財産分与

生命保険は離婚したら財産分与でどうなる?

生命保険は財産分与でどうなる?

生命保険は財産分与の対象となる

生命保険も、結婚後に夫婦が協力して築いた財産である限り、財産分与の対象になります。

そのため、離婚時には、預貯金や株式だけでなく、夫婦が加入している全ての生命保険を確認する必要があります。

対象は解約返戻金の額であって保険金や保険料ではない!

生命保険が財産分与の対象になると言っても、対象となるのは、払ってきた保険料の総額や、定められている保険金額ではありません。

対象になるのは、現時点で解約した場合に戻ってくる解約返戻金の金額です。

そのため、保険金額1億円の生命保険に加入しているからと言って、財産分与で5000万円もらえるわけではないですし、保険料の一時払いで1000万円を支払済みであっても、その半分の500万円がもらえるわけでもありません。

また、掛け捨て型の生命保険は、解約返戻金がないので、これまでいくら保険料を払っていようと、保険金額がどんなに高かろうと、財産分与の対象にはなりません。

婚姻前に加入した生命保険はどうなる?

婚姻前に取得した財産は財産分与の対象になりませんが、婚姻前に加入した生命保険であっても、婚姻後に夫婦で協力して稼いだ収入の中から保険料を払っている場合には、その割合に応じた額が財産分与の対象になります。

例えば、結婚3年前に保険に加入し、結婚7年後に離婚するとして、この10年間同額の保険料を支払い続けてきた場合には、解約返戻金の内70%が共有財産として財産分与の対象になります。

離婚したら生命保険はどうするのか?

財産分与の対象が解約返戻金だからといって、離婚時に必ず生命保険を解約しないといけないわけではありません。

むしろ、生命保険は途中で解約すると損することが多いことから、夫婦の一方が契約を継続して、その分他の預貯金などの財産を渡すことで調整することの方が多いです。

離婚してもそのままにするケース

例えば、契約者:妻、被保険者:妻、受取人:子供となっている生命保険については、妻が離婚後子供の親権者となった場合、生命保険はそのままにしておくことが多いでしょう。

受取人を子供に名義変更するケース

例えば、契約者:妻、被保険者:妻、受取人:夫となっている保険契約で、妻が離婚後に子供の親権者となった場合、生命保険は継続した上で、受取人を子供に名義変更することが多いかと思います。

この場合、受取人の名義変更には通常元の受取人(この場合は夫)の同意は必要ありません。

次に、契約者:夫、被保険者:夫、受取人:妻となっている保険契約で、妻から財産分与として、受取人を子供に変更したいという希望があることもあります。ところが、このようなやりかたはやめた方が良いです。なぜかというと、契約者かつ被保険者である夫は、受取人である子供の同意なく、あとからいつでも受取人を再変更できてしまうためです。

そのため、このような場合に保険契約を継続したい場合は、次のように契約者自体を変更することになります。

契約者を配偶者に名義変更するケース

例えば、契約者:夫、被保険者:妻、受取人:子供or夫となっている保険契約を、契約者:妻、被保険者:妻、受取人:子供へ変更するケースです。

このパターンが一番多いかと思います。

この場合、契約変更には、元々の契約者の夫の協力が必要なので、財産分与の合意をするときに、事前に夫が記入する必要のある書類を用意してもらった方が良いでしょう。

解約して返戻金を分けるケース

生命保険以外に主な共有財産がないため、解約しない限り財産を分けられないと言うこともあります。他にも、離婚するなら生命保険は不要と考えた当事者が、生命保険を解約することを希望することもあります。

このような場合は、生命保険を解約した上で、預貯金と同じように解約返戻金を折半することになります。

生命保険の種類と離婚の財産分与の関係

定期保険

定期保険とは、保険期間が一定期間に限られており、保険期間中に被保険者が死亡または高度障害になった場合に保険金が支払われるタイプの保険です。

このタイプの保険は、保険料が掛け捨てのものがほとんどなので、財産分与の対象になることはまずありません。

終身保険

終身保険は、保険期間が一生涯続くもので、被保険者が死亡または高度障害になった場合に保険金が支払われるタイプの保険です。

人はいつかは必ず死亡するものなので、定期保険とは違い、最終的には必ず保険金が受け取れることになります。

このタイプの保険は、解約返戻金があるものがほとんどなので、財産分与の対象になります。

低解約返戻金型終身保険と財産分与

低解約返戻金型終身保険は、基本的には終身保険と同じですが、一定期間内の解約返戻金が低くなっている分、支払保険料が安くなっています。

このような低解約返戻金型終身保険の場合、財産分与の基準となる時点が、解約返戻金が低く抑えられている期間内の場合、評価額が低くなってしまいます。

また、一定期間内に解約すると、払い込んだ保険料を大幅に下回る解約返戻金しか取得できないため、離婚で財産分与をすることになっても、保険契約は継続した方が良いでしょう。

定期付終身保険

終身保険に定期保険が特約でくっついている保険です。

定期保険部分は掛け捨てですが、終身保険部分は解約返戻金があるのが通常です。

そのため、財産分与の対象になりますが、掛け捨て部分もあるので、払い込んだ保険料に比較すれば解約返戻金は低くなるでしょう。

定期保険部分は一度解約すると、再度加入しようとしたときに保険料が上がることも多いので、財産分与の対象にしても、解約しないで継続することが多いでしょう・

収入補償保険

収入補償保険は、保険期間内に被保険者が死亡または高度障害になった場合に、一定期間遺族等に保険金が年金で支払われる保険です。

この保険も、定期保険と同じで掛け捨てタイプの保険なので、解約返戻金はなく、財産分与の対象にはなりません。

養老保険

養老保険は、保険期間内に死亡または高度障害になった場合には死亡保険金が支払われ、満期まで生存していた場合にも死亡保険金と同額の満期保険金が受け取れる保険です。

終身保険との違いは、満期になれば死亡しなくても、保険金を受け取れる点にあります。

養老保険も、解約返戻金がありますので、財産分与の対象になります。商品にもよりますが、終身保険よりも解約返戻金の割合が高めなことが多いようです。

そのため、養老保険は比較的貯蓄性が高い保険であるため、他に預貯金等がない場合、財産分与の清算のために解約することも考慮すべきでしょう。

学資保険

学資保険は、こども保険ともいいます。子供の学費などの教育資金に当てるための保険です。

通常契約者は親で、被保険者を子供として、保険金の受取人は親にしていることが多いです。

この場合、満期(大学入学年や卒業年のことが多い)に満期保険金を受け取れます。その他、小学校・中学校・高校・大学の入学時に祝い金も受け取れることもあります。子供が途中で亡くなった場合には、死亡保険金が支払われることになります。

他方で、契約者である親が途中で亡くなった場合には死亡保険金は支払われないものの、死亡以降の保険料支払が免除となり、満期が来れば満期保険金が支払われます。

学資保険は、解約返戻金があり、財産分与の対象になります。

また、子供のための保険という側面が強いため、親権者が契約を継続するケースが多いです。

離婚前の契約者と親権者が違う場合には、契約者と受取人の変更手続をする必要があります。

団体定期保険

団体行き保険とは、Aグループ保険や、Bグループ保険ともよばれます。

勤務先の会社を通じて入る定期保険タイプの生命保険です。

この保険は、1年更新型の掛け捨てタイプで、解約返戻金はないので、財産分与の対象にはなりません。

また、契約者は勤務先であることが多く、被保険者もその従業員に限定されているため、契約者や被保険者の名義変更手続をすることもできません。

団体信用生命保険(団信)

団体信用生命保険は、住宅ローンに付ける生命保険です。

契約者は住宅ローン債権者の金融機関、被保険者は住宅ローンを組んだ人、受取人は金融機関となります。

住宅ローンを借りた人が、ローン完済前に亡くなった場合、ローン残高と同額の保険金が金融機関に支払われて、ローンが完済となります。

団信は掛け捨てタイプの保険なので、解約返戻金はなく、財産分与の対象にはなりません。

また金融機関が契約者なので、離婚したからといって、夫婦で勝手に名義変更手続を取ることもできません。

個人年金保険

個人年金保険は、一定の年齢から年金が支払われる保険ですが、年金受け取り開始前に被保険者が死亡した場合、払い込んだ保険料に相当する額の死亡給付金が支払われます。

個人年金保険には解約返戻金があるため、財産分与の対象となります。

個人年金保険などの年金タイプのものについて、財産分与の対象になるかどうかは、次の記事で詳しく解説しています。

▶iDeCo・確定拠出年金・企業年金などは財産分与の対象になる?

ABOUT ME
弁護士 豊田 友矢
千葉県船橋市の船橋シーアクト法律事務所の代表弁護士 離婚・不貞慰謝料・遺産相続・交通事故・中小企業法務等の相談を多数取り扱っている。