このように養育費をあとから請求された方からご相談をうけることもあります。一口にあとから請求と言っても、実際には、その状況はケースバイケースです。今回は、養育費をあとから請求される5パターンについて詳しく解説します。
養育費をあとから請求される5つのパターン
養育費をあとから請求されることは少なくありません。養育費を支払っていない状態が続いていたとしても、必ずしも養育費を払わなくていいわけではないからです。
養育費をあとから請求される状況としては、次の5パターンがあります。
- 養育費払う約束をしたが、途中から払っていなかった
- 養育費の話をしていないので、1回も払っていなかった
- 養育費はいらないと言われたので、1回も払っていなかった
- 養育費は一括で払ったので、その後は払っていなかった
- 養育費は払わない約束をしたので、1回も払っていなかった
この5パターンは、それぞれ、対処法、手続の種類、無視した場合のリスク、遡って請求できるかなどが違ってきますので、混同しないようにしましょう。
以下、パターン別に解説します。
①養育費払う約束をしたが、途中から払っていなかった
離婚時に養育費の金額を取り決めていたが、途中から滞納していたというパターンです。
例えば、支払いを止めてから数年経って、あとからまとめて滞納分の養育費を請求されることがあります。養育費の滞納期間がかさむと、毎月の支払いは数万円でも、まとめて数十万、数百万円を請求されることもあります。
まずは、メール・電話・手紙などで支払いを求められることもありますが、養育費の取り決めを公正証書や調停調書でしていた場合、いきなり給料や預貯金を差し押えられることも珍しくありません。
この場合は、手遅れになることがほとんどです。もし、収入減少など養育費の支払が困難になる状況になったら、その時点で養育費の減額などを求める手続をしておかないと、あとになってから、まとめて差し押えられてしまう危険があるのです。
②養育費の話をしていないので、1回も払っていなかった
離婚時に養育費について何の取り決めもしていなかったパターンです。
この場合、養育費を1回も払っていない人が多いかと思います。ところが、離婚後、しばらくしてから養育費の支払を求められるケースは珍しくありません。
請求したときからの分を請求されるケースが多いと思いますが、離婚時から分もまとめて遡って請求されるケースもあります。例えば、離婚から3年後にやっぱり養育費を払ってほしいと請求されたときに、今後は月●円払ってほしいといわれるだけでなく、離婚時から請求時までの月●円×36ヶ月分も請求されることもあるのです。
もちろん、子供のために離婚してからの分を遡って払っても良いですが、基本的には請求されたときからの分を払えば問題ありません。
なお、このパターンは養育費の取り決めをしていなかった場合なので、いきなり給料や預貯金の差し押さえがされることはありません。まずは、養育費請求の連絡が来るか、養育費請求調停が申し立てられることになるでしょう。
③養育費はいらないと言われたので、1回も払っていなかった
養育費はいらないので直ぐに離婚してほしい、みたいに言われて離婚しているケースです。
この場合、単に「養育費はいらない」と言われただけで、書面での合意はしていないことがほとんどでしょう。
ですので、養育費を請求しない合意があったと証明することは困難なので、あとから養育費の請求することも認められるのが原則でしょう。
④養育費は一括で払ったので、その後は払っていなかった
離婚時に養育費を一括で払うことにより、その後毎月の支払いはしていなかった場合です。
この場合、養育費を一括で支払うことに合意しているはずなので、あとから追加で養育費の請求は認められないのが原則です。
ただし、子どもの扶養義務を自体を両親の合意で消滅させることはできないので、何らかの特別な理由がある場合には、追加の請求が認められる可能性もゼロではありません。
⑤養育費は払わない約束をしたので、1回も払っていなかった
離婚時に夫婦間の話し合いによって養育費を請求しない旨の合意をした場合です。す。
このように養育費はもういらないということで離婚時に合意していたにもかかわらず、あとになって請求が来ることもないとはいえません。
この場合も、あとになって請求することに特別の理由がない限りは、養育費の請求は認められません。