民事裁判

簡易裁判所とは?地方裁判所との違いについても解説

簡易裁判所とは?地方裁判所との違い

簡易裁判所とは?

簡易裁判所とは、簡単に言うと、規模の小さい紛争を早く解決するための裁判所です。

裁判所で利用できる手続というと、まずは「被告は、原告に対し、〇〇円を支払え。」という判決を求める手続をイメージすると思います。このような判決を求める手続を「民事訴訟」といいます。

地方裁判所でこのような民事訴訟の手続を利用すると、相当な時間がかかることがあります。これについては、民事裁判ってどれぐらいの期間がかかるの?を参照してください。

簡易裁判所では、取り扱う事件の規模が小さい分、より早く、かつ、柔軟に紛争を解決することができるようになっています。

今回は民事訴訟手続における簡易裁判所と地方裁判所の違いについてご説明します。

なお、簡易裁判所では、民事の中でも訴訟とは別に紛争を解決するためのいろいろな種類の手続が設けられていますし、刑事事件も取り扱っていますが、この点はまた別途ご説明します。

簡易裁判所と地方裁判所の違い

簡易裁判所の方が数が多い

簡易裁判所と地方裁判所の1つ目の違いは、その数です。

簡易裁判所の方が地方裁判所よりも数が多いです。

千葉県内でいうと、地方裁判所は、千葉、佐倉、一宮、松戸、館山、八日市場、佐原の8か所にあります。

簡易裁判所は、地方裁判所のある8か所に加えて、市川、東金、銚子の3か所にも設置されており、合計で11か所にあります。

裁判は、平日9時~17時の間しか行われませんので、一般の人が裁判所に行くことはそれだけでとても負担になります。

住んでいる場所によっては、地方裁判所に行くよりも近い場所に簡易裁判所があります。

例えば、船橋市に住んでいる人は、地方裁判所であれば千葉市まで行かないといけないですが、簡易裁判所でよければより近い市川市の裁判所まで行けばよくなります。

そのため、規模の小さい紛争であれば、より自宅から近い簡易裁判所を利用することができるということです。

簡易裁判所で扱う事件は請求金額140万円以下

簡易裁判所では、相手に支払を求める請求金額が140万円以下の事件だけを取り扱っています。取り扱う事件の規模が小さい分、早く、かつ、柔軟に紛争を解決することを目的としているからです。

他方で、請求金額が140万円以下の事件は全て簡易裁判所で扱うのかというと、そうではありません。

例えば、不動産に関する訴訟は、請求金額が140万円以下であっても、簡易裁判所と地方裁判所の両方で取り扱っています。不動産に関する訴訟とは、例えば建物を相手に貸したけど、賃料を払わなくなったので、出て行って欲しいというような事件のことをいいます。

また、規模が小さい事件であっても、行政訴訟(国や地方公共団体を相手にして、行政処分の取消しを求める訴訟などのことです。)は、簡易裁判所で取り扱うことができません。

さらに、地方裁判所の中でも、行政訴訟は千葉市にある千葉地方裁判所の本庁でしか取り扱っていませんので、注意しましょう。

140万円以下の事件を地方裁判所へ訴えると「移送」

簡易裁判所が取り扱うことになっている事件(請求額140万以下の事件など)の訴状を地方裁判所の受付に持っていった場合、地方裁判所には取扱権限がないので、簡易裁判所の受付に訴状を提出するように案内されると思います。

では、その案内を断って地方裁判所の受付に提出した場合、どうなるでしょうか?

地方裁判所は、原則として、簡易裁判所に事件を送ってしまいます。これを「移送」といいます。

事件を地方裁判所から簡易裁判所に移送するという手続が必要になる分、初回の期日までの時間が長くなるため、無駄な時間がかかってしまいます。

ただし、地方裁判所が相当と認めるときには、簡易裁判所に事件を移送せず、そのまま地方裁判所で審理してくれることがあります。

地方裁判所が相当と認めるのはどのような場合かというと、ケースバイケースです。

例えば、事件の規模が小さくても、時間がかかりそうな場合や、難しい法律の解釈が問題になりそうな場合などは認めてくれる可能性があります。

簡易裁判所に出頭しなくても自分の言い分を主張できるが、証拠を出したいなら出頭しないといけない

地方裁判所では、初回の期日のみ、事前に準備書面や答弁書を提出しておけば、出頭しなくても、答弁書や準備書面に書いてある事実を主張したものとみなして、裁判の記録に残してもらうことができます。

ただし、自分が原告として訴えを提起する場合には、初回の期日からちゃんと出頭しましょう。出頭しないと裁判手続が休止されてしまいます。

また、2回目以降の期日は、そのようなことは認められないので、原則として出頭する必要があります。

一方、簡易裁判所では、初回の期日はもちろんですが、2回目以降の期日でも、事前に準備書面や答弁書を提出しておけば、出頭しなくても、答弁書や準備書面に書いてある事実を主張したものとみなして、裁判の記録に残してもらうことができます。

ただし、提出したい証拠がある場合には、期日に出頭する必要があります。

そうすると、例えば、自分が原告として訴えを提起した場合、通常は証拠を提出する必要があるので、期日に出頭しないといけないと考えておいた方がよいでしょう。

逆に自分が被告として訴えられた場合、提出したい証拠がなく、答弁書や準備書面のみで反論を済ませることができるのであれば、出頭する必要はないということになります。

また、簡易裁判所の判決に対して控訴が出ると、地方裁判所で控訴審の手続を行うことになります。

この場合、2回目以降の期日は、出頭しないと準備書面に書いてある内容を主張したことにならないので、注意しましょう。

簡易裁判所では弁護士以外でも代理人になれる

地方裁判所では、代理人になれるのは基本的に弁護士だけです。

一方、簡易裁判所では、法務大臣の認定を受けた司法書士(認定司法書士といいます。)であれば、無条件で代理人になることができます。ただし、地方裁判所で行われる控訴審の代理人になることはできません。

また、簡易裁判所の許可があれば、誰でも代理人になることができます。

ただし、どんな人でも許可が出る訳ではありません。

例えば、① 原告や被告本人が高齢であったり、病気であった場合の家族、② 会社等が原告や被告となっている場合の従業員等の場合に認められることがあります。

また、許可をもらうためには、家族であること等を証明する資料(戸籍など)が必要です。

簡易裁判所の審理はだいたい2~4か月で終わる

簡易裁判所では、取り扱う事件の規模が小さい分、期日の回数も審理期間も地方裁判所と比べてとても短いです。だいたい2~4か月で審理が終わります。審理が早く終わるというのはとても大きいメリットです。

ただし、審理が早く進む分、準備に時間がかかるような証拠を提出しようと思っても、裁判所は待ってくれない可能性があります。提出したい証拠がある場合には、ちゃんと事前に準備しておきましょう。

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弁護士豊田友矢
弁護士豊田友矢
千葉県船橋市の船橋シーアクト法律事務所の代表弁護士 交通事故・離婚・不貞慰謝料・遺産相続・中小企業法務等の相談を多数取り扱っている。