弁護士費用コラム

裁判費用は誰が負担する?和解・勝訴・敗訴の場合は?

裁判費用は誰が負担する?和解or勝訴or敗訴

裁判費用は自分で負担するのが基本

民事裁判をする場合、多くの方は弁護士に依頼します。

そのため、裁判をするためには、大きく分けて、

  • 弁護士に払う弁護士費用
  • 裁判所に払う手数料など実費

の2種類の費用が必要になります。

この①②の両方とも裁判費用と呼ぶことがありますが、①②の両方とも自分の分は自分で負担するのが基本です。その理由をこれから説明します。

裁判費用は負けた側が払うのではないのか?

一般的な感覚からすると、裁判費用は裁判に負けた側が払うべきなのではないかと思うかも知れません。

ところが、実際には裁判費用は裁判の勝ち負けにかかわらず、自分の分は自分で負担せざるを得ないのが現実です。

①弁護士費用について

まず、裁判費用のうち、①の弁護士費用についてですが、これは自分が依頼した弁護士の費用は、裁判の勝ち負けにかかわらず自分で負担します。

裁判は建前上弁護士に依頼しなくてもできるので、それでも弁護士を依頼するのであれば自分で費用を払う必要があるのです。

弁護士費用を相手に請求できる?慰謝料請求や事故の示談交渉の場合は?

例外的に、不法行為による損害賠償については、損害額の1割程度に限り、弁護士費用を相手に請求することができます。

②裁判所に払う手数料など実費について

次に、裁判費用のうち②裁判所に払う手数料などの実費についてです。

これは、正確には、「訴訟費用」といいます。具体的にどのようなものが含まれているかは、▶民事の訴訟費用一覧|計算方法や相場も解説の記事を参考にして下さい。典型的な費用は、裁判を提起するとき裁判所に払う手数料(収入印紙)です。

この費用は、裁判の相手に請求することができ、判決になると、最終的には敗訴者負担とされます。

「訴訟費用は被告の負担とする」の意味は?訴訟費用の負担について

ただし、実際に訴訟費用を相手に請求するためには、訴訟費用額確定処分という面倒な手続が必要になることから、裁判に勝ったとしても訴訟費用を相手に請求することはあまり多くはありません。

和解した場合の裁判費用は誰が払う?

次は、具体的に裁判で和解・勝訴・敗訴した場合の裁判費用を誰が負担しているのかについて見ていきましょう。

まずは、裁判中に和解した場合、裁判費用はどちらが払うのでしょうか?

①の弁護士費用については、そもそも裁判の勝ち負けに関係なく、和解の場合にも自分が頼んだ弁護士の費用は自分で負担します。

例外的に、不法行為による損害賠償請求の場合には、相手に弁護士費用の一部(請求額の1割)を請求しているのが通常ですが、この弁護士費用の一部を和解金額に加算することがあります。これを調整金といいます。

次に、②の裁判所に払う実費ですが、和解の時点で、既に双方が支払済みの分は、支払った人が負担することにすることがほとんどです。

このため、和解条項に、「訴訟費用は各自の負担とする」という条項を入れます。

例外的に、訴訟費用が高額の場合で、しかも、勝訴的な和解をする側が負担している場合には、その分を考慮して和解金額を決めることもあります。

勝訴した場合の裁判費用は誰が払う?

あなたが裁判に勝ったら、裁判費用は誰が払うのでしょうか?

まず、①弁護士費用です。裁判に勝つと、その後、成功報酬を自分が依頼した弁護士に支払うことが通常ですが、この弁護士費用を相手には請求できません。もちろん、既に支払済みの着手金を相手には請求することもできません。たとえ裁判に勝ったとしてもです。

例外的に、不法行為の損害賠償請求の裁判の場合で、かつ、あなたが請求側なのであれば、損害額の1割を弁護士費用として相手に請求しているはずです。

ですので、裁判に勝った場合には、裁判所が認めた損害額の1割が弁護士費用として加算されているでしょう。

次に、②の裁判所に払う実費(訴訟費用)です。あなたが、請求側で裁判で勝った(請求額が全部認められた)ケースで考えてみます。

この場合、「訴訟費用は被告の負担とする」という判決が出されるでしょう。

この判決が確定した場合、抽象的には訴訟費用は相手(被告)の負担と憂いことになりますが、具体的な金額はまだ決まっていません。

相手の負担となった訴訟費用を実際にアテイに請求するためには、まず訴訟費用額確定処分という手続を取る必要があります。

敗訴した場合の裁判費用は誰が払う?

あなたが裁判に負けたら、裁判費用は誰が払うのでしょうか?これを説明すると次のとおりになります。

まず、①弁護士費用です。裁判に勝った場合ですら相手に請求できないのですから、負けた場合も当然相手に請求できません。ですので、既に自分が依頼した弁護士に支払い済みの着手金は、自己負担ということになります。

裁判に負けた場合に、弁護士へ報酬金をしはらうかどうかは、弁護士との契約次第です。ただし、少なくとも弁護士が裁判所へ行くための交通費など実費のようなものは支払う必要があるでしょう。

次に②裁判所へ払う実費(訴訟費用)ですが、これは敗訴者負担なので、あなたが原告で負けたのであれば、「訴訟費用は原告の負担とする」という判決になります。また、被告として負けたのであれば「訴訟費用は被告の負担とする」という判決になります。

ただし、これで訴訟費用を相手から追加で請求されるかというと、されない場合も多いことは、最初に説明したとおりです。ただ、その場合であってもあなたが既に裁判所に支払い済みの訴訟費用は、誰にも請求できずあなたの負担ということになります。

まとめ

裁判費用の負担についてまとめると次のとおりになります。

  • 裁判費用には①弁護士費用と②裁判所へ払う訴訟費用がある
  • ①の弁護士費用は自己負担が原則
  • ②の訴訟費用は敗訴者負担
  • ②の訴訟費用も敗訴者に請求しないことが多い

どうでしょうか?

裁判費用は、①弁護士費用の方が②訴訟費用よりも高額であることが通常あること、結局②の訴訟費用も大した金額でなければわざわざ相手に請求しないことが多いです。

そうすると、裁判の勝ち負けや和解することと裁判費用を誰が負担するということは、あまり関係ないことがわかるかと思います。

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弁護士豊田友矢
弁護士 豊田 友矢
船橋シーアクト法律事務所の代表弁護士 千葉県弁護士会所属(第49837号) 交通事故・離婚・不貞慰謝料・遺産相続・中小企業法務等の相談を多数取り扱っている。