民事裁判の判決を無視されたらどうする?訴えた相手にお金がない場合は?

裁判で勝っても、自動的にお金がもらえる訳じゃない

裁判を起こして相手方に勝訴すると、最終的に「被告は、原告に対し100万円を支払え。」といった勝訴判決を手に入れることができます。

では、この後、どうやって相手方からお金を得ることができるのでしょうか?

訴えた相手が裁判の判決を無視したり、お金がないので払えないと行っている場合はどうなるのでしょうか?

実は、勝訴判決を手に入れたとしても、自動的にお金がもらえる訳ではありません。今回は、具体的にどのような手続きが必要なのか、簡単にご説明します。

民事裁判の判決を無視されたら、強制執行を申立てるしかない

裁判で勝訴した後、お金を得る一番簡単な方法は、相手に任意で支払ってもらうことです。裁判の相手方が会社だった場合などは、任意でお金を支払ってもらえることが多いと思います。

しかし、判決まで進んだような裁判は、相手方が納得していないことも多く、任意に支払ってもらえないという事態もよく起こります。

つまり、民事裁判の判決を無視されることもあるのです。

そのような場合、裁判所が、自ら、相手方が支払ったかどうかを確認したり、相手の財産を差し押さえたりすることはありません。

相手に支払って欲しいときは、自分から、裁判所に対して、相手方の財産を差し押さえるための強制執行の申立てを別途する必要が出てきます。

そして、「被告は、原告に対し100万円を支払え。」といったお金の支払いを命じる判決を手に入れた場合、大きく分けて、以下の3つの種類の強制執行が考えられます。

不動産執行

相手方の所有する土地建物(不動産といいます。)を差し押さえて競売にかけ、売却代金からお金をもらうこと

債権執行

相手方の給料、預貯金、保険の解約返戻金などを差し押さえて、相手方の勤務先の会社、銀行、保険会社などから直接お金をもらうこと

動産執行

相手方の所有する車、家電など(動産といいます。)を差し押さえて競売にかけ、売却代金からお金をもらうこと

実際に行われているのは不動産執行や債権執行で、動産執行はほとんど行われていません。

強制執行はさらに費用がかかる

強制執行には、注意しなければならない点がいくつかあります。

まず、裁判とは別に執行のための費用がかかるという点です。どれぐらいかかるのか?というと、強制執行の種類によって違います。

最も費用が高いのは不動産執行です。不動産執行は競売手続を行うので、最低でも30万円程度の費用が必要ですし、不動産によっては100万円を超える可能性もあります。

この費用は、競売にかけられた不動産の売却価格から優先的に差し引くことになるため、その分、配当金額も小さくなります。

また、債権執行も動産執行も不動産執行ほどではありませんが、費用がかかり、その分は優先して配当から差し引かれてしまいます。

そのため、強制執行をする際には、費用などを差し引いても自分に配当があるかどうかを検討しておく必要があります。

強制執行は時間がかかる

また、強制執行を申し立ててから実際にお金を受け取るまでには、当然時間がかかります。

不動産執行の場合、申立て→不動産の差押え→不動産の調査や査定→売却価格の決定→売却価格の公示→入札→売却決定→入金→配当といった様々な手続が必要になるため、申立てから配当を受け取るまでに、少なくとも半年以上かかります。

債権執行の場合、例えば給料を差し押さえたとすると、毎月の給料から少しずつ配当が行われるということになります(どうしてかは後で説明します)。

そうすると、100万円の支払いのために給料を差し押さえたとしても、全額支払ってもらうまでに、半年~1年以上かかってしまう可能性があります。

また、相手方が退職してしまった場合には、その時点で給料の配当は終了してしまうため、また新たに別の財産の強制執行を申立てる必要が出てきてしまいます。

強制執行は相手の財産を特定する必要がある

また、一番大変なのは、どんな財産を差し押さえるかというのを特定しなければいけないという点です。

不動産執行の場合には、相手の住所地の不動産登記簿を調べれば、相手が持ち家に住んでいるのかが確認でき、その登記簿等を提出することで差押えの申立てをすることができます。

一方で、実際に住んでいる持ち家以外の不動産を調べることはかなり難しく、何らかの手掛かりがないと発見できません。

債権執行の場合には、何を差し押さえるかで特定に必要な程度が変わります。

例えば、給料を差し押さえるためには、相手方の勤務先の名前や住所を調べ、それに関する登記簿を提出する必要があります。

一方で銀行の預金を差し押さえるためには、支店を特定して、「○○銀行の○○支店の口座を差し押さえる」という申立てをする必要があります。

「○○銀行の全部の支店のうち、とにかく○○名義の預金口座があるところ全部!」といったような差押えをすることはできません。

そのため、適当に○○銀行の○○支店の預金口座の差押えを行っても、そこに相手方の預金口座がないことが判明したり、その支店の預金口座の残高は0だったというような事態が起こります。

そうなると、また別の支店を特定して差押えを申し立てる必要が生じてしまいます。

強制執行をしても満足のいくお金がもらえないことも

さらに、財産を差し押さえて配当を得ることができたとしても、自分が欲しい金額に見合うお金が支払われるとは限りません。

不動産執行の場合、そもそも、市場価格からさらに数十パーセント減価した金額で競売にかけられてしまうため、市場で売買されるより低い価格での配当が行われます。

また、持ち家にはすでに不動産ローンのための抵当権がついていることが多く、そのような不動産を競売にかけても、抵当権を有する者に優先して配当されるため、自分の得た判決に見合う金額の配当を得ることは難しいです。

一方ローンを完済済みの不動産は、建築年数が古く価値も高くないので、十分な配当が得られないかもしれません。

債権執行の場合、そもそも、実際に差し押さえてみるまで、差押えることができた金額が分からないというリスクがあります。

それに、給料を差押える場合には、全額を差し押さえることができる訳ではなく、相手の生活に必要な最低限のお金を除外した金額しか差し押さえることができません。

そのため、相手方の給料にもよりますが、毎月数千円から十数万円程度の配当しか得ることができないのがほとんどです。

また、すでに説明したとおり、相手が仕事を辞めてしまえば、それ以降の配当は得られなくなります。預金の場合も、すでに説明したような事態があり得ます。

そうすると、結局、財産を差し押さえてそこから十分な配当を得ることができない可能性もあり、そのような場合には、追加で新しく差押えの申し立てをする必要が出てきます。

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事前に相手の財産を把握しておかないと、勝訴判決も無駄になってしまう

このように、相手方が任意に支払わない場合には、判決を手に入れた後、さらに強制執行の手続をすることで、相手方からお金を回収することが可能です。

しかし、強制執行は時間も費用もかかる上に様々なリスクがあるので、事前に相手の財産を把握しておかなければ、勝訴判決を手に入れても、結局無駄になってしまいます。

では、相手方の財産状況を確認したり、裁判の前に相手の財産を確保しておく方法はないのでしょうか?

この点については、また今後ご説明します。

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訴えた相手にお金が全くなければ回収できない

強制執行は、訴えた相手にお金などの財産がある場合にそれを差し押さえるものです。ですので、訴えた相手に全く財産がない場合は、強制執行までしても一切お金を回収することができません。

また、財産が少しだけある場合であっても、訴えた相手が破産手続をとった場合には、裁判で勝っても回収が困難になります。

このように、裁判で訴える場合には、裁判自体で勝てるかどうかとは別に、勝った場合に相手からどの程度回収できる可能性があるのかというのを事前に検討しておく必要があります。

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