養育費

養育費を払わない男の心理とは?約束しないケースと約束を破るケース

養育費を払わない男の心理とは?

離婚後に養育費を払わない男(父親)の割合は、7割以上です。

これについては、→離婚後に養育費を払わない人の割合は7割?!の記事を参考にしてください。

こんなに養育費を払わない男の心理はどのようなものなのでしょうか?

そもそも養育費の取り決めをしていない場合と、取り決めをしたのにそれを破る場合に分けて考えてみましょう。

養育費の取り決めすらしない男の心理

厚生労働省の調査(令和3年度全国ひとり親世帯等調査)によると、離婚した母子家庭の約半分は養育費の取り決めをしていません。

そして、母親が養育費の取り決めをしなかった理由は、「相手と関わりたくない」、「相手に支払う意思がないと思った」というのがほとんどです。

(参考:令和3年度全国ひとり親世帯等調査:表17-⑵-11-3母子世帯の母の養育費の取り決めをしていない理由)

このうち「相手と関わりたくない」という理由は、母親の本心からの希望によるものと、元夫である父親の言動が主な原因となっている場合があります。

いずれにしても、養育費の取り決めをしない男の心理は次のようなものがあります。

母親の思いを尊重したつもりという心理

まずは、離婚後には子どもとも関わってほしくないという要望を、母親(元妻)から父親(元夫)に明確に、または暗に伝えられた場合です。

母親としては、養育費の取り決めをするのであれば、当然父親も子どもに会いに来るだろうし、子育てに何らかの形で参加してくると考えるはずです。

それがどうしてもイヤで、むしろ母親の方が本心から養育費の取り決めを希望しないパターンもあります。

これに対して、子育てや離婚条件に関する母親の思いを尊重したいと考えている父親もいます。別に母親のためを思ってそう考えている人だけでなく、離婚さえできれば、ほかの条件は母親の希望どおりでも良いと考えている父親もそれなりにいるのです。

本来であれば、母親に言われたからといって、「それなら子どもとは関わらないようにしよう。養育費も払わなくていいし」と考えるのは、無責任ともいえます。

もっとも、この場合、父母が本心から合意していることが多いので、将来的にトラブルになることはあまりありません。

特に、母親の収入が比較的高い場合や、母親の実家が裕福である場合などは経済的には子育てに経済的な問題が起きることもありません。

それでも、子どもにとって父親に会えなくても良いのかは別の問題とはいえますが・・・・

母親の思いにしぶしぶ応じるという心理

母親が、本心から父親に関わってほしくないと考えて、それを伝えている点は、先ほどと同じです。

違うのは、本心としては子どもと会いたいし、子育てに関わりたいし、そのためにも養育費も払いたい。それでも、やむを得ず、子どもと関わるのを諦めている点です。

ちなみに、本来は養育費の支払と子ども会うことは無関係なのですが、母親の方から子どもと会わないように強く言われているケースでは、養育費の取り決めがされることはあまりありません。

このときの父親の心理としては、やむを得ず子育てに参加することをあきらめているということでしょう。それは離婚するために母親の出す条件をのまざるを得ないという場合だけでなく、現実問題として母親が子ども面会を強く拒否しており、面会が実現できない場合などがあります。

あえて積極的に関わらないようにする逃避する心理

父親の方から積極的に、子どもと関わることと、養育費の支払をすることから逃避しようとするケースがあります。

これは、面倒なことから逃げ出したいという責任感の欠如からくる場合が多いです。

他にも、子どもと会ってしまうと逆に毎日会えないのが寂しい・不満に思ってしまうから、全く関わらないようにして子どものことも忘れてしまいたいという現実逃避・自己防衛的な心理が働いている場合もあります。

子育てのことは自分には関係ないと思う心理

これは無責任タイプです。子育て自体に関する責任感や義務感の薄さから、養育費を支払うことについても義務感を感じないタイプです。

離婚前・別居前から子どものことは元妻である母親に任せっきりだった場合に多いです。

子どもの教育などにもあまり興味がなく、子どものことは母親の仕事だと考えています。そのため子どもを育てるのにどれくらいお金がかかるかも理解しておらず、自分の生活費を切り詰めてまで養育費を払おうとしません。

自分の立場が上であるという心理

結婚生活中から、常に自分の方の立場が上であるという意識がある父親もいます。モラハラが日常的にある夫婦に多いです。

この場合、父親は、離婚したからと言って母親(妻)と子どもについて対等な立場で話し合いや協力をする気はさらさらありません。

自分のやり方に従っていればいいんだという心理です。養育費も払ってもどうせ無駄遣いをする、払っても無駄などと考えます。払う場合であっても「しかたない、払ってやるか」とかとにかく上から目線での対応で、養育費を何に使うのか「内訳を出せなど」と言ってきたりします。

また、母親が養育費を請求してきたとしても、ちょっと話せば、言い負かすことができるとも考えていますし、実際に言い負かします。

このような父親が相手だと、養育費をもらい続けるのも精神的に強い負担がかかるため、母親の方からやむを得ず「相手と関わりたくない」から養育費はいらない、取り決めはしなくていいとなってしまうことがあります。

相手を支配しようとする心理

次は、養育費の支払いを理由に相手を支配しようとする心理です。

例えば、養育費を払うことと引き換えに相手に何らかの行為を要求したり、子どもと会う日時・回数などを勝手に指定するなどしたりします。

この場合、養育費を振り込みではなく手渡しで渡そうとしてくることもあり、それを拒むと養育費を払ってもらえないこともあります。

このような状況下では、養育の支払いを受けるよりも、支配からの解放を重視して養育費の取り決めをできない母親もいます。

相手が許せないという感情的な怒りの心理

次は、怒りの心理です。子どもの生活がどうこうよりも、元妻である母親に対する怒りが先行するタイプです。結婚生活中のいざこざなどによる怒りで感情的になり、元妻の要求に一切応じたくないというような考えです。

別にお金を渡したくないわけでもなく、子どものことを考えている人であっても、怒りで冷静な判断ができなくなってしまうことがあります。

この場合、理性的・理論的な理由で養育費を払わない訳ではありません。

嫌いな相手、許せない相手にお金を渡すのがイヤだという感情的な理由です。

例えば、妻側(母親)の浮気が原因で離婚に至ることも、珍しいとことではありません。

この場合、父親からしたら、妻(母親)が全て悪くて離婚になったと考えても不思議ではないですし、一切の愛情がなくなって憎しみだけが残っても不思議ではありません。

このとき、理論的に考えれば、養育費は子どものための費用で、妻が浮気したかどうか、悪いかどうかとは関係ないのですが、怒りから養育費を払うことを一切拒むこともあります。

また、客観的に見れば母親に離婚の原因がない場合でも、怒りの感情から養育費の支払いを拒否するケースも多いです。

例えば、親権をとれないなど離婚条件についての不満、離婚協議中の相手の態度への不満、子どもとの面会の頻度や方法に納得がいかないことに対する不満などから相手への怒りが募ってしまう場合です。真っ当な猪狩の場合もあれば、言いがかりのような逆恨みの場合もあります。

冷静な悪意からくる嫌がらせをしようという心理

悪意を持って払わない、嫌がらせタイプです。怒りタイプと似ていますが、怒りタイプが感情的になって支払わないのに対し、悪意タイプはむしろ冷静なことが多いです。感情的になって怒ると言うよりは、とにかく冷静に相手の嫌がることをして困らせようという心理です。

場合によっては、養育費を払わないか減額することを目的に、あえて転職して年収を下げる、退職して無収入になるようなことまですることがあります。

他にも、子どもまだ小さく働けない母親に対して、養育費を払わずに生活を困難にさせようとする場合もあります。

そこまで相手に対して苦痛を与えようという恨み・憎しみの原因はケースバイケースです。

お金がもったいないという心理

これまで見てきたのとはとは違い、相手への怒り・恨みというよりは、お金に対する執着・細かさから、できる限りお金を使いたくないという心理です。

自分で稼いだお金は自分の自由に使いたいという心理から、養育費の支払に難色を示すタイプもあります。

このように、お金を養育費に使いたくないという心理には、節約家タイプと浪費家タイプの2種類があります。

節約家タイプは、収入額に比較すると、結婚中も子どもを含めた家族の生活費を抑えているため、収入ベースの養育費の支出に納得ができないと考えることが多いです。

例えば、年収2000万円世帯の人が、離婚前は節約して年収500万円世帯の平均的な生活費で生活し、残りを貯蓄してきた場合などです。

浪費家タイプは、もともと家に入れるお金が少なく、ほとんど自分の好きなようにギャンブル、飲食費、嗜好品などにお金を使ってきた場合です。この場合、父親は、離婚したからといって、これまでより多くの額を養育費として渡すのはいやだという心理が働きます。

養育費の取り決めを守らなくなる男の心理

これまで見てきたのは、養育費の取り決めをしない心理でした。

では、次に養育費の取り決めはしたけれども、途中から養育費を払わなくなってしまう心理について解説します。

自分の生活を優先したくなる心理

離婚してしばらくすると、離婚後の生活になれてきます。ところが父親・母親・こどもが全員同居して生活していたときよりも、離婚して別居して生活する方が全員分の生活費(特に家賃・光熱費・食費など)は高くなります。

そのため、離婚前の生活よりも、離婚後に養育費を払って残りで生活する方が自由に使えるお金は少なくなります。

また、離婚前は母親が家族全員の食事を作っていた場合、離婚後は外食が多くなって父親の食費が増えることもあります。離婚してから飲みに行く回数が増えることも珍しくないでしょう。

このため、だんだんと離婚後の生活費が足りなくなってきます。そして嫌気がさしてきて、自分の生活費を優先して使いたいという心理から、養育費の支払を途中からしなくなることがあります。

子どもへの責任感が薄れていく心理

離婚時点では子どものことを考えて養育費を支払う意思があった父親も、離婚後子どもとふれあう頻度が減少するにつれて、子どもの成長に対する責任感が薄れていく場合があります。

この場合、子育てへの責任感の減少から、養育費の支払をする責任感・義務感が薄れていき、養育費の支払を途中からしなくなることがあります。

養育費の使い道を疑いはじめる心理

離婚時点では養育費の支払いに合意した場合であっても、実際に養育費の支払をしてみると、離婚前よりも自分の生活が厳しくなることに気づきます。

このとき、母親と子どもは自分より良い生活を送れているのではないか?こんなに養育費を払う必要はないのではないか?こんなに養育費が必要なのは母親と子どもが無駄遣いをしているからではないかと考えるようになることがあります。

そして、母親の養育費の使い道、使い方を疑いはじめ、ついには養育費の支払を止めてしまうことがあります。

再婚相手との生活を重視するようになる心理

離婚後に再婚をして、再婚相手や再婚相手との子どもの生活を重視するようになる場合です。

この場合、養育費の支払いを継続すると再婚相手やその子どもとの間の生活が経済的に厳しくなり、新たな家族との生活を優先したいという心理から、養育費の支払いを止めることがあります。

法的には、離婚後に再婚し、特に再婚相手との間に子どもが生まれた場合には、養育費の減額を求めることができる可能性があります。

これについては、

再婚したら養育費は打ち切りや減額になる?支払わない方法は?

の記事を参考にしてください。

ところが、このような減額の手続を踏まずに、新たな生活を優先したいという心理から、いきなり養育費の支払を打ち切る父親もいます。

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弁護士豊田友矢
弁護士 豊田友矢
船橋シーアクト法律事務所の代表弁護士 千葉県弁護士会所属(第49837号) 交通事故・離婚・不貞慰謝料・遺産相続・中小企業法務等の相談を多数取り扱っている。