財産分与

離婚後に夫が住宅ローンありの家に住むときの財産分与の方法

夫が住宅ローンありの家に住むときの財産分与

夫が住宅ローンありの家に住み続けるには・・・

夫が離婚後に住宅ローンありの持ち家に住み続けたいというケースもあります。

夫の職場の近くに自宅を購入した場合、夫の実家の近くに自宅を購入した場合、夫が親権を取得する場合などでは、自宅を売却しないで夫が住み続けるというのも選択肢の1つになるでしょう。

現代の日本社会では、徐々に共働きで妻も正社員であることも増えてきているものの、未だに夫の方が妻よりも収入が高額なケースが多いです。

そのため、住宅ローンの残った自宅に妻が住み続けるよりは、夫が住み続ける場合の方が比較的簡単なことの方が多いです。

一番簡単!住宅ローンも家も夫の単独名義の場合

住宅ローン名義と家の名義が両方とも夫の単独名義で、妻が連帯保証人にもなっていない場合には、一番処理が簡単です。

もし、離婚後に夫が家に住み続けたいときに、このような名義になっていれば幸運だと思ってください。

この場合、夫がローンを支払い続けるだけで、夫は自宅に住み続けることができます。

しかも、夫にとってのみならず、妻にとっても幸運なのです。妻は離婚後に銀行からローンの返済を求められることはありません。

このような場合、ローンも自宅名義もそのままにしておいて構わないので手続も簡単です。

夫が取得した自宅の価値分の財産分与は必要になる

自宅がオーバーローンであれば、通常、他の預貯金だけを財産分与すれば問題ありません(ただ厳密に言えば、オーバーしているローン分の負担を財産分与で考慮すべきかどうかという問題はあります)。

一方、自宅がアンダーローンの場合は、自宅の時価-ローン残高分の価値を夫が取得することになるので、その分金銭で妻に財産分与するのが公平です。

例えば、自宅の査定額3,000万円、ローン残高2,000万円の自宅夫が取得して住み続ける場合、妻には預貯金などで1,000万円分の財産を分与する必要があります。

住宅ローンがペアローンの場合の財産分与の方法

ペアローンの場合に夫が住み続けるには、妻分のローンを夫が引き受ける必要があります。

一番わかりやすいのは、妻のローン分を夫が借り換えて、全て夫名義のローンにする方法です。

この場合、当然ですが銀行の審査が必要になります。夫婦ともに同じくらいの収入があり、妻もかなりの額を借り入れていた場合、これを夫が一人で負担する借り換えは、収入額との関係でなかなか審査が通らないことも多いです。

審査さえ通るのであれば、妻の分のローンの借り換えを前提に、妻の自宅の共有持分を夫に移すことになります。

これで離婚後は、ローンも自宅名義も夫の単独名義になり、夫婦双方が後のトラブルを防ぐことができます。

借り換えの審査が通らない場合はどうするか・・・

審査が通らずにやむを得ず、妻のローン名義をそのままにしておいて、事実上夫が妻の分も返済する方法も一応考えられます。

ただ、このような方法には離婚後も形式上はローンを追い続けることになる妻の納得を得ることが難しいことも多いです。

また、妻の納得が得られたとしても、妻と銀行との間の住宅ローン契約は、妻が自宅に住んでいることが要件となっている場合もあり、妻が自宅を出たことが発覚した場合にローンを一括請求される可能性もゼロではありません。

しかも、ペアローンの場合、自宅の名義も夫婦の共同名義(共有)になっていることが通常です。

この場合、銀行との契約の関係で、妻分のローン完済前に妻分の共有持分を夫に移すことができないのが通常です。そのため、将来的にローンを完済した際に持分を移す合意をしておく必要もあるでしょう。

ただ、この方法は、後にトラブルが生じることもあるので、あまりおすすめできません。

ペアローンで借り換えもできない場合には、離婚時に自宅を売却してしまった方が良いケースも多いでしょう。

夫の単独ローンだが妻が連帯保証人の場合

ローンが夫の単独ローンであっても、妻が連帯保証人になっている場合には、妻側としては連帯保証人から外れたいと考えるのが通常です。

離婚後に、自宅を夫が取得し、夫が住み続けるのであれば、妻が保証人としての責任を負い続けるのは納得がいかないことが多いでしょう。

そのため、離婚時に妻を連帯保証人から外してもらうように銀行と協議することになります。

ただし、別の連帯保証人を付けないと銀行は妻を連帯保証人から外してくれないことがほとんどでしょう。

夫の親族の中に安定した収入があり、かつ、連帯保証人になることに合意してくれる人がいる場合には、その人に連帯保証人になってもらうことがあります。

夫一人で住宅ローンと養育費を払い続けられるか?

離婚前は夫婦共働きで住宅ローンを支払うことができていても、離婚後に夫1人の収入から、これまで通りの住宅ローンと養育費を支払い続けるのは困難になるケースもあります。

このような場合は、無理して自宅を維持せずに売却した方が良いケースも多いです。

住宅ローンの支払を滞納した場合には、自宅は差し押さえられて競売になってしまいます。仮に、住宅ローンを支払い続けても、養育費を滞納したことにより元妻から給料を差し押さえられた場合には、結局住宅ローンの支払は困難になってしまいます。

そのため、本当に離婚後も離婚前の自宅に住み続けるのかは慎重に考えた方が良いでしょう。

 

ABOUT ME
弁護士 豊田 友矢
千葉県船橋市の船橋シーアクト法律事務所の代表弁護士 離婚・不貞慰謝料・遺産相続・交通事故・中小企業法務等の相談を多数取り扱っている。