訴状の受け取りを拒否したらどうなるのか?
だれかから民事裁判で訴えられたとき、そもそも訴状など裁判所からの郵便物を受け取らなければいいのでは?と思うかもしれませんが、それには大きなリスクがあります。
相手が書類の受け取りを拒否し続けた場合でも、裁判手続を進めるための方法が認められている上、反論をせずに裁判に欠席すると敗訴する可能性が高いからです。
ここでは、訴状が裁判所からどのように届くのか、また、受け取り拒否をしたときにどうなるのかについて解説します。
訴状と期日呼出状などの書類は裁判所からどうやって届く?
裁判で使われる書類は、誰が、いつ、どこで、どの書類を受け取ったかという記録が残る方法で、相手に送ることになっています。
そして、訴状や期日呼出状は、ほとんどの場合、書記官が郵便局に頼んで、郵便局員が被告の住所に手渡しで届けることになっています。被告本人がいなくても、家族がいればその人に代わりに手渡ししてよいとされています。
受け取る人は、送達報告書という書類に受領のサインをして訴状や期日呼出状を受け取ることになります。
送達報告書は裁判の記録として保管されるので、この場合、自分は実際には受け取っていないと主張しても、そのような言い分は基本的に通らないことになります。
不在などで訴状受け取れなかったら不在票が残される
郵便局員が被告の住所に訴状を届けに行って誰もいなかったという場合、まずは不在票を残していきます。
被告が郵便局に訴状を受け取りにいかず、そのまま不在票に記載された保管期限を過ぎてしまった場合には、郵便局員が、もう一度休日等に被告の住所に訴状を届けに行くこともあります。
自宅で訴状を受け取らないと勤務先に届けに来ることも
それでも被告が訴状を受け取らなかった場合には、郵便局員が被告の勤務場所に訴状を届けに来ることがあります。
この方法は、原告が被告の勤務場所を知っている場合などに行われます。
書留郵便で送られたら受け取りを拒否しても受け取ったことになる
これらの方法を取っても被告が訴状や期日呼出状を受け取らなかった場合には、書留郵便に付する送達という方法が認められることがあります。
これは、書留郵便で訴状や期日呼出状を送る方法です。書留郵便の場合でも、被告が訴状や期日呼出状を受け取らなければ、一旦郵便局で訴状が保管され、保管期限を過ぎれば、訴状や期日呼出状は裁判所に戻っていくことになり、被告が受け取らない状態には代わりありません。
しかし、書留郵便に付する送達の場合には、書留郵便として訴状を発送した時点で、被告が訴状を受け取ったものとみなされてしまいます。
その結果、裁判所は、被告が実際に訴状や期日呼出状を受け取っていなかったとしても、そのまま裁判手続を進めることができてしまいます。
受け取りを拒否し続けても結局裁判は始まってしまう
このように、裁判所は、被告が訴状を受け取らなかった場合でも裁判手続を進めることができます。
さらに、訴状を受け取らないと、いつ裁判が行われるのか、相手の請求がなんなのかもわからず、裁判に出頭したり、答弁書を提出することもできません。
そして、第1回の期日に被告が出頭せず、答弁書も出していなければ、裁判所は弁論を終結して、原告の請求を認める判決を言い渡すことができてしまいます。
これについては、次の記事で解説しています。
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このように、裁判所からの書類を受け取らないという方法にはこのような大きなリスクがあるので注意しましょう。
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