財産分与

離婚の財産分与で家はどうする?売らない場合やローンありの場合など

財産分与で家はどうする?
目次
  1. 離婚時の財産分与で一番揉めるのが「家」です。
  2. 家を売らないで住み続ける場合
  3. 離婚後に自宅に住み続ける場合の流れ
  4. 離婚時に家を売る場合
  5. 離婚で家を売る場合の流れ
  6. 離婚の財産分与と家にまつわるその他の問題
  7. 売るor売らない?ベストな方法とは?

離婚時の財産分与で一番揉めるのが「家」です。

これまで住み続けてきた家(マンション・戸建てなどの不動産)には金銭的価値以上の思い入れがある場合があることや、住宅ローンがある場合には将来のローン返済をどうするかも問題になるからです。

また、家の財産分与の際には、家を売るのか、売らないのか、売らないならどちらが住み続けるのか、家の名義はどうするのか、残ローンはどうするのかなどを決める必要があります。

ところが、様々な制約から、夫婦双方にとって思い通りに決められないことが多く、長期間揉め続けることが多いです。

結局のところ、夫婦双方の希望や、離婚時点の家の名義、住宅ローンの有無とその名義、オーバーローンかどうかによって、ベストな選択肢は変わってきます。

家を売らないで住み続ける場合

住宅ローンなしor完済している家に住む場合

家に住み続ける場合には、基本的に住み続ける方に、家の名義を移すことになります。

もともとの家の名義と、離婚後に住み続ける人が同じである場合には、特に名義変更の必要はありません。例えば、夫名義の家に夫が住み続ける場合には名義変更の必要がないです。

そして、夫と妻のどちらが住み続けるか、家の名義を変更するかどうかにかかわらず、公平な財産分与のためには、家をもらわない方に家の価値分の財産を取得させる必要があります。

例えば、夫名義の自宅の価値が1000万円、夫の貯金が500万円、妻の貯金が500万円で公平に財産分与するにはどうすれば良いのでしょうか?

夫が家に住み続けることを希望し、自宅は夫が取得するとします。もともと夫名義なので名義変更はしません。この時点で夫は1500万円分の財産をもっていることになります。

他方で妻の貯金は500万円しかないので、公平に財産分与するには、夫が妻に500万円の貯金を全部渡すことによって、夫と妻は1000万円ずつ共有財産を分けたことになります。

住宅ローン名義が夫で家に夫が住む場合

住宅ローンの名義が夫で、その家に夫が住み続ける場合、ローンも夫が支払続ければ良いだけなので、一番簡単です。

この場合、財産分与として、夫は妻に自宅の共有財産としての評価額分(自宅の時価-別居時のローン残高)について、別の財産を渡すのが通常です。

例えば、自宅の査定額が2000万円、ローン残高が1000万円、夫婦の貯金が1000万円ある場合、夫が1000万円分の家(査定額2000万円-ローン残高1000万円)を取得して、妻が1000万円の貯金を全部取得することが公平でしょう。

なお、このケースでは自宅の名義も夫単独になっていることが多いとは思いますが、妻が親からの贈与や結婚前の貯金で頭金を支払っている場合には、家が夫婦の共同名義(共有)になっていることもあります。

夫名義の場合には、名義変更の必要がありませんが、共同名義(共有)の場合には、財産分与として妻の共有持ち分を夫に名義変更する必要があります。

住宅ローン名義が夫で家に妻が住み続ける場合

受託ローン名義が夫で、妻が家に住み続ける場合は、いくつかの問題があります。

まず、住宅ローンは、夫と妻のどちらが払い続けるのかということです。

離婚するのであれば、夫婦は他人になるので、家賃を払うのと同様に自宅に住む妻が離婚後の住宅ローンを払うのが公平なことが多いでしょう。

もちろん、子供がいる場合に養育費的な考えで、一定期間夫が妻の住む住宅ローンを払い続けるというケースなどもあります。

いずれにしても、まずは夫婦間で、離婚後の住宅ローンを夫婦のどちらが負担するのかを決める必要があります。

その上で、夫が支払続けることになった場合と、妻が払い続けることになった場合に分けて考えてみます。

夫が住宅ローンを払い続ける場合

この場合の問題は、夫が何らかの理由で、住宅ローンの支払をしなくなったり、できなくなったりした場合には、住宅ローン借入先の銀行から自宅が差し押さえられてしまうことです。

自宅が差し押さえられた後は、競売になり、住んでいる人は強制的に立ち退かないといけなくなってしまいます。

これは、あくまでローン債務者であると夫と、債権者である銀行との間の問題なので、いくら夫婦間で夫が住宅ローンを払い続けるという合意書を作ったところで、夫がローンを払わなければ、もはやどうすることもできません。

離婚になる夫婦というのは、配偶者に対して多かれ少なかれ不信感を抱いていることが多いと思います。それにもかかわらず、夫が住宅ローンを支払続けてくれることを信じることができるでしょうか?

また、住宅ローン名義が夫のままである以上、自宅の名義を妻に変更することはできないのが通常です。なぜかというと、ローンの契約により、ローン完済前に自宅の名義変更をすると、ローンの全額を一括請求されることになっていることがほとんどだからです。

妻が住宅ローンを払う場合

この場合の問題は、住宅ローンの借り換えを行えるかどうかです。

先ほど説明したように、夫が住宅ローンの債権者のままにしておくと、仮に妻が夫に対して住宅ローン分のお金を渡し続けていたとしても、夫がそのお金をローン返済に回さなくなったら、家を差し押さえられてしまいます。

そのため、妻が住宅ローンを支払うことにするのであれば、ローンの名義自体を妻にする必要があります。

ところが、ローンの名義変更は通常できないため、妻が新たに借り換えを行なう必要があるのです。この際、妻に十分な収入や、勤続年数などがないと銀行の審査が通らず、ローンの借り換えができません。

ローンの借り換えができるのであれば、借り換え時に夫のローンは全て完済されるので、夫名義の自宅を妻に名義変更することができます。

ペアローンで自宅が共同名義の(共有)の場合

ペアローンで、自宅が共同名義というのは、実は離婚時には最悪のパターンです。

この場合に、夫婦どちらかが家に住み続けるためには、ハードルがかなり高いです。

基本的には、離婚時に少なくとも家に住まない人の分のローンを一括返済するか、住む人が住まない人分のローンを使いで借り換えしない限り、売却して清算してしまった方が良いことの方が多いでしょう。

ただし、ローンの返済が相当進んでいないと、配偶者分のローン分を追加で借り換える審査を通すのはなかなか難しいと思います。

もっとも、おすすめはしませんが、アンダーローンで、かつ、住み続ける期間を離婚後の一定期間(1年から3年程度)に限って、その後売却するということでしたら、住宅ローンと自宅を共有名義のままにして離婚しても、うまくいくこともあります。

離婚後に自宅に住み続ける場合の流れ

1 住宅ローンの残高・主債務者が誰か・保証人の有無を確認する

ローン返済表とローン契約書などを見てしっかりと確認しましょう。

2 自宅の査定書を取って自宅の価値を確認する

不動産業者に自宅の査定を依頼しましょう。複数社に頼むのがおすすめです。

3 住宅ローンの負担をどちらがするか決める

住宅ローンを住み続ける人が負担するのか、住まない人に負担してもらうのかを夫婦で話して決めましょう。

4 自宅の名義をどうするか決める

自宅の名義をどうするか決めましょう。現在の名義のままで良いのか、住み続ける人に変更する必要があるのかです。

5 住宅ローンの借り換えをするか決める

住宅ローンの名義と住み続ける人が違うのであれば、ローンの借り換えをするかどうかを検討しましょう。

6 ローン借り換えができるか銀行に相談する

ローンの借り換えをしたいと思っても、銀行の審査が通らなければ、借り換えはできません。離婚前に銀行に相談しておいた方が良いでしょう。

7 離婚する

協議離婚であれば、離婚協議書を作成して自宅とローン負担などに関する取り決めをしっかりと記載しましょう。調停離婚の場合も、調停調書でしっかりと取り決めた条項をいれてもらいましょう。

なお、裁判離婚の場合には、判決では、ローンが残っている不動産については、ローン負担者を別の人にしたり、家の名義を変更してもらうことはできません。

8 ローン借り換えと自宅の名義変更を行なう

離婚が成立したら、ローンの借り換えと自宅の名義変更を必要に応じて行ないましょう。

離婚時に家を売る場合

住宅ローンなしor完済している家を売る場合

住宅ローンを完済しているのであれば、売却した代金が全て手に入るので、これを夫婦で分けることになります。

結婚後に夫婦が稼いだお金で頭金や住宅ローンを全て払っている場合は、基本的に2分の1ずつ分けることになります。

頭金やローンの一部を、結婚前に夫婦の一方が貯めたお金や親からの贈与などで払っている場合には、その分を考慮して、2分の1ずつにはしないことも多いです。

住宅ローンありでアンダーローンの家を売る場合

住宅ローンあり(アンダーローン)の場合に家を売却する場合には、売却代金で残ローンを完済することになります。

そして、売却代金からローン返済分や売却手数料等を引いて残った現金を夫婦で分けることになります。

頭金やローンの返済を、結婚後の夫婦の財産以外から支出していなければ、原則として2分の1ずつ分けることになるのは、ローンなしの家を売却したときと同じです。

住宅ローンあり(オーバーローン)の家を売る場合

自宅の売却額よりもローン残高の方が多い場合は、オーバーローンといいます。この場合、自宅を売却するには、一括で売却額とローン残高の差額を支払う必要があります。

なぜなら、銀行はローンが完済されない以上、原則として自宅に着いている抵当権を抹消してくれないのですが、抵当権がついたままでは買い手が見つからないからです。

例外的に、銀行の同意を得て、任意売却という方法で家を売却し、残高について分割で払う方法もありますが、ここでは省略します。

そうすると、基本的に、オーバーローン状態の家を売却して離婚する場合には、他の夫婦の共有財産でローン残高と売却額の差額を一括返済することになります。

例えば、家の売却額が1500万円、ローン残高が2000万円、夫の貯金が500万円、妻の貯金が500万円だとします。

このとき、自宅を売却して財産分与を行ないたい場合には、夫(の貯金で500万円の差額を支払った上で、最終的に残った妻の貯金500万円を、夫婦で250万円ずつ分けるのが公平でしょう。

離婚で家を売る場合の流れ

1 住宅ローン残高を確認する

ローン返済表などでしっかりと確認しましょう。

2 自宅の査定書を取って価値を確認する

不動産業者に査定書を依頼しましょう。複数社に頼むのがおすすめです。

オーバーローンの場合には、自宅を勝手に売却することが事実上できません。なお、不動産業者は実際に売れる金額よりもやや高めの金額で査定書を作ることが多いので、ギリギリの場合はオーバーローンだと思った方が良いでしょう。

3 オーバーローンの場合は残債務をどうするか決める

オーバーローンの場合、自宅を売却するには、銀行の同意を得ない限り、基本的に残額を一括で支払う必要があります。他の預貯金や親族の援助、借り入れにより完済可能かどうか検討しましょう。

どうしても、完済できない場合は、銀行と協議して任意売却できるかどうかを検討しましょう。

4 不動産業者と媒介契約を締結する

不動産業者と媒介契約を締結して、買い手を見つけてもらいましょう。

5 内覧などの実施

内覧を実施するには、家に住んでいる家族の協力が不可欠です。家に住んでいる配偶者が家の売却を拒否している場合には、内覧ができずに買い手が見つからないでしょう。

6 売買契約締結・決済

買い手が見つかったら、売買契約を締結して、決済します。この際に、ローンを完済して抵当権を抹消する必要があります。

7 売却代金からローン・手数料を引いた残額を夫婦で分ける

売却代金からローンと手数料を引いた残額を、夫婦で分けることになります。2分の1ずつにするのが原則ですが、頭金やローンの一部を、親族の贈与や結婚前の資金で払っていた場合には、その分を考慮して分けることも多いです。

離婚の財産分与と家にまつわるその他の問題

専業主婦でも家の財産分与はある?

専業主婦であっても、結婚後の夫の収入でローンを返済している場合は、家は夫婦の共有財産になります。

これについては、▶離婚のとき専業主婦が財産分与を受けるのはおかしいのか?を参考にしてください。

結婚前にかった家は財産分与の対象になる?

結婚前に買った家であっても、結婚後のローン返済を結婚後の収入で支払っている場合には、家の価値の一部について財産分与の対象になります。

家電・家具は財産分与対象になる?

理論的には家電・家具も財産分与の対象にはなります。ただし、その価値は購入金額ではなく、あくまで時価(買取金額になるでしょう)なので、高額な家電・家具でない限り、わざわざ考慮しないことが多いです。そのため家に住み続ける人がそのまま取得したり、処分するのであれば逆に処分費用を夫婦双方で負担することになります。

売るor売らない?ベストな方法とは?

理論的に考えれば、ローンが残っている場合には、自宅を売却して清算してしまうのがベストな方法であることが多いです。

なぜかというと、家に住み続けた時の次のデメリットがなくなるからです。

  • 家に住んでないローン名義人がローンを支払い続ける保証がない
  • ローンの借り換えの審査が通るかわからない
  • ローンを完済しないと自宅の名義変更ができない
  • 家を共有状態のままにしておくと将来紛争が再発する

離婚時点でローンを完済している場合には、自宅の価値分の他の資産があれば、自宅に住み続けたい場合は、売らない方がベストな方法です。

ローンを完済していても、他に十分な資産がない場合は、売却して夫婦ふたりで売却代金を分けるのがベストな方法です。

ただし、必ずしも理論的にベストな方法をとらなくてはいけないわけではありません。

どうしても家に住み続けたい場合などは、借り換えをできるか、また場合によってはリースバックなどを利用できるかも検討してみると良いでしょう。

ABOUT ME
弁護士 豊田 友矢
千葉県船橋市の船橋シーアクト法律事務所の代表弁護士 離婚・不貞慰謝料・遺産相続・交通事故・中小企業法務等の相談を多数取り扱っている。