弁護士相談コラム

なぜ無料?弁護士の無料相談で注意すべきこと

弁護士の無料相談で注意すべきこと

弁護士の相談料は有料なのが原則?

もともと弁護士への相談は有料なのが原則でした。近年は弁護士の無料相談が広く行なわれるようになっていますが、それでも弁護士への相談料は有料なのが原則です。

これは、病院の初診が有料であるのと同じです。法律事務所は公的な機関ではなく、あくまで民間の営利企業なので、事務所の賃料や人件費などの経費を払った上で利益を残さないと潰れてしまうという理由もあります。

そのため、法律事務所や弁護士が、例外的に無料相談を行なうのには、何らかの理由があるはずです。

なぜ弁護士相談を無料で受けられるのか?

弁護士(法律事務所)が、法律相談の費用を無料にしている場合、その理由は大きく分けると、次の3つがあります。

①広告・営業のための無料相談タイプ

法律事務所のホームページや、弁護士を探すためのポータルサイト(弁護士ドットコムなど)などに、わかりやすく相談無料と記載されている場合、多くの割合がこのタイプだと思います。

広告や営業のための相談無料というのは、最終的には有料で依頼してもらう相談者を集客するために、できる限り多くの人に相談に来てもらうことを目的としているということです。

相談料が有料だと弁護士に相談しようかどうか躊躇してしまう方に、相談料を無料にしてハードルなく相談できるようにするためです。

また、有料相談と無料相談の弁護士事務所があれば、まずは無料相談の事務所へ相談しようと考える方は多いと思います。このようにして、他の事務所よりも自分の事務所に相談に来てもらう相談者の数を増やすためという目的もあるかもしれません。

②自己負担なしの実質無料タイプ

相談料が、「実質無料」「自己負担なし」のように書かれている場合はこのタイプが多いです。

これは厳密に言えば、相談料は無料ではないのですが、相談者以外の第三者が相談料を弁護士へ支払うため、相談者本人は自己負担なしで相談できるというものです。

例えば、交通事故などの相談で、自分の加入する弁護士費用特約(弁護士費用保険)を利用して相談する場合です。

この場合、相談料は、弁護士から直接保険会社へ請求されるので、相談者自身は1円も支払う必要がありません。そのため、「実質無料」と感じるはずです。

また、弁護士特約以外に、法テラスを利用する場合にも、一定の収入・資産以下という要件はありますが、相談料が無料になります。これも法テラスが相談料を代わりに弁護士へ支払うことになります。

他にも地方自治体の役所などでの無料の弁護士相談を実施していることもありますが、これも地方自治体が弁護士に一定の費用を支払っていることがあります。

③ボランティアとしての無料相談タイプ

これは、弁護士がボランティア活動、プロボノ活動として行なう無料相談のことです。

事務所の経費や生活費を払うために別の仕事もしつつ、空いた時間に、社会貢献・人助けのために無料で相談を行なうタイプです。

災害があった場合や、大規模な消費者被害があった場合などに、弁護士個人ではなく、弁護士会という団体を通じて、行なわれることが多いです。

また、弁護士個人としても、特定の分野について、ボランティア精神から無料相談を受け付けているケースもあります。

複数の理由の組み合わせのことも多い

以上、弁護士の相談料が無料になる3つの理由について説明してきました。

ただし、弁護士が無料相談を行なう場合、どれかひとつの理由だけでなく複数の理由が組み合わさっていることも多いです。

無料相談の対象外になるかもしれないケース

法テラスや自治体の無料相談ではなく、広告・営業のための相談無料タイプの場合、明らかに依頼につながらない内容の相談は、無料相談の対象外になっていることがあります。

なお、対象外の場合に、有料相談として取り扱うか、そもそも相談自体を受け付けないかは法律事務所によって違うので確認が必要です。

具体的には、以下のような相談は、無料相談の対象外とされることが多いでしょう。

本人以外(家族や友人など)からの相談

本人以外が、家族や友人が当事者となっているトラブルについて相談したい場合もあるかとは思います。

この場合、本人以外が勝手に弁護士に依頼することはできないので、相談できたとしても依頼する可能性はゼロだといえます。

また、本人以外から相談を受けても、本人の真意がわからなかったり、事情が良く把握できなかったりして、相談をする意味がなくなることも多いです。

そのため、本人以外からの相談は、仮に相談に行くことを本人が承諾していたとしても、無料相談の対象外とされることが多いです。

例外的に、家族が事故に遭って寝たきりである場合の交通事故相談などのように、家族が相談すべき理由がある場合には、本人以外でも無料相談の対象になることもあります。

自分で交渉・調停・裁判などの手続をするための相談

これは、弁護士に依頼せずに、自分自身で直接相手と交渉や調停(離婚調停や遺産分割調停など)をしたり、本人訴訟(裁判)をするための相談です。

相談前から弁護士に依頼しないことが確定しているので、無料相談の対象外となることがあります。

法律関係書類の書き方の相談

法律関係の書類の書き方がわからないので、相談したいという場合は、無料相談の対象外になることが多いです。

例えば、自分で離婚協議書や示談書を作成するために、条項をどのようなものにするか相談したい、相談しながら自分で作成したいという内容です。

この場合も、相談前に弁護士に依頼しないことが確定していることから、無料相談の対象外となることがあります。ただし、事務所によっては、文書作成業務の依頼可能性があることを前提に無料相談の対象となることもあるでしょう。

将来の漠然とした不安ための事前相談

将来の漠然とした不安についての相談は、無料相談の対象外となることが多いでしょう。

例えば、まだ両親が元気であるが、将来相続が発生したときに、兄弟でもめたらどうすれば良いか不安なので相談したいというケース、まだ離婚することなど全く考えていないし、配偶者から離婚を求められているわけでもないが、もし将来離婚したとしたらどうなるかを事前に聞きたいというケースなどがあります。

この場合も、相談時点では弁護士へ依頼しないことが確定していますので、無料相談の対象外となることがあります。

一般的な法律知識を知りたいという相談

これは、具体的なトラブルとは関係なく、一般的な法律知識を知りたいという相談です。

先ほどの漠然とした将来の不安についての相談と似ていますが、こちらはさらに一般的で抽象的な内容について聞きたいというケースです。

簡単に言うと、特定の法律について講義を受けたいみたいな内容です。

当然、なにか問題が起こっているわけでもないので、弁護士ニライする可能性もなく、無料相談の対象外となることが多いかと思います。

依頼すると依頼者が赤字になる可能性が高い相談

相談累計からして、相談者が依頼をしたとしても、現実的に回収できる金額よりも弁護士費用の方が高く、赤字になる可能性が高い場合です。

これも、相談したとしても結局赤字になるのであれば依頼しないという人がほとんどであることから、無料相談の対象外となることがあります。

例えば、交通事故相談は無料と記載されている事務所でも、物損のみに関する相談は有料相談というところは多いです。

これは、なぜかというと、弁護士費用特約がついておらず、自分で弁護士費用を負担して物損の裁判をしようとしても、弁護士費用の方が高額になってしまうことが多いからです。

一度無断キャンセルした場合

これはこれまで見てきたのとは少しタイプが違いますが、一度無料相談の予約をしたけど、連絡することなく相談に行かなかった場合です。

その後、もう一度、無料相談の予約を取ろうとしても、無料相談の対象外となることがあります。

やむを得ない理由があって、予約した相談日に事務所へ行けない場合には事前に連絡すれば日程を変更できることがほとんどです。

そうではなくて、予約したのに連絡もせずに無断キャンセルした場合には、再度の無料相談予約はできないことが多いかと思います。

既に他の弁護士に依頼中のセカンドオピニオン

既に他の弁護士に依頼中に、別の弁護士に相談すること自体はおかしなことではありません。

ただし、このようなセカンドオピニオンの相談をしても、弁護士の変更をした方が良い場合というのはそこまで多くはありません。そのため、単にセカンドオピニオンとしての意見を聞いて満足されて終わるということが多いので、セカンドオピニオン相談後に、依頼する可能性は高くはないのです。

そのため、既に別の弁護士に依頼済みの状態での相談は、無料相談の対象外とされることがあります。

無料相談に関する注意点

無料相談の対象になったとしても、無料相談でたりるのか、有料相談でなくて良いのかと気になる方もいるかも知れないので、その点について解説します。

30分無料では時間が足りないことが多い

無料相談が初回30分までのところも多いです。実際に相談してみるとわかるかと思いますが、30分で細かいところまでを相談するのは難しいです。

なぜかというと、相談者が経緯の説明をするだけで10分~20分くらいかかってしまうことも珍しくないからです。

もっとも、特定の分野に特化した無料相談であれば、弁護士の方から聞くべきことをリストアップして重要な点だけを聞いていくので、30分で足りることもあります。

相談だけでは解決しないケースで無料になることが多い

相談しただけで解決する法律トラブルは、案外そこまで多くはありません。例えば、交通事故の相談で、慰謝料が弁護士から見たら安すぎる、過失割合がおかしいということがわかったとします。もしくは不倫慰謝料の相談で慰謝料の相場がわかったとします。ところが、その時点では何の解決にもなりません。その後実際に、相手と示談交渉、場合によっては裁判をしなければ、事件を解決することはできません。

そして、現実問題として、無料相談が広く行なわれている分野ほど、相談しただけでは解決せずに、弁護士への依頼が必要になることが多いように感じます。

しつこく営業されることがある?

広告・営業タイプの無料相談の場合、いったん無料相談を受けると、その後依頼をするようにしつこい営業を受けないか心配な方もいるかともいます。

こればかりは事務所によるとしか言いようがありませんが、通常の事務所の場合はあまり依頼の催促をするようなことはないと思います。

事務所によっては、無料相談後に依頼するかどうかの確認の連絡があることもあるかもしれませんが、断ればその後連絡してくることはないはずなのでそんなに心配しなくとも大丈夫でしょう。

「弁護士」でも「相談」でもない場合がある

最後に、弁護士無料相談だと思ったら違ったという話しもききます。これはインターネットの広告で「●●無料診断」のように記載され、LINEなどで問い合わせて、Web上もしくは、電話などで相談するタイプのものが多いです。

この場合、弁護士相談の前段階のAIによる自動応答や、弁護士以外の事務員による聞き取りのみで、その後の「弁護士」による「相談」を受けていないケースがありますので注意しましょう。

まとめ

弁護士や法律事務所が無料相談を行なうのには、合理的な理由があるため、無料相談だから怪しいということはありません。

無料相談にもいくつかのタイプがあり、そのうちの広告・営業のための無料相談であったとしても、無料で相談を受けられるメリットは大きいです。

ただし、このようなタイプの無料相談は、対象となる条件が定められていることがあるので、無料相談の対応可能かどうかを事前に確認する必要があるので注意しましょう。

ABOUT ME
弁護士豊田友矢
弁護士 豊田 友矢
船橋シーアクト法律事務所の代表弁護士 千葉県弁護士会所属(第49837号) 交通事故・離婚・不貞慰謝料・遺産相続・中小企業法務等の相談を多数取り扱っている。