養育費は何歳まで？18歳、22歳までや大学卒業までの例外ケースも解説

離婚後の養育費は何歳まで払うのでしょうか。受け取る側から見れば、何歳までもらえるのでしょうか？

養育費は20歳まで払うのが原則ですが、例外的に大学卒業時の22歳までや、高校卒業時の18歳までになることもありあます。

この記事では、養育費支払の終期について、大学進学、高卒就職した場合などパターン別に解説します。

離婚後に養育費は何歳まで払う？→原則20歳

養育費は20歳まで支払うのが原則

いきなり結論からいうと、養育費の支払期間は、原則として20歳までです。

さらに、20歳の何月までかというと、20歳になる誕生日の月までです。

このように、養育費の支払期間を原則どおり20歳までにするときは、離婚協議書などで「子が満20歳に達する日の属する月まで」と書かれることが多いです。

なぜ20歳までなのか？成年年齢と関係ある？

「養育費は20歳まで支払う」と定めた法律はありません。では、なぜ養育費の支払期間は20歳までが原則なのでしょうか？

まず、親子間には扶養義務があります（民法877条1項）。もちろん、この扶養義務は、離婚後に子どもと一緒に住んでいない親も負います。

そのため、子供に扶養が必要な期間は、扶養義務を果たすために養育費を支払う必要があるということになります。

昔から、家庭裁判所の実務や裁判例では、子どもが未成年の間は、経済的に自分の力だけでは生活できないから、一般的に扶養が必要だと考えられてきました。

そのため、養育費は成人になる20歳（令和4年3月までは成年年齢は20歳でした）まで支払う必要があるとされていたのです。

民法改正で成年年齢が18歳に下がったけれど・・・

令和4年4月1日に改正民法が施行され、成年年齢が18歳に引き下げられました。
【参照：法務省「民法の一部を改正する法律（成年年齢関係）について」】

この成年年齢の変更により、養育費の支払期間も子どもが成人になる18歳までになったのでしょうか？

結論からいうと、成年年齢が18歳になっても、養育費の支払期間は原則20歳までのまま変わらないことになりました。

法務省のウェブサイトでもそのように書かれています。
【参照：法務省「成年年齢の引下げに伴う養育費の取決めへの影響について」】

民法改正前に「成年まで払う」と約束済みの場合は？

では、成年年齢が20歳だった時代に、離婚協議書や離婚調停で、養育費の支払期限を「成年に達した時」のような文言で定めていたらどうなるのでしょうか？

合意したときには「成年＝20歳」のつもりで合意したのに、法改正で「成年＝18歳」になったことにより、養育費の支払期間も18歳までになるのでしょうか？

これも結論から言うと、成年年齢が20歳だった時代に合意済みの「成年」という文言は、「18歳」ではなく「20歳」のことを意味するとされました。
【参照：司法研修所編「養育費，婚姻費用の算定に関する実証的研究」56頁以下】

養育費が22歳までor大学卒業までになる場合

大学や専門学校に進学する場合

養育費は原則として20歳までといっても、実際に20歳で経済的に自立できる人がどれくらいいるでしょうか。

令和4年時点の大学・短大や専門学校への進学率は83.8％（大学に限ると56.6％）とされています。
【参照】文部科学省：「令和4年度学校基本調査の公表について」

つまり、多くの子どもが高校を卒業しても、就職せずに進学して、学生の状態にとどまることになります。

そして、大学や3年制または4年制の専門学校に進学する場合には、20歳になっても学生のままです。20歳になっても学生のままなら、経済的に自立することはできないことがほとんどだと思います。

それなのに養育費の支払いが20歳までだとすると、20歳になってから就職するまでの間の生活費に困ってしまいます。

そこで、大学を卒業するまで養育費の支払いを延長することはできないのでしょうか。

これについては、以下のように考えられています。

父親と母親で合意して22歳までにする場合

まず、父親と母親が子供の教育や将来について話し合い、子どもが大学を卒業する22歳まで養育費を支払うことを合意できれば、22歳まで養育費を支払うことになります。

養育費を22歳まで支払う条項の書き方

両親が合意し、養育費の支払を大学等卒業まで、つまり22歳の3月までにする場合の、典型的な条項の書き方は通りです。

「子が満22歳に達したあと最初に到来する3月まで」

ただし、子どもが3月生まれの場合には、

「子が満22歳に達する日の属する月まで」

とします。3月生まれの場合はこうしないと、23歳の3月までとなってしまうからです。

父親が大学進学を承諾していた場合

養育費を支払う側（父親のことが多い）が「20歳までなら払う」と主張し、養育費をもらう側（母親のことが多い）が「大学卒業まで払って」と主張して、話がまとまらない場合もあります。

どうしても合意ができなければ、家庭裁判所の審判や離婚裁判によって、養育費を何歳まで払うかを決めてもらうことになるでしょう。

裁判所に決めてもらう場合、基本的には原則通り20歳までとなりますが、養育費を支払う側が子供の大学進学を承諾していた場合には、22歳までとされることがあります。

そして、父親と母親が別居した時点で、子供が既に大学生である場合には、両親とも子供が大学に行くことを承諾していたと言えることがほとんどでしょう。

また、別居時点で、子供が大学受験期であり、両親が大学受験のための塾代や参考書代を出していたのであれば、大学に行くことを承諾していたと言えることが多いでしょう。

他にも、両親が高学歴、高収入または資産が多い場合で、子供が大学進学を希望している場合にも、22歳までとされることもあります。

ただし、離婚時点において、まだ大学受験まで期間がある場合には、いったん原則通り20歳までとされることも多いです。

浪人・留年した場合や医学部の場合

大学進学を目指したが、高卒で浪人している場合も、扶養が必要な状態であることに変わりはないので、養育費の支払は継続します。進学していなくとも就職していなければ、養育費が18歳で終わりになるわけではありません。

この場合、養育費の支払は原則通り20歳までとするか、支払う側が大学進学を承諾している場合には、浪人後に入学して卒業できた年の23歳の3月まで（１浪前提）とすることが多いですが、現役入学であれば卒業できた年である22歳の3月までにすることもあります。

留年した場合にも、同様に考えられるでしょう。

２浪以上や、2留以上の場合であっても、養育費を払う側が進学を承諾しているのであれば、原則として卒業時まで養育費を支払うことになるでしょう。ただし、浪人や留年してまで大学入学・卒業することは承諾していなかったと言われることもあり難しい問題です。ただ少なくとも現役で留年せずに卒業できた年までは払ってもらうことになるでしょう。

医学部など6年制の大学に進学することを承諾している場合には、大学卒業時の年齢まで養育費を支払うことが多いでしょう。

大学院に進学する場合

子どもが大学院に進学する場合、就職年齢は24歳以降になります。就職できるのは25歳や26歳以降になることも多いでしょう。博士課程に進むのであれば30歳近くになる可能性もあります。

この場合、養育費は何歳まで払い続けることになるのでしょうか？

もちろん、養育費を支払う側が子どものために同意してくれるのであれば、大学院を修了して就職するまで養育費を払い続けることも考えられます。

もっとも、両親が合意できずに、裁判所の審判や裁判で決める場合には、大学院修了（24歳以降）まで養育費の支払いを認めることはまずありません。

さすがに大学卒業以降は、大学院に行くとしても、もう十分大人なのだから自立すべきということでしょう。また、そもそも、これくらいの年齢になると、仮に扶養義務を前提に生活費を請求するとしても、自分自身で請求すべきで「養育費」の問題ではないともいえます。

重要！大学費用（学費）は養育費とは別！

子どもが大学や専門学校に進学する場合には、養育費の支払期間が延びるだけでなく、大学費用・専門学校費用（学費）の負担の問題も出てきます。

実は養育費には、公立高校の学費相当分しか考慮されていないのです。

通常、公立高校の学費よりも、大学や専門学校の学費の方が高額になります。そのため、養育費で考慮されていない大学や専門学校の学費も、養育費とは別に負担する必要が出てきます。

養育費が18歳までになる場合

高卒で就職する場合

高卒で正社員として就職した場合には、通常その時点で、自立して生活できる状態になったといえるので、扶養の必要性はなくなります。

そのため、養育費の支払は、高校を卒業する「18歳になったあとの3月まで」になります。

ただし、就職はしたが、正社員ではなくアルバイトなどで、いわゆるフリーターの場合などは、その収入にもよりますが、完全に自立したとはいえず、養育費の支払は原則通り20歳までになることもあります。

「18歳になる誕生日の月まで」とするのはおかしい！

まれに、養育費を払う側が、「18歳になる誕生日の月まで」支払うと主張することもありますが、既に説明したとおり、成年年齢と扶養義務の年齢は関係ないので、このような終期はおかしいです。

▶【質問】養育費は「18歳の誕生日」までと言われたのですが、おかしくないですか？

高卒で就職したことを理由に、養育費を例外的に18歳までにするのであれば、やはり「高校卒業時の３月まで」にするのが理にかなっているといえます。

「とりあえず18歳まで」で合意する場合の注意点！

子どもがまだ小さく、大学等に進学するかどうかわからない。高卒で就職するかもしれないというときに、養育費を支払う側から、公正証書などに記載する養育費の終期を、20歳まではなくて、18歳までにしておいて、もし大学等に進学した場合には、22歳まで延長するという文言にしたいと主張されることがあります。

もちろん、両親が納得した上で、このような文言にするのであれば良いですが、このような条項だと、18歳以降に養育費の未払いがあった場合、強制執行に支障をきたす可能性があります。

18歳・20歳・22歳までの養育費総額の比較

養育費の支払は原則20歳までですが、場合によっては大学卒業時の22歳までや、高校卒業時の18歳までになります。

このように養育費の支払期間が変わることによって、養育費の支払総額はどれくらい変わるのでしょうか？

父親の給料収入が年600万円、母親が年100万円、子供が高校1年生の15歳であるときに離婚したケースで、養育費の支払総額がどれくらい変わるか見てみましょう。

18歳まで養育費を支払う場合

先ほどの例では、養育費算定表によると、養育費は月6～8万円の上の方になります。ここでは月8万円と仮定します。

そうすると、養育費月８万円を18歳まで3年間払うことになるので、養育費総額は、

になります。

20歳まで養育費を支払う場合

先ほどの例で、原則どおり20歳まで養育費を払う場合は、

になります。

22歳まで養育費を支払う場合

先ほどの例で、大学に進学するなどして、22歳まで養育費を払う場合は、

になります。ただし、大学等に進学する場合には、この養育費に加えて、学費等も負担する可能性があります。

再婚などで養育費の支払いが終わることも！

ここまでは、養育費は「何歳まで？」というように、あくまで子どもの年齢に注目して、養育費の支払いがいつ終わるのかを解説しました。

ところが、実際には子どもの年齢以外の理由で、養育費の支払い義務がなくなったり（養育費がもらえなくなる）こともあります。

よくあるのは、父親または母親が再婚した場合です。

これについては、▶再婚したら養育費は打ち切りや減額になる？様々なパターン別に解説　支払わない方法は？の記事を参考にして下さい。

まとめ：養育費は何歳まで払うのか

これまで見てきたように、養育費の支払い義務は原則20歳までです。

成年年齢が18歳になりましたが、この原則は変わりませんでした。

子どもが大学等に進学した場合は、養育費を22歳までにするのかは問題になります。両親で話し合いをして合意できればそれが一番良いですが、話がまとまらない場合には、裁判所に決めてもらうしかありません。

裁判所に決めてもらう場合、大学に進学すれば必ず22歳までになるわけではないことは注意しましょう。