていることになります。

(結婚前に貯めた貯金や、親から贈与や相続を受けた財産がある場合もありますが、これらは財産分与対象にならないので今回は除外します)

それでも、離婚時には、業主婦の妻は夫に対して、財産分与を請求することができます。

これは、夫は、専業主婦である妻の家事・育児などの協力があって、給料を稼いでいるため、名義が夫であっても、夫が稼いだものであっても、その財産は夫婦ふたりのものであると考えられているからです。

専業主婦の財産分与割合が2分の1なのはおかしい?

専業主婦の妻から財産分与を請求されたときに、「貯まった財産は全部自分が稼いだお金なのに、半分も渡さないといけないなのはおかしい!」と夫から主張されることがあります。

たしかに、昔の日本では、このような考え方も一般に受け入れられており、専業主婦の財産分与の取り分を3割程度にしていた時期もありました。

でも、その後、女性の権利意識の高まりなどを背景にこのような考え方は受け入れられないようになりました。

そして、現在の家庭裁判所の実務は、専業主婦であっても、兼業主婦(パートなど)であっても、フルタイムの共働きであっても、結婚中に貯めた財産に対する夫婦の貢献度は、原則2分の1と考えることになっています。

これは2分の1ルールと呼ばれています。

ですので、単に妻が専業主婦だったことだけを理由に、財産分与の割合を変えたいと離婚調停や離婚裁判で主張しても、「時代錯誤なことをいっているな」と思われるだけで、割合を2分の1から変更することが認められることはありません。

専業主婦の貢献度が平等ではないといえる場合とは?

例外的に、夫婦の財産に対する専業主婦の貢献度が低い場合には、財産分与の割合が2分の1から修正されることはあります。

ただし、実務上、修正が認められるのはかなり例外的な場合に限られており、ほとんどないということは知っておいた方が良いでしょう。

例えば、夫婦の収入格差があるというだけでは、割合の変更は認められません。

例外的に、夫婦の一方が特別の資格・能力などで、相当な高収入を稼いでおり、かつ、相当な財産が貯まっている場合には、割合を6:4や7:3などに変更されるケースもあります。

これについては、▶離婚時の財産分与の割合は2分の1なの?変更できる場合とは?の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。

専業主婦なのに家事をしない場合は?

夫から、「妻は専業主婦なのに家事もほとんどしていなかったから、2分の1もとられるのはおかしい」と主張されることもあります。

このような主張がなされた場合でも、単に家事の程度だけを理由に、実際に財産分与の割合が変更されることは多くはありません。

まず、同居して生活している以上、家事をどの程度していなかったかを証明することが難しいというのが変更されない理由の1つです。

また、専業主婦で家事と育児を全くしていない、言葉通り、した家事と育児が0というケースはほとんどありません。たいていの場合、夫が妻の家事育児に不満を持っている場合でも、妻は何らかの家事・育児をしていることがほとんどです。第三者が、他人の家庭内の家事の程度・質について評価するのも難しいです。

そのため、極端なケースを除き、夫が妻が家事をしていないと主張するケースでも、財産分与の割合が変えられることはほとんどないのです。

ただし、夫が高収入で、財産も多い、妻が浪費をしているなど他の事情と組み合わせることができれば、充分に家事をしていないことも財産分与の割合を変更する理由になることはあります。

専業主婦は扶養的財産分与がもらえることも

専業主婦であっても、原則として2分の1の割合の財産分与を請求できることはこれまで見てきたとおりです。

それどころか、専業主婦には、さらに扶養的財産分与が認められる余地もあります。

扶養的財産分与がどのようなものかは、

▶扶養的財産分与が認められる場合とは?金額の相場や期間は?

の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。

 

ABOUT ME
弁護士 豊田 友矢
千葉県船橋市の船橋シーアクト法律事務所の代表弁護士 離婚・不貞慰謝料・遺産相続・交通事故・中小企業法務等の相談を多数取り扱っている。