労働トラブル事例

転勤を拒否したら、その後に退職を求められた話

転勤か退職か
弁護士
弁護士
今回は、会社から命じられた転勤を拒否したら、自主退職を求められた事例を紹介するね。

転勤を拒否したら退職を求められた!

食品メーカーの工場で働いていたAさんとBさん

AさんとBさんは、食品メーカーで働いていました。

この食品メーカーには、茨城と静岡と兵庫に工場がありました。

AさんとBさんは、このうち兵庫の工場で働いていました。

兵庫から茨城の工場へ転勤命令が!

ある日、兵庫の工場でAさんとBさんが担当していた業務が廃止されることになりました。

すると、AさんとBさんを含む約60名に対して、茨城の工場へ転勤命令が出されたのです。

会社はAさんたちに、茨城へ転勤するか、割り増しの退職金をもらって退職するかを迫ってきました。

転勤か退職かの2択を迫られ・・

AさんとBさん以外の多くの人たちは、転勤をせずに退職を選択し、会社を辞めていきました。

AさんとBさんは、兵庫の工場に約30年間も勤務していたので、退職はしたくありませんでした。

ところが、どうしても転勤に応じられない理由があったのです。

Aさんが転勤に応じられない理由

Aさんの妻は精神病にかかっていて、Aさんの手助けがないと一人で生活することが困難でした。

Aさんが単身赴任をしてしまうと、一人暮らしになったAさんの妻は精神的に不安定になってしまうことが予想されました。

かといって、Aさんと一緒に茨城に引っ越してしまうと、これまで診てもらっていた主治医にかかれなくなってしまいます。

Bさんが転勤に応じられない理由

Bさんの母親は要介護状態でした。Bさんが単身赴任をしてしまうと、Bさんの妻だけでは母親の介護をすることが困難でした。

かといって、家族全員で茨城へ引っ越すのは、新しい土地に慣れるのが難しいという事情がありました。

AさんとBさん、転勤命令が無効だと会社を訴える

AさんとBさんは転勤命令に従う必要がないと主張して、会社を訴えました。

会社は、AさんとBさんの担当業務が廃止になったのだから、茨城への転勤を命じる必要があったと主張してきました。

これに対して、AさんとBさんは次のように反論しました。

Aさん
Aさん
兵庫の工場で、業務廃止になった仕事以外の仕事があるのだから、それをすればいい。茨城に転勤する必要はないはず
Aさん
Aさん
私が転勤すると、精神病の妻の面倒をみられない。茨城への転勤は家族への不利益が大きすぎる。
Bさん
Bさん
私が転勤になると、母親の介護ができなくなる。
Aさん
Aさん
転勤命令をする前に、転勤がどれだけ私たちに不利益どうかなどを何も会社から聴かれなかった。
Bさん
Bさん
転勤命令が出された後には個人面談が行われたが、それも不十分だった。

転勤命令は無効か?裁判の結果は?

AさんとBさんと会社との裁判は、地裁では終わらず高裁まで進みました。

そこで、次のような結果になりました

判決

  • AさんとBさんの勝ち
  • 転勤命令は無効だから茨城に行く必要はない

理由

  • 会社は転勤しないでも済む方法を検討すべきだった
  • AさんとBさんの転勤による不利益は大きかった
  • 転勤命令より前に、AさんとBさんに事情を聴くべきだった
  • 転勤命令の後の個人面談も、もっとしっかりやるべきだった
AさんBさん
AさんBさん
転勤をしなくて済んだ!

転勤を命じられたらどうするか

転勤に応じられない理由があるのであればそれをしっかり会社へ伝えることが重要です。

それでも会社が転勤を強要してきた場合は、会社と戦うか、転勤をしないで済む仕事へ転職するのか、よく検討しましょう。

また、就職の際には、勤務地が限定されている労働契約なのかをしっかり確認することも重要です。