弁護士相談

弁護士に相談・依頼するときの注意点|マナー(手土産・服装など)はある?

弁護士に相談するときの注意点

一般の方が弁護士に相談や依頼をすることは、一生のうちに何度もあるわけではありません。

このコラムをご覧の方も、突然のトラブルに見舞われて、生まれて初めて弁護士に相談しよういう方も多いと思います。

その中には、弁護士に相談するのに、なにか特別なマナーなどの注意点がないのかと不安を感じる方もいます。

そんな皆様のために、弁護士から見た、弁護士に法律相談や依頼をするときの注意点について解説します。

相談予約時のマナー・注意点

匿名では予約できない→必ず先に自分の氏名を伝える

相談予約をするときには、必ず自分の指名を伝えましょう。匿名では相談予約を受け付けてもらえません。

なぜかというと、弁護士は相談を受ける前に利益相反(りえきそうはん)の確認をする必要があるからです。コンフリクトチェックともいいます。

これは、既にあなたの紛争相手からも相談を受けていないかを確認するという意味です。

具体的な相談内容を説明するよりも前に、自分の氏名を伝えた方が良いでしょう。そうしないと、後で利益相反が確認した際に、お互いに時間の無駄になってしまいます。

また、紛争相手の氏名が発覚している場合には、同様の理由で相手の氏名も伝える必要があります。

まれに、弁護士に依頼をするかどうかわからないのだから、相談予約時点では自分や相手の名前を教えたくないという方もいますが、その場合、相談予約を受け付けてくれる法律事務所はまずないでしょう。

弁護士相談は有料相談・面談相談が原則

もともと弁護士相談は「有料」で、「事務所に訪問」して面談で行なうのが原則でした。

ですので、「無料相談」や「電話相談」ができる場合は、法律事務所のホームページや広告に明確に書かれていることが通常です。

もし、弁護士を紹介してもらったり、自分でインターネットなどで探したりしたときに、相談料のことや相談方法のことが明確でない場合などは、有料相談かつ面談相談であることを前提にした方が良いと思います。

現在は、無料相談や電話相談、ZOOMなどのオンライン相談が可能な分野・弁護士も多いですが、どちらかといえば例外的な方法なので、ホームページに明確に書かれている場合以外で、無料相談や電話相談を受けたい場合には、可能かどうかを予約時にしっかりと確認するようにしてください。

複数の弁護士に相談するのはOK?

依頼する弁護士を決めるために、複数の弁護士に相談することは何ら問題ありません。

中には良く思わない弁護士もいるのかも知れませんが、別にマナー違反でもありません。

ただし、既に弁護士に依頼しているときに、セカンドオピニオンとして別の弁護士に相談するときには、相談予約時に必ず既に弁護士に依頼髄であることは伝えるようにしましょう。

セカンドオピニオンなのかどうかによって、相談の対応方法も変わりますし、相談料金が変わる事務所もあるかと思います。

弁護士に相談だけして依頼しないのはOK?

相談と依頼はべつなので相談のみで依頼をしないのは問題ありません。マナー違反でもありませんので心配しないでください。

ただし、相談前に弁護士に依頼しないことが確定している場合、事務所によっては無料相談の利用はできないケースも多いです。

そのため、もし相談時に依頼をしないことが確定しているのであれば、その旨伝えた方が良いかと思います。

相談キャンセルをしても大丈夫?

いったん相談予約を取った後に、何らかの理由でキャンセルこと自体は問題ありません。

よくあるのは、相談予約後に、相談予定日直前にインフルエンザなどに罹患して、相談に行けなくなってしまう場合です。感染症などにかかった場合には、感染を避けるために、むしろ相談をキャンセルするのがマナーともいえるでしょう。

このようなケースでは、相談日当日や前日のドタキャンになってしまうこともやむを得ません。

ただし、相談予約をキャンセルするときは、必ず事務所に予約をキャンセルする旨連絡をしてください。

連絡することなく事務所に行かなかった場合には、再度の相談予約を断られることが多いと思います。

事前にキャンセルの連絡をすれば、相談のキャンセル料はかかならない法律事務所がほとんどだと思います。※ただし事務所によるので、気になる場合は予約時に確認してください。

事務所訪問時のマナー・注意点

手土産は必要?いつ渡す?

弁護士に相談する際に、菓子折などの手土産は一切不要です。手土産がないからといって雑な対応をされることなどないので心配しないでください。

もし、純粋な厚意から手土産を渡したい場合でも、相談時ではなく、実際に事件を依頼して、事件が解決した時で良いと思います。

もちろん、手土産が不要だからといって、手土産を渡すことが迷惑なわけではなく、弁護士や事務所スタッフは喜ぶかとは思います。この場合、受付時にスタッフに渡しても良いし、弁護士との面談時に直接弁護士へ渡しても問題ありません。

ただし、ひとつ大きな注意点があります。それは、手土産を渡したい弁護士が行なった業務が国選弁護人の場合です。国選弁護人は、被疑者・被告人やその家族などの関係者から贈り物を受け取ってはいけないことになっています。そのため、国選弁護人には手土産は持って行かないようにしましょう。

また、自己破産など債務整理の依頼をしようとしているのに、手土産を買って持って行くのも、浪費だと見なされる可能性があるのでやめましょう。

事務所に行く時の服装は?

弁護士事務所に行く時の服装は、どんなものでも構いません。就職の面接みたいにスーツを着る必要はありません。

いわゆるドレスコードみたいなものも一切ありません。病院へいくときと同じ感じで大丈夫です。

例えば、相談や打合せのために事務所へ行くのが、仕事帰りの場合は仕事着で良いですし、休日に相談する場合や、主婦や学生の方の場合など、私服でも全く問題ありません。

本人以外(家族・知人など)の付添いはOK?

弁護士相談に本人以外の人が付添いをしたい場合は、少し注意が必要です。

弁護士相談では、事前の了承がない限り、相談時に本人以外の付添いを認めていない場合は珍しくないからです。

これにはいくつか理由があるのですが、1つ目の理由は、付添いする人が、潜在的な紛争の相手方になる可能性がある場合です。例えば、遺産分割についての複数の相続人の同席、不貞慰謝料の不貞相手の同席付添いなどです。

2つ目の理由は、付添いの方が同席することによって、本人が本当のことや自分の希望を弁護士に話せなくなってしまう可能性がある場合です。例えば、離婚相談に家族などが同席する場合などがあります。

これらの場合には、仮に事前(相談予約時)に本人以外の付添いを希望しても、相談時の同席が認められないことも多いです。

また、同席自体は問題ない場合であっても、同席者の人数によって使用する相談室を変更する必要が生じたり、足りない椅子を準備する必要ために、事前に付添いの方の同席の連絡がないと、同席はできないことも多いです。

何分前に事務所に行くのが良いか?

5分前くらいに事務所の受付に着くのが一番良いです。

実は予約した時間よりも、早く行くのはあまり良くありません。弁護士のスケジュールは分単位で確定していることが多く、早く行ってもその分早めに相談をスタートできることはあまりないからです。

予約した時間の10分くらい前であれば特に問題はないでしょう。ただ、それよりも早く、例えば30分前などに行くと、基本的には待たされるか、待機スペースがないなど、事務所によっては、再度の来訪を求められる場合もあります。

なお、事務所の方針によっては、相談開始時間よりも少し前に来訪してもらって相談シートの記入をしてもらうことがあります。この場合は、予約時に、どれくらい前に来訪した方が良いかを伝えられるかと思います。

他方で、相談開始時間に遅れるのは5分~10分くらいであれば、特に問題はない事務所がほとんどでしょう。ただし、弁護士や事務所によっては、相談開始予定時刻から相談料が発生してしまう可能性はあるので注意しましょう。また、10分以上遅れる場合などには、事前に連絡を入れないと予約をキャンセル扱いされることもあるので注意しましょう。

持ち物について

相談に必要な資料一式を忘れないようにしましょう。

資料は整理して見やすい状態で持って行った方が相談がスムーズに進みますが、ごちゃ混ぜであっても持って行かないよりは100倍良いので必ず資料を持って行きましょう。

弁護士相談をしていることがバレるのはイヤだ

弁護士には守秘義務があるので、相談したことや相談した内容を第三者に漏らさないようにわざわざ弁護士に確認する必要はありません。

弁護士は、相談者の要望がなくとも、当然のこととして守秘義務を王からです。

ただし、弁護士が誰にも話さなくとも、「弁護士に相談していること自体」は他人にバレることがあります。

それは、弁護士事務所に入っていくところを知らないうちに誰かに見られている場合などです。特に周りに建物がない人通り少ない地域では、弁護士事務所に入っていくところを近所の人に見られる可能性があるので注意しましょう。他にも注意した方が良いのは、弁護士事務所の駐車場に車を止めていたのを、ナンバーを知っている近所の人に目撃されることです。

弁護士相談中の注意点

相談中の会話をボイスレコーダーで録音してよいか?

相談中の弁護士との会話内容をボイスレコーダー(スマホの録音アプリ含む)などで、弁護士に「秘密で録音」することは、基本的にマナー違反だと考えた方が良いです。

仮に、秘密で録音していることが後からその弁護士に発覚した場合、信頼関係を築くのが難しいと判断されて、依頼を断られる可能性もあります。

もちろん、事前に録音したい旨弁護士に伝えて、了承をもらえば問題はありません。

ただし、この場合も録音した内容を第三者に聞かせることはやめてほしいと言われることがほとんどでしょう。あくまで、自分が聞いた内容を忘れたときのために録音した音声を利用しましょう。

なお、弁護士が録音を承諾するかどうかは、その弁護士や相談内容によってケースバイケースですが、どちらかといえば断れることの方が多いかも知れません。また、仮に録音を承諾したとしても、録音内容が第三者に漏れるリスクを考慮して、相談への回答があまり踏み込まない無難なものになってしまう可能性もあります。

相談中の話し方は?

初めて弁護士に相談する方の中には、弁護士相談時にどのように話したら良いか不安になる方もいるかと思います。

特に気にする必要はありません。就職の面接ほどかしこまる必要はありません。病院で医者に症状を伝えるときくらいの感じで問題ありません。何度か相談して弁護士と打ち解けている場合には、友人と話すときのような感じで相談をすることもあります。

ただし、弁護士も人間なので、態度が著しく悪い人に対しては、同じ様な態度で対応されることもやむを得ないので注意しましょう。例えば、相談中に命令口調で話したり、初対面でいきなりため口で話すと、相談中の弁護士の態度も悪くなるかも知れません。

相談中に弁護士に嘘をつくとどうなるか?

相談中に弁護士に明らかな嘘をついたとして、それが相談者にとって得になることはまずありません。

基本的に弁護士は、相談者が嘘をついていると感じた場合は、依頼を受けないことが多いですし、依頼を受けた後に嘘が発覚した場合には、信頼関係の破壊を理由に、辞任(途中解約)されることが多いでしょう。

また、仮に嘘が最後までバレなくても、相談者に不利になることも多いです。実は、真実を話してそれを前提に処理していれば問題が大きくならなかったのに、相談者の嘘による誤った前提でアドバイスをすることにより、相談者にとって法的に不利になったり、解決が遠のくこともあります。しかも、後からは取り返しがつかないことも多いです。

相談時に嘘をつかずにありのまま事実を話すというのは、相談マナーの問題ではなく、法律相談を意味のあるものにするために最低限必要なことです。

相談時間の確認|30分超えそう?

相談料が30分まで無料の場合や、有料相談で30分ごと費用がかかる場合の注意点です。

法律相談中は、相談者も弁護士も、法律相談に集中しており、気づいたら時間が過ぎていることも普通です。

また、無料相談の30分を超えそうな時点や、相談料が加算される時点で、弁護士から延長しますかとはわざわざ聞かれないことが多いです。

そうすると、相談終了時に、気づかないうちに相談料が加算されていたということもあり得ます。

そのため、もし無料相談の時間内で終了したい場合や、相談料を30分の支払いだけで終わらせたい場合には、相談者の方から事前に弁護士へその旨伝えておいた方が安心です。そうすれば時間が来た時点で、相談時間が終了したことを教えてくれるはずです。

相談のみで終了したい場合

相談と依頼はセットではないので、相談だけして依頼をしないのは問題ありません。マナー違反でもありません。

ただし、相談だけでは解決できない内容で、弁護士が依頼した方が判断した場合には、依頼した場合の見積もりをくれたり、依頼するかどうかを聞かれるかと思います。

依頼しないのであれば、理由も聞かれるかも知れません。依頼しない理由を正直に言って問題ないですが、もし相談前の時点で、相談だけで依頼しないことが確定しているのであれば、先に伝えておいた方がスムーズかも知れません。依頼するかどうか決めるのを催促されることもないので・・・

弁護士依頼時(委任契約)の注意点

相見積もりをとるのはOK?

複数の弁護士に相談した上で、複数の弁護士に相見積もりをとること自体は何ら問題ありません。マナー違反でもないです。

弁護士に見積もりを出してもらった後に、見積費用が安かった他の弁護士に依頼することに決めましたと伝えても、特段問題はありません。

ただし、一つ注意点があります。

弁護士業界以外では、相見積もりを取った上で、他社の見積価格を伝えたうえで、料金の減額交渉をすることが慣習となっている業種はあります(引越業者や家電販売など)。

ところが、弁護士業界(特に個人が依頼する場合)では、あまりこのような慣習はありません。

ですので、他の弁護士の見積書を見せて、弁護士費用の減額交渉をしたとしても、弁護士費用が減額されることはまずないでしょう。また、いったん減額交渉がされた時点で、元の価格であっても依頼を受けないようにしている弁護士もそれなりにいるので注意しましょう。

成功報酬の発生条件をしっかりと確認する

弁護士に依頼をするときには、必ず委任契約書を作成することになっています。

委任契約書には、最初に払う着手金だけでなくて、事件が終了したとき、成功したときに払う報酬金についても記載されています。

着手金の金額は、依頼時に確定しているので、わかりやすいことが多いですが、報酬金の額は結果に応じて変わるため、依頼時には金額は確定していません。

そのため、弁護士との間で金額について揉める可能性があるのは、着手金よりも報酬金の方です。どのような場合に、どのような計算で報酬金がかかるのかは、依頼時点でしっかりと確認しておきましょう。

相談後の注意点

相談料の渡し方はどうする?

相談料の支払方法で一番多いのは現金です。最近はクレジットカード決済ができる事務所も増えてきていますが、基本的には相談料は現金でしはらいます。

相談料とは、相談の代金であって、謝礼ではないので、お札・硬貨をそのまま弁護士またはスタッフに渡せば問題ありません。のし袋などに入れる必要もありませんし、チップのようなものを加算する必要もありません。

なお、消費税にも消費税はかかります。

相談後にお礼のメールは必要?

相談が終了して帰宅した後、弁護士にお礼の連絡・メールを送る必要はありません。そのようなマナーはありません。

ただし、誰かに弁護士を紹介された場合には、紹介してくれた人には連絡をしても良いかも知れません。

また、相談終了後に、依頼する場合の費用について気になる点がある場合などには、次のようにメールで聞いても良いでしょう。

「昨日は、ご相談をお受けいただきありがとうございました。この件を依頼する場合の費用について一つお伺いしたい点があるのですが・・・」

みたいな感じです。

まとめ

これまで、弁護士に相談するときの注意点やマナーについて見てきましたが、そこまで特殊なルールみたいなものはなかったかと思います。

特にマナーに関しては、服装や手土産など特に気を遣う必要はないですし、弁護士以外の初対面の人と会う時と比べて、特別なマナーがあるわけではありません。

注意すべき点に関しても、相談料や委任契約時の費用体系など、お金に関することは注意した方が良いですが、それ以外の部分については、相談で嘘をつかないとか、秘密録音しないとか、弁護士相談に特別なことではなく一般手常識的なことなので、そこまで気にする必要はありません。

はじめて弁護士に相談する方の中には、なにか特別なマナーなどがないかと不安になる方もいるかも知れませんが、心配せずにお気軽にご相談されるのが良いかと思います。

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弁護士豊田友矢
弁護士豊田友矢
千葉県船橋市の船橋シーアクト法律事務所の代表弁護士 交通事故・離婚・不貞慰謝料・遺産相続・中小企業法務等の相談を多数取り扱っている。