財産分与

株式は離婚の財産分与の対象?NISAや投資信託についても解説

株は財産分与でどうなる?

株式は離婚時の財産分与の対象になる

株式も夫婦が稼いだ給料などが元手になっている限り、財産分与の対象になります。

他方で、結婚前に購入した株式は、夫婦で協力して貯めたものとはいえないので、財産分与の対象になりません。

このように結婚前に購入したものなど夫婦の協力とは無関係の財産を特有財産といいます。

NISA口座や投資信託も財産分与の対象

当然のことですが、株式だけでなく、投資信託、ETF、債券などの有価証券全般が財産分与の対象になります。

また、NISA口座(つみたてNISA含む)で購入している株式・投資信託についても、財産分与の対象になります。NISAは単に非課税の恩恵を受けられる口座に過ぎず、財産分与の対象から外す理由は一切ありません。

どの時点の株式が財産分与の対象になる?基準時のハナシ

財産分与の対象になる株式は、別居時点(別居しない場合は離婚時点)の株式です。

別居後に、夫婦の一方が株式を購入したとしても、それは財産分与の対象にはなりません。

このような、財産分与の対象となる時点を基準時と言います。基準時については、以下の記事で詳しく解説しています。

財産分与の基準時|いつの時点の財産を分けるのか?

株式の評価額はいつの時点なのか?

財産分与の対象になるのは、別居時点での株式ですが、その評価は別居時点でするわけではありません。

実際に、財産分与をする時点、つまり離婚時点の評価額を使います。

例えば、別居時点での株式の評価額が100万円、その後株価が値上がりして、離婚時点では200万円になった場合、財産分与の計算では株式の評価額は200万円になります。

ただし、別居時点と離婚時点の株価が大幅に変動している場合など、例外的にいくつかの時点の平均値を評価額とする場合もあります。

なお、株式を売却しないで財産分与をする場合は、仮に含み益があったとしても、将来売却した際に控除される税金分は差し引かないのが通常です。

株式を売却した場合の評価額は?税金分は引く?

別居前に株式を売却していれば、別居時点には預貯金等になっているはずなので、その預貯金が財産分与の対象になります。

別居後に株式を売却した場合には、売却時の税金控除後の手取額を財産分与の評価額とします。

非上場株式の評価額はどうする?

非上場株式については、市場の株価がありません。

そのため、①純資産方式、②配当還元方式、③類似業種比準方式、④収益還元方式などの方法で、株式の評価額を出すことになります。

離婚の財産分与で問題になることが多いのは同族会社でかつ小会社の場合ですが、このときは①の純資産方式を使うことがほとんどです。

この場合、会社の純資産額から債務と法人税などを控除した純資産価額を発行済み株式数で除した額を株式の評価額とします。

なお、非上場の株式の評価額の争いが大きい場合は、株式を現物分割する方法によって、解決することもあります。

株式が特有財産であることの証明について

最初に、結婚前に購入した株式は、特有財産として財産分与の対象にならないと説明しました。

ところが、結婚後に株式の売買を繰り返している場合、特有財産の証明が困難になることがほとんどです。

本来であれば、結婚前の株式を売却したお金で、結婚後に新たな株式を購入した場合には、その株式も特有財産となります。

ただ、実際には、株式を売却した上で、さらに証券口座に入金し、別の株式を購入することも多いです。

この新たな入金が、結婚後に稼いだ給料によりなされている場合、新たに購入した株式は、特有財産で購入した分と結婚後の給料で購入した分が混在することになります。そして、売買を繰り返すと、株価は常に変動することもあり、もはや特有財産で購入した割合は不明となります。

特有財産であると主張する方が、特有財産分を証明しないといけないのですが、このような場合は特有財産の割合を証明できないので、結局全ての株式が財産分与の対象となってしまいます。

ただし、割合は不明ではあるものの、株式の一部を特有財産で購入したこと自体は明らかである場合には、全ての株式を財産分与の対象とした上で、株式の財産分与の割合を2分の1から特有財産を支出した側に有利に修正することは、あり得ます。

 

ABOUT ME
弁護士 豊田 友矢
千葉県船橋市の船橋シーアクト法律事務所の代表弁護士 離婚・不貞慰謝料・遺産相続・交通事故・中小企業法務等の相談を多数取り扱っている。