- 養育費はいつまで払う?→原則:取り決めどおり
- 養育費をいつまで払う?→例外:短縮or延長ケース
- 養育費の支払いを途中でやめる大きなリスク
養育費はいつまで払う?→原則:取り決めどおり
取り決めた支払終期まで払うのが原則
養育費は、離婚時に取り決めた支払終期まで支払うのが原則です。
この養育費の支払終期は、以下のような書面で取り決められていることが多いです。
- 公正証書
- 元夫婦間で作成した書面(離婚協議書など)
- 調停調書
- 審判書
- 裁判の判決
最初の3つ(公正証書、離婚協議書、調停調書)は、離婚の際に元夫婦が約束した養育費の支払終期が書かれています。後の2つ(審判書・裁判の判決)は、裁判所が決めた養育費の支払終期が書かれています。
例えば、公正証書に養育費の支払期限が「子どもが20歳になる月まで」と書いてあったら、そのときまで支払うのが原則となります。
養育費をいつまで払う?→例外:短縮or延長ケース
- 再婚しても支払いを途中で止めてはダメなのか?
- 高校卒業後に子どもが就職した場合は18歳でストップ?
- 大学に進学した場合は期間の延長が必要なのか?
- 大学院に進学した場合はどうするか?
- 養育費の支払中に浪人・留年した場合はどうか?
再婚しても支払いを途中で止めてはダメなのか?
養育費の支払中に、子どもの父親または母親が再婚した場合はどうでしょうか?この場合でも、取り決められている期限まで養育費を支払い続ける必要があるのでしょうか?
ここでは、養育費を「支払う側」と「もらう側」のどちらが再婚したのかを分けて考える必要があります。
「もらう側」が再婚した場合
養育費を「もらう側(母親のことが多い)」が再婚して、その再婚相手が養育費の対象となっていた子と養子縁組した場合には、養育費の支払いを期限前でもストップすることができる可能性があります。
ただし、この場合でも、勝手に止めてはいけません。勝手に止めるリスクと、具体的に支払いを止める手続については、後で解説します。
「払う側」が再婚した場合
養育費を払う側が再婚した場合には、養育を止めることができることはまずないですが、養育費の減額を求めることができる場合はあります。
再婚と養育費の打ち切り・減額の関係については、▶再婚したら養育費は打ち切りや減額になる?支払わない方法は?で解説しています。
高校卒業後に子どもが就職した場合は18歳でストップ?
養育費の支払中、子どもが就職した場合はどうなるでしょうか?
例えば、子どもが小さい頃に養育費を「20歳まで」と定めて公正証書を作ったとします。ところが、子どもが高校卒業時に18歳で就職したとします。
この場合には、公正証書に書かれた期限である20歳より前であっても、子どもが就職したタイミングで養育費を止めることできる可能性が高いです。
ただし、この場合も勝手に止めてはいけないのは同じです。養育費を止める方法は、あとで「勝手に支払いを止めると大きなリスクが!」のところで説明します。
大学に進学した場合は期間の延長が必要なのか?
養育費を支払中に、子どもが大学に進学した場合は、どうでしょうか?
例えば、先ほどと同じように、子どもが小さい頃に養育費を「20歳まで」と定めて公正証書を作ったとします。そして、養育費の支払中に、子どもが高校を卒業して、大学進学したとします。この場合、子どもは20歳になっても経済的な自立ができていないでしょう。
養育費を支払う側としては、とりあえず取り決めた20歳で養育費の支払を止めることはできます。この場合でも当初の約束は守ったことになるので、直ぐに給料などを差し押えられるリスクはありません。
もちろん、子どものことを考えて大学卒業まで養育費の支払を自発的に延長するのも自由です。
なお、当初の予定通り養育費の支払を止めたとしても、その後に母親から養育費の延長と増額を求められて、調停や審判を申し立てられたりする可能性はあります。この場合、養育費を払う側が子どもが大学に行くことを承諾していたケースなどでは、養育費の支払期間が22歳まで延長されることはあるでしょう。
大学院に進学した場合はどうするか?
ではさらに子どもが大学卒業後に大学院へ進学した場合は、どうでしょうか?
養育費の支払期限を「満22歳に達した後最初に到来する3月まで」や「大学を卒業する月まで」と定めて公正証書を作ったとします。
その後、子どもが大学印へ進学したとします。この場合、子どもは22歳または大学卒業しても経済的な自立ができないケースは珍しくないでしょう。
この場合も先ほどの大学に進学ケースと同じで、とりあえず約束通り大学卒業と同時に養育費を打ち切ることはできます。
養育費の支払中に浪人・留年した場合はどうか?
これは養育費の支払期限をどのように決めたかによって変わってきます。
例えば、「満22歳に達した後最初に到来する3月まで」と定めていれば、浪人・留年しても、とりあえず22歳になったあとの最初の3月、つまり最短(現役かつ留年なし)の大学卒業時まで払えば、とりあえずの約束は果たしたことになります。
他方で、「大学を卒業する月まで」と定めた場合は、実際に大学を卒業するまで支払わないと約束を果たしたとはいえないでしょう。この場合、浪人・留年したからといって、22歳で支払いを止めてしまうと、養育費をもらう側から強制執行(差し押さえ)をされる可能性があります。
養育費の支払期間を「満20歳に達する日の属する月まで」とした上で、「大学等の高等教育機関に進学した場合には、その卒業の月まで」という条件を付けた場合も同様です。
養育費の支払いを途中でやめる大きなリスク
- 勝手に支払いを止めてはいけない!
- 取り決めがない場合は勝手にとめてもいい?
勝手に支払いを止めてはいけない!
これまで説明してきたように、例えば、養育費をもらう側が再婚して養子縁組もしたケースや、子どもが高校卒業と同時に就職して独り立ちしたケースでは、養育費を途中でストップすることができることがあります。
仮に養育費を20歳まで、または22歳までなどのように定めていたとしても、その前に養育費の支払いを止めることができる可能性があるということです。
ところが、このように養育費を途中で止める理由がある場合でも、過去に養育費の期間の取り決めをしている以上、勝手に支払いを止めることは約束違反になります。
そして約束違反をすると、給料や貯金などを差し押えられてしまう大きなリスクがあります。
ですので、何らかの理由により養育費の支払いを約束した期間より前にストップする場合には、必ず養育費をもらう側と新たな合意書を作成するか、家庭裁判所に養育費の調停を申し立てる必要があります
取り決めがない場合は勝手にとめてもいい?
そもそも養育費を何歳まで払うかについて、なんの取り決めをしていないケースもあります。
この場合は、養育費の支払を途中で止めても、いきなり強制執行されることはありません。
ただし、養育費の支払中に正当な理由なく養育費の支払をストップした場合、養育費をもらう側から養育費の調停・審判を申し立てられる可能性が高いです。この場合、収入の状況などによっては、これまで払ってきた養育費より高い養育費を払わなければならなくなるリスクがあります。
支払いを勝手に止めたことがきっかけで、逆により高額な養育費を支払う必要が出てくることもあるということです。