実際に払われた養育費の平均額(厚生労働省調査)
まず、最新の厚生労働省の調査(令和3年度全国ひとり親世帯等調査:PDFはこちら)の結果をみてみましょう。
この調査は、厚生労働省が、母子家庭や父子家庭の人に、実際にいくら養育費をもらっているかを実際に調査した結果です。
ですので、この調査結果を見れば、理論上の養育費の額や、裁判所で命じられた額などではなく、現実問題として、離婚後にいくら養育費を受け取っているのかがわかることになります。
子どもの人数別・母子世帯の養育費平均月額(2021年)
子どもの人数 | 1人 | 2人 | 3人 | 4人 | 5人 | 全平均 |
養育費月額 | 40,468円 | 57,954円 | 87,300円 | 70,503円 | 54,191円 | 50,485円 |
子どもの人数別・父子世帯の養育費平均月額(2021年)
子どもの人数 | 1人 | 2人 | 3人 | 4人 | 5人 | 全平均 |
養育費月額 | 22,857円 | 28,777円 | 37,161円 | – | – | 26,992円 |
このように、母子家庭(母親が親権者になった場合)の養育費の平均額は、月額50,485円となっています。
他方で、父子家庭の場合の養育費の平均額は、月額26,992円となっています。
いずれも、基本的には子どもが増えるにつれて、養育費が増える傾向にあることがわかります。
なお、この表ですと、子どもが4人以上いる場合は逆に養育費の額が減っていますが、子ども4人以上の家庭が少ないため調査回答者も少なく、それほど参考にはならないかと思います。
さらに、平成28年(2016年)の調査結果も見てみましょう。
子どもの人数別・母子世帯の養育費平均月額(2016年)
子どもの人数 | 1人 | 2人 | 3人 | 4人 | 5人 | 全平均 |
養育費月額 | 38,207円 | 48,090円 | 57,739円 | 68,000円 | – | 43,707円 |
子どもの人数別。父子世帯の養育費平均月額(2016年)
子どもの人数 | 1人 | 2人 | 3人 | 4人 | 5人 | 全平均 |
養育費月額 | 29,375円 | 32,222円 | 42,000円 | – | – | 32,550
円 |
この5年間で実際に払われている養育費の平均額は上がっているようです。
なお、この額は1人分の養育費ではなく、あくまで子ども全員分の養育費の額です。
裁判所で決まった養育費の金額(裁判所調査)
令和4年(2022年)司法統計(家事)(PDFはこちら)第25表(「離婚」の調停成立又は調停に代わる審判事件のうち母を監護者と定めた未成年の子有りの件数―夫から妻への養育費支払額別子の数別―全家庭裁判所)を見てみます。
これらの数値は、離婚調停が成立した際に決まった養育費の金額を裁判所が調査し公表しているものです。
また、養育費の額は1万円以下、2万円以下、4万円以下、6万円以下、8万円以下、10万円以下、10万円超、額不定に分類され、子どもの人数別に分類されたものもあります。
母子家庭の養育費月額(離婚調停)
養育費の月額 | 件数 | 割合 | 累計 |
総数 | 13,662 | – | – |
1万円以下 | 337 | 2% | 2% |
2万円以下 | 1,220 | 9% | 11% |
4万円以下 | 4,320 | 32% | 43% |
6万円以下 | 3,494 | 26% | 69% |
8万円以下 | 1,828 | 13% | 82% |
10万円以下 | 1,052 | 8% | 90% |
10万円超 | 1,409 | 10% | 100% |
額不定 | 2 | 0% | 100% |
離婚調停で決まった養育費の中央値は、月4万円超~6万円以下です。最頻値(もっとも多いケース)は、月2万円超~4万円以下となっています。
子ども1人・母子家庭の養育費月額(離婚調停)
養育費の月額 | 件数 | 割合 | 累計 |
総数 | 7,106 | – | – |
1万円以下 | 176 | 2% | 2% |
2万円以下 | 683 | 10% | 12% |
4万円以下 | 2,630 | 37% | 49% |
6万円以下 | 1,905 | 27% | 76% |
8万円以下 | 848 | 12% | 88% |
10万円以下 | 376 | 5% | 93% |
10万円超 | 487 | 7% | 100% |
額不定 | 1 | 0% | 100% |
子ども1人の場合に、離婚調停で決まった養育費の中央値は、月4万円超~6万円以下です。最頻値(もっとも多いケース)は、月2万円超~4万円以下となっています。
子ども2人・母子家庭の養育費月額(離婚調停)
養育費の月額 | 件数 | 割合 | 累計 |
総数 | 4,966 | – | – |
1万円以下 | 117 | 2% | 2% |
2万円以下 | 381 | 8% | 10% |
4万円以下 | 1,362 | 27% | 37% |
6万円以下 | 1,266 | 25% | 63% |
8万円以下 | 776 | 16% | 79% |
10万円以下 | 454 | 9% | 88% |
10万円超 | 609 | 12% | 100% |
額不定 | 1 | 0% | 100% |
子ども2人の場合に、離婚調停で決まった養育費の中央値は、月4万円超~6万円以下です。最頻値(もっとも多いケース)は、月2万円超~4万円以下となっています。
中央値と最頻値は子ども1人の場合と同じですが、子ども2人の場合には月6万円超も4割近い割合(37%)となっています
子ども3人・母子家庭の養育費月額(離婚調停)
養育費の月額 | 件数 | 割合 | 累計 |
総数 | 1,350 | – | – |
1万円以下 | 39 | 3% | 3% |
2万円以下 | 122 | 9% | 12% |
4万円以下 | 287 | 21% | 33% |
6万円以下 | 279 | 21% | 54% |
8万円以下 | 159 | 12% | 66% |
10万円以下 | 199 | 15% | 80% |
10万円超 | 265 | 20% | 100% |
額不定 | 0 | 0% | 100% |
子ども3人の場合に、離婚調停で決まった養育費の中央値は、月4万円超~6万円以下です。最頻値(もっとも多いケース)は、月2万円超~4万円以下となっていますが、月4万超~6万円以下の割合もほぼ同じです。
子ども4人・母子家庭の養育費月額(離婚調停)
養育費の月額 | 件数 | 割合 | 累計 |
総数 | 215 | – | – |
1万円以下 | 4 | 2% | 2% |
2万円以下 | 30 | 14% | 16% |
4万円以下 | 41 | 19% | 35% |
6万円以下 | 39 | 18% | 53% |
8万円以下 | 39 | 18% | 71% |
10万円以下 | 21 | 10% | 81% |
10万円超 | 41 | 19% | 100% |
額不定 | 0 | 0% | 100% |
子ども4人の場合に、離婚調停で決まった養育費の中央値は、月4万円超~6万円以下です。最頻値(もっとも多いケース)は、月2万円超~4万円以下となっていますが、月4万円超え6万円以下と6万円超え~8万円以下の割合もほぼ同じです(それぞれ19%・18%・18%)。
子ども5人以上・母子家庭の養育費月額(離婚調停)
養育費の月額 | 件数 | 割合 | 累計 |
総数 | 25 | – | – |
1万円以下 | 1 | 4% | 4% |
2万円以下 | 4 | 16% | 20% |
4万円以下 | 0 | 0% | 20% |
6万円以下 | 5 | 20% | 40% |
8万円以下 | 6 | 24% | 64% |
10万円以下 | 2 | 8% | 72% |
10万円超 | 7 | 28% | 100% |
額不定 | 0 | 0% | 100% |
子ども5人以上の場合に、離婚調停で決まった養育費の中央値は、月6万円超~8万円以下です。最頻値(もっとも多いケース)は、月10万円超となっています。ただし、子ども5人以上の総数は25件しかないので、他の調査結果ほど一般化できないものと考えられます。
子どもの年齢別・裁判所で決めた養育費(裁判所調査)
次に、令和4年(2022年)司法統計(家事)第42表(子の監護事件のうち認容・調停成立の内容が養育費・扶養料支払の取決め有り(父が支払者)の件数―支払額別子の性別及び年齢別―全家庭裁判所)を見てみます。
これは、養育費に関する調停や審判で決めた養育費の額です。離婚してから養育費を初めて決めた場合や、養育費の増額・減額を求めた結果決まった額ということになります。
なお、こちらの方は、子どもの年齢別に分類されています。
1万円以下 | 2万円以下 | 4万円以下 | 6万円以下 | 8万円以下 | 10万円以下 | 10万円超え | |
0歳 | 26 | 121 | 247 | 88 | 18 | 8 | 4 |
1歳 | 35 | 123 | 261 | 79 | 12 | 5 | 8 |
2歳 | 59 | 130 | 224 | 66 | 11 | 5 | 5 |
3歳 | 40 | 161 | 245 | 63 | 16 | 1 | 6 |
4歳 | 59 | 174 | 246 | 44 | 21 | 9 | 6 |
5歳 | 76 | 197 | 236 | 82 | 17 | 6 | 6 |
6~9歳 | 305 | 788 | 1,002 | 253 | 58 | 25 | 29 |
10~14歳 | 350 | 824 | 1,118 | 337 | 91 | 27 | 62 |
15~19歳 | 214 | 467 | 750 | 307 | 152 | 51 | 118 |
20歳以上 | 12 | 25 | 55 | 41 | 16 | 8 | 16 |
この表を見ると、どの年齢でも、養育費の額で一番多いケースは、月額2万円超え~4万円以下になっています。
ただし、15歳以上になると月4万円超えの割合が増えています。これは養育費算定表上、15歳以上の方が養育費が高くなることが影響している物と考えられます。
厚生労働省と裁判所の調査結果からわかること
厚生労働省の調査結果からすれば、養育費の平均額は5万円程度ということはわかります。また、子どもの人数別でいうと、母子家庭で子どもが1人なら4万円程度、2人なら6万円弱が平均ということもわかります。
また、裁判所が公表している情報からも、養育費の月額は2~6万くらいの範囲にほとんど収まっていることがわかります。
厚生労働省や裁判所という公的機関が調査した結果なので、新陽はできるかと思います。
また、厚生労働省の調査は、合意した養育費の額ではなく、実際に支払われている額を調査していると言う意味では、より実態を反映したものといえるでしょう。ただし、あくまで任意の調査である以上、調査に協力的な人、つまり精神的、時間的余裕がある人の回答に偏っている可能性もあります。
他方で、裁判所の調査結果は、一部を抽出するのではなく、全ての事件を対象にしているので、偏りは少ないとはいえます。ただし、裁判所外で決められた養育費の額は一切反映されていません。そして裁判所外で決められた場合の方が、不当に高いor安い額になっている可能性はあります。さらに、調停で合意した養育費が、その後実際に支払われているかどうかは裁判所の調査結果からはわかりません。
平均額を見てもあまり意味ない?大事なのは収入毎の相場
ここまで養育費の平均額を見てきました。
これらの調査結果は、子どもの人数・年齢に着目して平均額を算出しています。
ところが、養育費の金額に最も影響があるのは、子どもの人数・年齢よりも、養育費を払う側ともらう側の年収です。
つまり、年収を無視して、平均額を見ても実はほとんど意味はないのです。
年収別の養育費の額についての調査結果は残念ながらありません。
もっとも、算定表を使えば、年収毎の養育費の相場を知ることはできます。
以下では年収を考慮して、具体的な年収別・子どもの年収別・養育費の月額別・手取り月収別の養育費の相場を説明しますので、気になる記事を選んでクリックしてください。