財産分与

事実婚・内縁でも財産分与を請求できる|裁判例もある

事実婚・内縁で財産分与は請求できる?
この記事でわかること
  • 事実婚内縁でも財産分与は請求できる!裁判例もある
  • 事実婚内縁解消時に財産分与を請求する方法

事実婚・内縁でも財産分与は請求できる!裁判例もある

  • 財産分与の請求は事実婚・内縁でもOK
  • 事実婚・内縁とは?同棲や婚約はダメ?
  • 別に配偶者がいる場合はどうなる?
  • 解消した側からも請求できるのか?
  • 事実婚・内縁継続中に一方が死亡した場合は?
  • 事実婚・内縁解消時に財産分与しないでもいい?

財産分与の請求は事実婚・内縁でもOK

事実婚内縁(どちらも同じ意味です)は、婚姻届を出していないだけで、実質的には結婚しているのと同じ状態です。

そのため、事実婚・内縁解消時にも、離婚のときと同じように財産分与を請求することができます。

民法には離婚のときの財産分与についてしか規定がありませんが。実際に裁判例では、事実婚・内縁解消時に財産分与が認められています

事実婚・内縁とは?同棲や婚約はダメ?

財産分与が認められるのは、事実婚・内縁状態であったことが必要です。

単なる交際中の恋人同士同棲中の恋人・パートナーが別れたとしても財産分与は認められません。

また、婚約事実婚別モノです。婚約が成立していても、事実婚状態になったとは言えないので、婚約破棄による財産分与は原則として認められません。

事実婚・内縁が成立しているというためには、結婚している夫婦と同じくらいの夫婦生活がされていることが必要になります。

別に配偶者がいる場合はどうなる?

事実婚・内縁状態の当事者の一方または双方が既婚者である場合はどうでしょうか?

例えば、結婚して妻のいる男性が、妻が離婚してくれないからと、別の女性と長期間同居して夫婦同然の生活を営んでいる場合です。

民法は複数の人と同時に結婚すること(「重婚」といいます)を禁止しています(民法732条)。そうすると、法律上の妻がいる場合には、別の女性と夫婦的な生活を送っていても、重婚と同じような状態だから、正式な内縁関係とは認められないとも思えます。

ところが裁判例では、法律上の妻がいる場合であっても、法律上の婚姻関係が形骸化しており、重婚的内縁関係の保護の必要性が高い場合には、内縁の成立を認めています。この場合、財産分与も請求できることになります。

解消した側からも請求できるのか?

財産分与というのは、事実婚・内縁関係にあった当事者が協力して築いた財産を精算するためのものです。

つまり、客観的に事実婚・内縁関係が解消されている以上、どちらから解消をしたかを問わずに、財産分与は認められることになります。

さらにいえば、仮に正当な理由なく、一方的に事実婚・内縁を解消したとしても、財産分与を請求することはできるということになります。ただし、この場合、不当な事実婚・内縁の破棄として、慰謝料を支払う責任が生じることがあります。

事実婚・内縁継続中に一方が死亡した場合は?

結婚している状態で配偶者が死亡した場合には、もう一方の配偶者は相続人として財産を相続できます。

他方で、内縁関係や事実婚状態の場合、そのうち一方が亡くなった場合、そのパートナーは法定相続人にはなりません。つまり、パートナーの財産を相続できないのです。

このとき、相続ではなくて、死亡を原因とした事実婚・内縁の解消として財産分与を請求できなのかという疑問が出てきます。

この点について、実際に裁判所で争われましたが、内縁配偶者には死亡を原因とした内縁解消による財産分与は請求できないとされました(最高裁決定平成12年3月10日)。

事実婚・内縁解消時に財産分与しないでもいい?

なぜ事実婚を選ぶのか?夫婦関係がこじれたときに財産分与などお金を払いたくないからではないかと思う方もいるかもしれません。

でも、これまで見てきたように、事実婚・内縁であっても解消時には財産分与の請求が認めています。

そのため、法律上の籍を入れていなくても、事実婚のパートナーから財産分与を求められたら、支払をせざるを得ません。

もっとも、両者が納得した上で合意のもと財産分与をしないで分かれることができるのは、離婚の時と同様です。

事実婚・内縁解消時に財産分与を請求する方法

事実婚・内縁であれば離婚調停はない

法律上の夫婦が財産分与で揉めて話し合いがまとまらない場合、請求する方法として一番多いのは離婚調停の中で同時に財産分与についても協議する方法です。

他方で、事実婚・内縁状態というのは、どちらかが関係を一方的に切れば解消されるので、離婚調停は行ないません。

この場合、財産分与の請求をするために必要な手続は、財産分与単独の調停です。財産分与単独の調停というのは、本来、離婚時に財産分与をしなかった元夫婦が、離婚後に財産分与だけを求める場合に使うのが典型的です。

ただし、事実婚・内縁解消時に財産分与を求める場合にも利用することができるのです。さらに調停で話がまとまらない場合は、財産分与の審判も求めることができます。

別居した場合、財産分与に時効はある?

離婚の財産分与には、離婚から2年以内という期間制限があります。この期間制限のことは時効ではなくて除斥期間(じょせききかん)と呼びますが似たようなものです。

これについては、▶離婚後の財産分与は2年以内!時効じゃなくて除斥期間の記事を参照してください。

事実婚・内縁解消の際に、離婚時の財産分与の規定が適用される以上、この2年以内という除斥期間の規定も適用されます。では、いつから2年以内なのでしょうか?

事実婚・内縁については、事実婚・内縁が解消されたときから2年以内と考えるのが自然でしょう。そうすると、事実婚・内縁が解消されたのがいつなのかという問題が生じます。

事実婚・内縁状態というのは、夫婦に準ずる共同生活が必要です。そうすると、別居した時点で、事実婚・内縁は解消されたと考えるのが原則でしょう。

つまり、事実婚・内縁解消による財産分与は、別居時点から2年以内にする必要があるということになります。

 

ABOUT ME
弁護士豊田友矢
豊田 友矢
船橋シーアクト法律事務所の代表弁護士 千葉県弁護士会所属(第49837号) 交通事故・離婚・不貞慰謝料・遺産相続・中小企業法務等の相談を多数取り扱っている。