年金が財産分与の対象になるのか?
年金の内、厚生年金については、財産分与ではなく、年金分割という手続をとれるので、財産分与の対象にはなりません。
他方で、厚生年金以外の、iDeCo・企業年金・確定拠出年金・個人年金などの年金については財産分与の対象となります。
以下、年金ごとに具体的に解説します。
国民年金について
国民年金については、夫婦がそれぞれの名義で加入し、離婚した後であってもそれぞれ年金を受け取ることができます。
なので、年金分割の対象にもならないですし、財産分与の対象にもなりません。とういうよりも、年金分割や財産分与をする必要がないです。
厚生年金について
厚生年金と以前の共済年金については、年金分割制度を利用して分割します。
ですので、別途財産分与の対象になることはありません。
iDeCo(個人型確定拠出年金)について
iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)も、毎月の給料等から支払って形を変えたものなので、原則として財産分与の対象になります。
iDeCoについても、①婚姻期間中の拠出金累計額または②別居時の評価額のうち同居期間に対応する分が財産分与の対象になると考えられます。
ただし、iDeCoは退職金と同じように一定の年齢までは受取ができないため、扶養的財産分与として考慮するか、その他の財産の財産分与を決めるときに「その他一切の事情」(民法768条3項)として考慮する方法をとることもあり得ます。
また、iDeCoの年金受け取り時期がだいぶ先になる場合には、財産分与の対象にせず、考慮もしないというケースもないとはいえません。
このように、iDeCoの財産分与については、明確な法律の規定や、確立した裁判例はなく、争いになることも多いです。
企業年金・退職年金(確定拠出年金・確定給付年金)について
企業年金・退職人金については、確定給付年金と確定拠出年金の2種類があります。
これらは、退職金と同様に給料の後払い的性質があることから、財産分与の対象となります。
確定給付年金については、別居時における脱退一時金のうち、婚姻期間に対応する分が財産分与の対象になります。
確定拠出年金については、①婚姻期間中の拠出金累計額または②別居時の評価額のうち同居期間に対応する分が財産分与の対象になります。
①に②のどちらで算定するかは、決まりがあるわけではなく、争いになることもあります。
個人年金について
個人年金とは、保険会社や銀行で販売されている保険商品です。これも、毎月の給料等から保険料を支払ってものなので、財産分与の対象になります。
生命保険などと同じように、別居時の解約返戻金額の内、同居期間に対応する分が財産分与の対象になります。
国民年金基金について
自営業者が加入できる国民年金基金は、一時金ではなく年金でしか受け取れず、脱退による一時金もないことから、財産分与としての金額を算定できません。
そのため、国民年金基金については財産分与の対象とはせずに、その他の財産の財産分与を決めるときに「その他一切の事情」(民法768条3項)として考慮できるにとどまります。
障害年金について
受給済みの障害年金が貯まった貯金は、生活費として使われることが予定されているから、財産分与の対象になり得ます。
障害年金を受け取る権利自体は、財産分与の対象にはなりません。また障害年金分を単独で年金分割することもできません。