- 「親からの贈与」は財産分与の対象外
- 親から贈与されたことを証明する方法
- 「贈与」ではなく「親からの借金」だった場合は?
「親からの贈与」は財産分与の対象外
- 親からの贈与分→「特有財産」→財産分与しない
- 贈与されたお金を使い切ってしまった場合
- 贈与されたお金で購入したものが残っている場合
- 親からの贈与を頭金にして不動産を購入した場合は?
- 親から夫婦双方へ贈与された場合は?
親からの贈与分→「特有財産」→財産分与しない
離婚の財産分与の対象になるのは、夫婦で協力して築いた共有財産です。他方で、夫婦の協力とは無関係に取得した財産のことを特有財産といい、財産分与の対象にはなりません。
親から贈与された財産は、夫婦の協力とは無関係に取得した特有財産のため、財産分与の対象になりません。
なお、結婚前に贈与された場合だけでなく、結婚後に贈与された場合でも、夫婦の協力とは関係ないので、特有財産として財産分与の対象外です。
例えば、離婚時点で、夫名義の夫が結婚後に実親からもらった貯金がいくらあろうと、それは財産分与で分ける必要はありません。
贈与されたお金を使い切ってしまった場合
親から贈与されたお金は離婚時に分ける必要がないのはわかりました。では、離婚時点で、親から贈与されたお金を使い切っている場合はどうなるでしょうか。
結論から言うと、使ってしまった分を別の共有財産から返してもらうことはできません。
例えば、結婚後に夫が親から100万円を贈与され、その100間円円は婚姻中に生活費として全部使ってしまったとします。その後、収入が増えるなどして、離婚時には夫婦の預貯金が100万円貯まったとします。この場合でも、親から贈与を受けた100万円を夫婦で使ったことを理由に、離婚時に残っている預貯金100万円を夫が全部もらうことはできません。
なぜかというと、財産分与の対象外となる特有財産は、離婚時点でも残っている必要があるとされているからです。
贈与されたお金で購入したものが残っている場合
親から贈与されたお金で購入したものが残っている場合は、その購入したものも財産分与の対象になりません。
例えば、贈与されたお金で不動産や株式を購入したり、生命保険や個人年金の保険料を支払った場合です。
このような場合は、贈与されたお金が形を変えただけで特有財産のままなので、財産分与の対象にはなりません。
親からの贈与を頭金にして不動産を購入した場合は?
自宅不動産を購入する際に、親からの贈与されたお金を頭金にして、その後のローンの支払は結婚後の給料から払ったとします。
この場合、離婚時に不動産について、親から贈与された頭金分がまるまる残っていると考えることはできません。
あくまで、離婚時に現存する不動産の価値について、贈与された頭金の金額と不動産購入価格との割合に応じて、頭金分の割合だけを財産分与の対象から外すことを主張できるにとどまります。
少しわかりにくいと思いますが、▶親に出してもらった家の頭金は離婚時に返してもらえるのか?の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
親から「夫婦双方」へ贈与された場合は?
これまで親から贈与されたお金が財産分与の対象にならないと説明してきましたが、これはあくまで親から「実子にのみ」贈与された場合のハナシです。
ところが、一方の親から、「夫婦双方」に贈与されたといえるケースもありえます。
例えば、自宅や孫の学費等のために、夫または妻の親が、夫婦ふたりに対して贈与するケースです。このような場合は、贈与を受けたお金や、そのお金で購入したものは、夫婦の共有財産となります。
ただし、一方の親が、夫婦ふたりに贈与をしたのか、それとも実子にのみ贈与したのかは、明確ではないことが大半だと思います。
明確ではない場合に、どう考えるかは争いのあるところですが、自宅購入の場合には基本的に実子にのみ贈与したと考える方が自然かと思います。
親から贈与されたことを証明する方法
- 親から贈与されたことの証明が必要
- 贈与されたお金が残っていることの証明も必要
親から贈与さらたことの証明が必要
離婚時に夫婦名義の財産の中に、親から贈与された財産があることは、贈与を受けた側が証明しないといけません、
もちろん配偶者が認めてくれれば、証明する必要はありませんが、配偶者が贈与の事実を認めていない場合は、何らかの方法で証明する必要があります。
お金の贈与であれば、振込でなされている場合は、預貯金の取引履歴を提出することで贈与の事実を証明できるでしょう。
現金手渡しの場合は、その現金を贈与された時期に親が通帳からお金を引き出していることがわかる履歴と、贈与を受けた人がその現金を口座に入金した履歴を併せて証明することになるでしょう。
贈与されたお金が残っていることの証明も必要
親から贈与されたことだけを証明しても、その分を特有財産として財産分与から外すことはできません。
別居時点or離婚時点に贈与されたお金が残っていることも証明する必要があります。
例えば、贈与されたお金が入金された口座に、婚姻中に贈与以外の入出金がなければ、話は簡単です。その口座に残っているお金は、贈与されたお金ということになります。
問題なのは、贈与されたお金が入金された口座に、婚姻中の給料も入金されていたり、その口座から生活費などが引き出されている場合です。この場合は、別居時点or離婚時点に贈与されたお金がいくら残っているのかを証明することが困難なことが多いです。
例えば、贈与されたお金が100万円、その後に給料の入金と生活費の引き出しが繰り返されて、別居時点には残高が100万円だったとします。この残高100万円が、全て贈与されたお金が残ったものとはいえません。贈与されたお金と婚姻後の給与が混ざってしまっているからです。
このように、贈与されたお金が残っていることを証明できないと、財産分与の対象から外すことはできなくなってしまいます。
「贈与」ではなく「親からの借金」だった場合は?
親からの贈与ではなくて、親からの借金の場合はどうなるのでしょうか?
この場合は、財産分与の際にどのように処理するかは、ケースバイケースになるでしょう。借金したお金のうち使っていない分が残っているかどうかにもよります。
- 使っていない分は財産分与しない方法
- 使っていない分も借金額も共有財産にする方法
- 借金が贈与として認定されてしまう場合も
使っていない分は財産分与しない方法
考え方としては、借金したお金のうち使っていない分(または借金したお金で購入したもの)は特有財産として財産分与の対象から外し、借金額自体も財産分与の対象には入れないという方法があります。
使っていない分も借金額も共有財産にする方法
また、夫婦の生活のために借金をしている場合などは、借金したお金のうち残っている分(または借金したお金で購入したもの)を共有財産とした上で、借金額も財産分与のマイナスの資産として計上することも考えられます。
借金が贈与として認定されてしまう場合も
親からの借金というのは、借用書がないことも多く、借金であることが証明できずに、単なる贈与であると認定されることも多いです。
特に自宅購入のために一方の親から金銭的な援助を受ける場合には、税制優遇を受けられることもあり、ほとんどの場合は贈与されている実態があります。そのため、自宅購入時に親から受け取ったお金がある場合には、実際には借金であるという認識であったとしても、確たる証拠がない限り、裁判では贈与と認定されてしまう可能性が高いでしょう。
まとめ:親からの贈与と財産分与について
親からの贈与と財産分与についてのポイントをまとめると次のとおりです。
- 親から贈与されたお金は特有財産なので財産分与しない
- 贈与されたお金を使い切った場合、離婚時に返してもらえない
- 自宅購入時に親から贈与された頭金分の割合は特有財産にできる
- 贈与されたことと贈与されたお金が残っていることの証明が必要
- 贈与でなくて借金の場合は処理方法が複雑になる