養育費

離婚後に養育費を払わない人の割合は7割?!

養育費を払わない人の割合

父親の7割以上が離婚後の養育費を払っていない!

離婚後に養育費をきちんと払っている父親の割合はどれくらいだと思いますか?

最新の厚生労働省の調査(参考:令和3年度全国ひとり親世帯等調査)によると、調査時点で養育費の支払いを受けている母子世帯(離婚または未婚)の割合は、なんと28.1%しかありませんでした。

【母子世帯の母の養育費の受給状況】

養育費の受給状況 総数 割合
現在も受けている 303,252 28.1%
過去に受けたことがある 153,444 14.2%
受けたことがない 613,567 56.9%
不詳 8,950 0.8%

(参考:令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告表17-3-1)

つまり、養育費を継続的にもらっている母親は3割以下ということになります。ということは、養育費を払っていない父親の割合は7割以上ということです。

父親の5割以上は養育費を一度たりとも払っていない!

養育費を払っていない父親が7割以上というのは、「調査の時点」で払っていない父親の割合が7割以上という意味です。この7割の中には、過去には養育費を払っていたが、途中で払わなくなった父親も含まれています。

では、養育費を一度たりとも払っていない父親の割合はどれくらいでしょうか?

もう一度先ほどの調査結果を見てみましょう。

養育費の受給状況 総数 割合
現在も受けている 303,252 28.1%
過去に受けたことがある 153,444 14.2%
受けたことがない 613,567 56.9%
不詳 8,950 0.8%

(参考:令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告表17-3-1)

これによると、母子世帯のうち、離婚後に一度も養育費の支払を受けていない母親の割合は56.9%となっています。

つまり、父親の5割以上(56.9%)が、養育費を一度も払っていないということになります。

母子世帯の5割はそもそも養育費の取り決めをしていない

なぜ、父親の56.9%が養育費を一度も払っていないのでしょうか?

ここで養育費の取り決め(口頭での約束も含む)の有無についての厚生労働省の調査結果を見てみます。

【母子世帯の母の養育費の取り決め状況等】

養育費の取り決め(書面or口頭) 総数 割合
取り決めあり 504,086 46.7%
取り決めなし 552,117 51.2%
不詳 23,011 2.1%

(参考:令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告表17-2-1)

この調査結果によると、母子世帯(離婚orもともと未婚)のうち、養育費の取り決めをしているのは46.7%に過ぎず、51.2%は取り決めをしていないことがわかります。

この養育費の「取り決め」には、協議書などの書面だけでなく、口頭での約束も含みますので、それすらしていない51.2%のケースでは、養育費が払われているケースはほとんどないはずです。

つまり、半分以上の母子世帯が養育費の取り決めをしておらず、そのため養育費の支払を一度も受けていないというのが現状ということになります。

取り決めをしても4割の父親は途中で払わなくなる?

では、養育費の取り決めさえすれば、父親は養育費を払い続けているのでしょうか?

次に、厚生労働省の調査結果のうち、養育費の取り決めをしている世帯の養育費の支払状況を見てみましょう。

【母子世帯の母の養育費の受給状況】

養育費の取り決めをしている世帯 総数 割合
総数 504,086
現在も受けている 290,837 57.7%
過去に受けたことがある 108,574 21.5%
受けたことがない 97,001 19.2%
不詳 7,674 1.5%

(参考:令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告表17-3-7)

この調査結果によると、養育費の取り決めをした世帯に限っても、養育費の支払を継続して受けている割合は57.7%に留まっています。

また、一度も養育費を払っていない父親が19.2%もいます。

これらの調査結果からわかることは、養育費の取り決めをしたとしても4割以上の父親は養育費を最初からまたは途中で払わなくなっているということです。

調停調書や公正証書で決めた場合の支払率はもっと高い?

さきほど、養育費の取り決めをした場合でも、4割の父親は養育費を払わなくなると説明しました。

ただし、ここでいう「取り決め」には、口頭での取り決めや、強制執行できない書面での取り決めも含まれています。

また、それ以外にも、元夫婦間で合意できず、または相手が話し合いに応じないor調停を欠席するなどによって、裁判所が審判や判決などの形で強制的に決めたものも含まれています。

やはり約束を破ったら強制執行されてしまう書面で取り決めをした方が支払率は高いでしょうし、裁判所による強制的な取り決めよりも、一応渋々だとしても任意に承諾した取り決めの方が支払率は高いはずです。

そのため、調停調書や強制執行可能な公正証書で養育費の額を合意した場合には、もっと養育費の支払継続率は高くなると考えられます。

養育費の取り決めの種類とその割合について

ここで、母子世帯の養育の取り決め状況についてみてみましょう。

養育費の取り決め(書面or口頭) 総数 割合
取り決めあり 504,086 46.7%
取り決めなし 552,117 51.2%
不詳 23,011 2.1%

この「取り決めあり」のうち、その取り決めの種類をみてみましょう。

取り決めの種類 総数 割合
何らかの取り決めあり 504,086
文書での取り決め 386,251 76.6%
 (裁判所における取り決めor強制執行可能な公正証書) 302,356 60.0%
 (その他の文書) 83,895 16.6%
文書なしで取り決め 116,653 23.1%
不詳 1,181 0.2%

このように養育費の取り決めをしている母子家庭の内、強制執行可能な文書(調停調書、執行認諾文言付き公正証書など)で取り決めをしている割合は60%に過ぎません。

先ほど、養育費の取り決めをしても、養育費が継続して払われるのは約6割に過ぎないことがわかりましたが、そもそも強制執行可能な文書での取り決め自体が約6割しかないのです。

そうすると、調停調書や公正証書などでしっかりと取り決めをして、しかも審判や判決ではなく、双方の合意の下に取り決めている場合には、養育費の支払継続率はかなり高いのでは(8割を超えるくらいあるのではないか・・・)ないかということがわかります。

まとめ

これまでみてきた調査結果からすると、養育費を払わない人の割合についてつぎのことがわかります。

  • 離婚後に養育費を払い続けている父親の割合は約3割。約7割の父親が養育費を一度も払っていないか、途中で支払いを止めている。
  • ちなみに、養育費を一度も払っていない父親の割合は5~6割である。
  • ただし、そもそも養育費の取り決めをしていない母子家庭が約5割ある。
  • とういうことは、養育費を払っていない父親のかなりの割合が養育費の取り決めをしていないことになる。
  • つまり、養育費を払う約束をしたけど払わないとか、裁判所に養育費を払うよう命令されたのに払わないという父親の割合はそこまで多くなさそうである。
  • また、養育費の取り決めをしたケースでも、強制執行できる書面で取り決めた割合は6割程度しかない。そして、この強制執行できる書面で。しかも合意の下、養育費の取り決めをした父親に限れば、養育費を支払い続けている割合は、それなりに高い(この点についての調査結果はないが、8割は超えるのではないか・・・)。

そうすると、養育費の支払をできる限り継続してもらうためには、やはり強制執行可能な文書で、取り決めをするのが大事ということがわかります。

ABOUT ME
弁護士 豊田 友矢
千葉県船橋市の船橋シーアクト法律事務所の代表弁護士 離婚・不貞慰謝料・遺産相続・交通事故・中小企業法務等の相談を多数取り扱っている。