養育費

養育費を過去に遡って請求できる?取り決めがない場合は?

養育費を遡って請求
この記事でわかること
  • 養育費を過去に遡って請求できる?
  • 養育費を遡って請求する具体的な方法

養育費を過去に遡って請求できる?

養育費

養育費を過去に遡って請求できるか?この結論は、置かれている状況によってことなります。置かれている状況は、大きく分けて次の3パターンがあります。

  1. 取り決めた養育費滞納されている場合
  2. 離婚時に養育費の取り決めをしなかった場合
  3. 未婚で生まれた子供の認知を求める場合

①取り決めた養育費が滞納されている場合

パターン①は、取り決めた養育費が滞納されている場合です。離婚時に養育費を毎月●円と決めたにもかかわらず、途中から(最初からのこともありますが・・・)、養育費が支払われなくなっている場合です。

この場合、数ヶ月、場合によっては数年経ってから、滞納分を全部遡って請求できるのかという問題があります。仮に全部が無理だとしたら、いつまでの分を遡って請求できるのでしょうか?

毎月の養育費の滞納分は、それぞれの期限の翌日から5年間で時効にかかってしまいます(民法166条1項1号)。

(債権等の消滅時効)
第166条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。

参考:民法(e-Gov法令検索)

そのため、養育費を払う人が時効による滞納分の消滅を主張した場合、滞納された養育費は、「過去5年分」だけ遡って請求できることになります。

②離婚時に養育費の取り決めをしなかった場合

パターン②は、離婚時に養育費の取り決めをしなかった場合です。

離婚時には養育費の取り決めをしていなかったが、数年経ってから、やっぱり養育費を請求することはできるのか?しかも、離婚してからの分を過去に遡ってもらうことはできるのでしょうか?

結論から言うと、取り決めがない場合に、過去に遡った分まで養育費をもらうのは難しいです。現在の家庭裁判所の実務では、ほとんどのケースで、養育費は「実際に請求したとき」からしか認められません。

実際には、養育費を過去に遡って請求できるかどうかを定めた法律はないのですが、①養育費の具体的な請求権は金額などの取り決めをしたときに発生するということと、②いきなり過去に何年も遡って請求することができると支払側に不意打ちになって酷であるなどの理由から、遡っての請求が認められることはほとんどないのです。

ですので、例えば、離婚時に養育費の取り決めをせずに、10年経ってから養育費を請求したとしても、過去の10年分はもらえないことになります。

ただし、「養育費を実際に請求したとき」からの分は遡ってもらえるので、例えば1年前に養育費を請求し、今日養育費を払うことになった場合には、今日以降の分だけでなく1年前からの分を遡ってもらうことはできます。

③未婚で生まれた子供の認知を求める場合

パターン③は、未婚で生まれた子供の認知を求める場合です。

未婚で生まれた子については、父親が認知しないと養育費を請求できないのですが、認知に時間がかかったとき、生まれてから認知までの分を遡って請求できるのかという問題です。

パターン②の解説で、養育費の取り決めがない場合には、過去の分に遡って養育費をもらうのは難しいと説明しましたが、このパターン③は例外になります。認知をしていない状態では養育費の取り決めなどされていないのが通常ですが、認知後に養育費を過去に遡って請求できることがあります。

特に、子どもの父親が所在不明、認知を拒否したなどの理由で、最終的に認知が確定するまで時間がかかった場合には、子どもが生まれたときまで遡った養育費が認められる可能性があります。

養育費を遡って請求する具体的な方法

養育費を遡って請求する具体的な方法も、あなたの置かれた状況によって異なります。最初に説明した3パターンに分けて見てみます。

  1. 取り決めた養育費滞納されている場合
  2. 離婚時に養育費の取り決めをしなかった場合
  3. 未婚で生まれた子供の認知を求める場合

①取り決めた養育費が滞納されている場合

この場合、養育費の取り決めが、調停調書・審判書・公正証書(強制執行可能な文言入り)でされているのか、それとも、夫婦間で作成した離婚協議書・単なる一筆やメールのやりとりでされているのかによって、具体的な請求方法が異なります。

調停調書など強制執行できる文書で取り決めがなされている場合には、過去の滞納分も遡って、まとめて相手方の預貯金や給料を強制執行することができます。

強制執行できる文書がない場合には、直ぐに強制執行をすることはできませんが。まずは、地方裁判所で、滞納分の養育費をまとまとめて請求する裁判を起こす必要があります。

②離婚時に養育費の取り決めをしなかった場合

この場合は、まずは養育費を実際に請求することが大事です。先ほど説明したように、原則として請求時したときからの養育費しかもらえないからです。

逆にいえば、養育費支払いのスタートが請求時から1年後だとしても、請求時からスタート時までの1年分は遡って請求できるので、できるだけ早く請求するのが重要です。

請求の方法は、請求した時期を証明できるようにする必要があります。そのため内容証明郵便で請求するのが安全です。

なお、養育費の調停を申し立てれば、申し立て時が請求時になるので、内容証明郵便を送らなくても問題ありません。

③未婚で生まれた子供の認知を求める場合

この場合は、まずは認知を求める必要があります。認知が確定してから養育費を請求します。必ず認められる訳ではありませんが、その際に出生から認知確定までの分も遡って請求すれば良いでしょう。

相手との話し合いで養育費を払ってもらうことができなければ、養育費の調停や審判を申し立てる必要があります。

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弁護士豊田友矢
豊田 友矢
船橋シーアクト法律事務所の代表弁護士 千葉県弁護士会所属(第49837号) 交通事故・離婚・不貞慰謝料・遺産相続・中小企業法務等の相談を多数取り扱っている。