同業他社への転職がバレて退職金が不支給となったが・・・
外資系保険会社で働いていたAさん
Aさんは外資系保険会社で働いていました。出世して、執行役員の地位にまで上りつめました。
退職金に関する合意
Aさんは会社との間で、給料、ボーナス、退職金について、次のような書面での合意をしました。
- 月給:131万円
- ボーナス:月給6ヶ月分を限度に毎年2月に支給
- 退職金:毎年ボーナスと同額を積み立てる
競業避止義務条項も作った
また、次のような競業避止義務条項も定めて、この条項に違反したときは、退職金を不支給とすることも定められました。
同じ業務を行う生命保険会社への転職を禁止する。禁止期間は2年間。違反したら退職金を支払わない。
Aさんの同業他社への転職
Aさんは、元々いた外資系保険会社をやめて、別の保険会社へ転職しました。
この会社でも元勤務先の保険会社と同じ業務を行っていました。Aさんは、いわゆる同業他社へ転職したのです。
すると・・・
元の会社から退職金不支給の通知が・・・
Aさんが同業他社に転職したことを知った、元勤務先の保険会社から、Aさんの退職金を不支給とする通知が届きました。
Aさんは元の会社を訴えて退職金3000万円を請求した
Aさんは元勤務先を訴えて、退職金を請求することにしました。
その金額は約3000万円でした。
元勤務先は、同業他社への転職禁止義務違反だから、書面で合意したとおり退職金は不支給になると主張してきました。
また、今回の同業他社への転職禁止義務の目的は、ノウハウの流出防止、顧客情報の流出防止、同業他社への人財流出の防止だから、正当な目的だと主張しました。
これに対して、Aさんは同業他社への転職禁止条項は無効だと主張したのです。
裁判の結果、退職金は支払われることに・・・
裁判の結果、Aさんには退職金約3000万円全額が払われることになりました。
判決
- Aさんの勝ち
- 今回の同業他社への転職禁止条項は無効
- 元勤務先はAさんに退職金全額を払え
理由
- 会社が流出防止をしようとしたノウハウや顧客情報は営業秘密といえるものではない。
- その程度のものの流出を防止するために、同業他社への転職を一切禁止するのは過剰すぎる。
- 退職後2年間も地域を限定することなく同業他社へ禁止するのは、制限が大きすぎる。
- 同業他社への転職を禁止することに対する充分な補償がされていない。
- こういうことをまとめて考えると、今回の同業他社への転職禁止条項は、やりすぎな条項だから無効である。
競業避止義務がある場合の転職先は慎重に検討しよう
今回の事例では、様々な点を考慮して、同業他社への転職禁止条項は無効となりました。
もちろん、同業他社への転職禁止条項が有効になるケースもあります。
もし、会社との間で同業他社への転職禁止の合意をしているのに、転職を希望している場合には、どのような条項なのかをしっかり確認しておくことが重要です。