- 離婚時に財産分与する預貯金とは【いつから?いつまで?】
- 預貯金の分与割合は原則2分の1ルール
- 貯金がない場合の財産分与のやり方
- 貯金通帳を隠されたら、財産分与を請求できないのか?
離婚時に財産分与する預貯金とは
- いつまでの貯金を財産分与する?→別居時or離婚時
- いつからの貯金を財産分与する?独身時代に貯めた分は?
- 共働きでも専業主婦でも貯金を財産分与する
- 妻名義の貯金も財産分与対象になる
- 子ども名義の貯金も分けるのか?
いつまでの貯金を財産分与する?→別居時or離婚時
離婚で財産分与の対象になるのは「別居時点」の預貯金残高です。もし、別居していないなら「離婚時点」の預貯金残高です。
別居してから離婚までの間に、貯金が増えたり減ったりしても、その額は原則として財産分与の額には影響しません。
このような、いつの時点の預貯金を財産分与の対象にするかというのは、「財産分与の基準時」という問題です。基準時については、▶財産分与の基準時|いつの時点の財産を分けるのか?の記事で詳しく解説しています。
いつからの貯金を財産分与する?独身時代に貯めた分は?
別居時点の貯金残高が財産分与の対象になると説明しましたが、そのときの預金残高の全額が対象になるとは限りません。
財産分与の対象になるのは、夫婦が協力して貯めた財産だけなので、結婚前の独身時代に貯めた貯金は財産分与の対象にならないからです。
ただし、結婚前に貯めた貯金と、結婚後に貯めた貯金が同じ口座内で混ざってしまっている場合には、預金残高の内どの部分が結婚前に貯めたかわからなくなってしまうことがあります。
この場合には、結局、別居時の預金残高全額を財産分与の対象にすることが多いです。
共働きでも専業主婦でも貯金を財産分与する
離婚の際に財産分与をするのは、夫婦の一方が専業主婦(主婦)だったときに限りません。
夫婦共働きで、しかも夫婦それぞれ自分の貯金をしていたとしても、原則として、夫婦の貯金は財産分与の対象になります。
これは、結婚後に夫婦それぞれが稼いだ給料は、夫婦の協力によって稼いだものなので共有財産とされるからです。
妻名義の貯金も財産分与対象になる
離婚の際に、妻が夫に財産分与を請求したときには、請求された夫の貯金を分けるだけではありません。
財産分与を請求した側である妻名義の貯金ももちろん財産分与の対象になります。
例えば、妻がへそくりを貯めていた貯金額の方が、夫名義の預貯金よりも多い場合は、妻は夫の預貯金の分与を受けられないばかりか、逆に夫から財産分与の請求をされてしまうことになります。
子ども名義の貯金も分けるのか?
夫婦の子ども名義でお小遣い、お年玉、子のバイト代などを貯めた預貯金は、その子のものなので、普通は財産分与の対象になりません。
親族から子どもに贈与されたお金を子ども名義で貯めている場合も、財産分与の対象にならないのが通常です。
他方で、両親が子ども名義の口座で進学費用などを貯めていた場合は、夫婦の共有財産なので財産分与の対象になるのが通常です。
貯金の分与割合は原則2分の1ルール
財産分与の割合は、原則として2分の1になります。これを2分の1ルールと呼びます。
なので、夫名義の貯金が700万、妻名義の貯金が300万の場合、夫婦の貯金は合計1000万円です。このとき2分の1で財産分与をすると、夫婦それぞれが500万ずつ貯金を取得することになります。
つまり、夫名義の貯金700万の内の200万円を妻に渡す形になります。
貯金がない場合の財産分与のやり方
貯金がなくて、他の財産もない場合は、財産分与はありません。
問題になるのは、貯金はなくても、他の財産がある場合です。例えば、車、不動産、積立型の生命保険・学資保険などがある場合です。
この場合には、貯金以外の財産が財産分与の対象になります。
ところが、貯金を分けるのは簡単ですが、貯金以外の財産は簡単には2つに分けられません。もちろん、車や不動産を売却したり、保険を解約したりして、現金に換えれば分けることはできます。
でも、夫婦のどちらかが、車、不動産、保険を取得することを希望した場合には、取得できない配偶者にその分の貯金を渡して清算するしかありません。
このとき、夫婦にもともと貯金がない場合には、渡すものがないということになります。
そうすると、財産分与をするためには、車・不動産の売却、保険の解約をするか、離婚後の収入から分割で払ってもらう必要があります。
貯金通帳を隠されたら、財産分与を請求できないのか?
配偶者が預金通帳を隠したり、ネット銀行の口座を開示しない場合には、預貯金額がわからないため、財産分与の金額もわかりません。
ですので、別居する前に、預金通帳や金融機関からの通知を携帯のカメラなどで撮影しておいた方が良いです。
それでも相手の貯金が判明しない場合には、離婚調停で、粘り強く相手に預金の開示を求める必要があります。
それでも、相手が開示しない場合には、弁護士会照会という方法や、裁判所を通じて金融機関に確認する調査嘱託という方法をとることが考えられます。
ただし、全ての金融機関に対して調査嘱託を当てずっぽうで行なうことはできないので、少なくともどの金融機関に貯金があるかは把握しておく必要があります。