財産分与

離婚する時、親に出してもらった家の頭金はどうなる?

親に出してもらった家の頭金はどうなる?

離婚の時、親が出した頭金は返してもらえる?

結婚してから自宅(マンションや戸建て)を購入するときに、一方または双方の親に頭金を負担してもらうケースがあります。

その後、離婚になり、自宅を売ることになったり、離婚相手が取得することになったときに、親から出してもらった頭金を返してもらうことができるのでしょうか?

法的には頭金をそのまま返してもらうのは困難!

法的なハナシをすると、頭金を「そのまま返してもらう」ことができるケースは、ほとんどありません。

納得できないと思う人も多いかとは思いますが、なぜでしょうか?

まず、頭金を「返してもらう」ということは、頭金を「貸した」と言えなければいけません。

ところが、実際には、自宅を購入するときに親が負担したお金が「貸した」ものであるといえることはほとんどありません。

贈与税の税制優遇もあり、子が家を購入するときに親が負担するお金は、多くの場合、あげるつもり、すなわち「贈与」されているのが実態です。

「贈与」なのであれば、あげたお金なので、それを「返してもらう」ことはできません。

貸したとしても誰に貸したのか?

もちろん例外もあり、中にはお金を「返してもらうつもり」で頭金分のお金を貸すこともあると思います。ところが、借用書などを作成していることは少なく、借りたものであることを証明できないことが多いのです。

また、誰に貸したかも問題になります。自分の親が、実の子ではなく、その配偶者のみに対してお金を貸すケースは多くはないでしょう。

そうすると、法的に頭金を返してもらえるのは、かなり例外的なケースだと言うことがわかるかと思います。

しかも、返してもらえるのは、あくまで頭金分のお金を貸した親であって、離婚した当事者ではありません。

返してもらえなくても特有財産にすることはできる

親が出した頭金分を「返してもらう」ことはできないとしても、その分をなかったことにするのは不公平でしょう。

そのため、親が出した頭金分を特有財産として、財産分与の対象から外す方法がとられます。

特有財産とは、夫婦の協力により築いた財産以外の財産です。親からの贈与もこれにあたります。

詳しくは▶財産分与で親からの贈与や借金はどうなる?の記事を参考にしてください。

親から贈与を受けたのが誰なのかは一応問題となる

親が頭金を負担したとして、この分が自分の子とその配偶者の双方に対する贈与だとしたら、その分は夫婦の共有財産に組み込まれるため、特有財産とはなりません。

ただ、税制の観点や常識的な観点からも、多くの場合、親は実子のみに対して頭金分を贈与したと考えられると思います。

そうすると、親が出した頭金に相当する部分は基本的に特有財産ということができます。

特有財産だとしても頭金の額を返してもらえるワケではない!

さて、親に出してもらった頭金が、実の子に対する贈与と認められて、その部分が特有財産になるとします。

例えば、4000万円の自宅を購入するときに、あなたは自分の親に400万円頭金を出してもらいました。それで、離婚の時にその家を売却することになりました。あなたは、頭金分の400万円を売却代金から多めにもらえるのでしょうか?

法律的な結論をいうと、必ずしも頭金全額がもらえるワケではありません。

頭金として出してもらった額がそのまま、戻ってくるわけではないのです。

特有財産の頭金分はどうやって計算するのか?

では、いくらもどってくるのでしょうか?頭金の支出が特有財産であったときに、その金額の計算の仕方は1つではありません。

その中で、よく使われているのは次のような方法です。

まず、①自宅の購入価格と②頭金の割合を出します。

例えば、4000万円で自宅を購入し、頭金がその内400万円、住宅ローンを3600万円組んだとします。

そうすると、自宅の購入価格のうち頭金の割合は10分の1になります。

次に、③離婚時点の自宅の時価を調べます。

自宅の時価が2000万円だとします。

そうすると、特有財産の割合は10分の1なので、200万円が特有財産部分になります。

つまり、家を売却したり、実の親が頭金を出していない方が家を取得する場合などは、親が頭金を出した方は200万円を取り戻せることになります。

先ほどの例で、自宅を2000万円で売却し、残っていた住宅ローン1000万円を返済し、1000万円が残ったとします。

このとき、1000万円の内800万円は、夫婦が二人で半分ずつ(400万円ずつ)にして、残りの200万円は親が頭金を出した方がもらうことになります。

まとめ

これまで見てきたように、親に出してもらった頭金をそのまま返してもらうことはできなくても、特有財産として財産分与の対象から外すことはできます。

そうすると、結果的に頭金を出したことは考慮されて、親が頭金を出していない配偶者よりも多めに財産を取得できることになります。

ただし、計算の仕方が簡単とは言えないので、わからない場合は弁護士に相談するのがおすすめです。

また、これまで見てきたのはあくまで法的な結論です。夫婦間で合意ができれば、これまで見てきた計算方法や結論とは違う解決をしても構いません。例えば、頭金全額をそのまま返すという合意をすることもできます。

いずれにしても、親が頭金を出しているときの離婚の財産分与はもめやすいので、事前によく考える必要があります。

ABOUT ME
弁護士 豊田 友矢
千葉県船橋市の船橋シーアクト法律事務所の代表弁護士 離婚・不貞慰謝料・遺産相続・交通事故・中小企業法務等の相談を多数取り扱っている。