財産分与

離婚の財産分与の相場はいくら?熟年離婚のケースも紹介

財産分与の相場はいくら?

裁判所が公表している財産分与の支払金額

裁判所のホームページ上で、毎年、その年に行なわれた離婚調停等で定められた財産分与の支払金額の統計が公表されています。

この統計によると、令和4年中の財産分与の支払金額は次のとおりとなっています。

【表1】

財産分与の支払金額 件数(総数26,367)
財産分与なし 18,393件
財産分与あり 7,974件
内100万円以下 1,774件
内200万円以下 987件
内400万円以下 996件
内600万円以下 637件
内1000万円以下 857件
内2000万円以下 733件
内2000万円超え 401件
内算定不能 1,589件

【参照】裁判所HP掲載の「令和3年司法統計年報(家事編)」第27表「離婚」の調停成立又は調停に代わる審判事件数―財産分与の 支払額別婚姻期間別―全家庭裁判所

※財産分与なしの件数は、離婚成立等の総数から財産分与の取り決め有りの総数を控除して算定。

7割近くの夫婦が財産分与なしで離婚している

前記の表1を見ると、離婚調停成立等の総数が26,367件であるのに対し、財産分与ありで離婚した件数は7,974件にとどまっています。

つまり、約7割の夫婦が財産分与の取り決めなしで調停離婚していることになります。

ただし、前記の表は、あくまで財産分与の「支払金額」に着目したものなので、例えば夫婦がそれぞれ1000万円ずつ自分名義の貯金があった場合には、夫婦どちらかが配偶者に財産分与として支払う分はないため、「財産分与なし」に分類されます。

ちなみに、法務省の調査報告書(法務省HP掲載の「財産分与を中心とした離婚に関する実態調査結果の概要」)によっても、62.7%の夫婦が離婚時に財産分与の取決めをしなかったと回答されています。この法務省の調査報告書は、裁判所の統計とは違い、協議離婚した人も調査対象となっています。

そのため、調停離婚に限らず、離婚した夫婦の7割近くが財産分与の取り決めをしていないといえるでしょう。

財産分与ありの中では100万円以下が最多

前記の表1を見ると、財産分与ありの総数7,974件のうち、支払金額100万円以下が1,774件で最多となっています。

次いで、400万円以下、200万円以下、1,000万円以下、2,000万円以下、600万円以下、2,000万円超えの順番になっています。

これを財産分与ありの中の割合で示すと、以下のとおりとなります。

【表2】

財産分与あり総数 7,974件 100%
内100万円以下 1,774件 約22%
内200万円以下 987件 約12%
内400万円以下 996件 約12%
内600万円以下 637件 約8%
内1000万円以下 857件 約11%
内2000万円以下 733件 約10%
内2000万円超え 401件 約5%
内算定不能 1,589件 約20%

※表1から算出

熟年離婚の場合は600万~2000万になることも多い

裁判所の公表する統計では、婚姻期間別の財産分与の支払額も後悔されています。

熟年離婚とは、一般的に婚姻年数20年以上の夫婦の離婚のことをいいます。

このような婚姻年数20年以上で離婚した場合の財産分与の支払額は以下のとおりです。

【表3】

財産分与額 婚姻期間20年以上 25年以上
総数 2,427件 3,392件
財産分与なし 1,391件 1,651件
財産分与あり 1,036件 1,741件
内100万円以下 104件 110件
内200万円以下 97件 119件
内400万円以下 145件 180件
内600万円以下 110件 179件
内1000万円以下 128件 300件
内2000万円以下 144件 285件
内2000万円超え 69件 189件
内算定不能 239件 379件

【参照】裁判所HP掲載の「令和3年司法統計年報(家事編)」第27表「離婚」の調停成立又は調停に代わる審判事件数―財産分与の 支払額別婚姻期間別―全家庭裁判所

※財産分与なしの件数は、離婚成立等の総数から財産分与の取り決め有りの総数を控除して算定。

この表3を見ると、熟年離婚の場合は、半分近くの夫婦が財産分与の取り決めをしており、その額も、600万~2,000万円になることが珍しくないことがわかります。

専業主婦の離婚の方が財産分与の相場が高い?

離婚時(または別居時)の夫婦名義の財産の差額が大きいほど、財産分与の金額が大きくなります。

極端な例をいえば、夫と妻がそれぞれ1億円の財産を持っている場合の財産分与は0円となるのが通常であるのに対し、夫が20万円、妻が0円の資産を持っている夫婦では、財産分与として夫が妻に10万円を払うことになります。

そのため、近年増えている夫婦ともに正社員で共働きのケースで、それぞれが貯金をしている場合には、財産分与の金額は小さくなりやすいです。

他方で、配偶者の一方が専業主婦(主夫)やパート収入で、他方が正社員などでより多くの貯金を貯めている場合には、財産分与の金額が高くなりやすいです。

そして、現代の日本では、婚姻後は妻の収入の方が少なくなることが多いのが現実なので、夫が妻に対して財産分与を払うケースの方が、相場は高くなることになります。

以下の裁判所の統計からも、夫が財産分与を支払うケースの方が、財産分与の金額が高くなる傾向がうかがえます。

【表4】

財産分与額 夫が支払うケース 妻が支払うケース
財産分与あり 6,848件 1,126件
内100万円以下 1,412件 362件
内200万円以下 843件 144件
内400万円以下 871件 125件
内600万円以下 568件 69件
内1000万円以下 775件 82件
内2000万円以下 674件 59件
内2000万円超え 370件 31件
内算定不能 1,335件 254件

【参照】裁判所HP掲載の「令和3年司法統計年報(家事編)」第28表「離婚」の調停成立又は調停に代わる審判事件のうち財産分与の取 決め有りの件数―支払額別支払者及び支払内容別―全家庭裁判所

経営者・開業医の離婚では数億~数十億になることも

これまで見てきた財産分与の相場は、あくまで相場なので、結婚後に築いた資産が多額になる場合には、財産分与も大きな金額になることがあります。

特に、会社経営者、開業医などが熟年離婚する場合には、結婚後に貯まった財産が数十億~数百億になることもあります。

このような場合、財産分与の割合が2分の1から修正されることも多いですが、それでも財産分与の額が数億~数十億になるケースもあります。

財産分与の相場が●円くらいだから、「●円払えば充分だろう」「●円もらえれば充分だろう」と安易に考えずに、弁護士に適正な財産分与額を相談するのが良いと思います。

ABOUT ME
弁護士 豊田 友矢
千葉県船橋市の船橋シーアクト法律事務所の代表弁護士 離婚・不貞慰謝料・遺産相続・交通事故・中小企業法務等の相談を多数取り扱っている。